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社会問題化する“誹謗中傷” 2大VTuber事務所やYouTubeが対策へ

クリエイターエコノミー協会は、業界の垣根を超えて関係者が参画する「誹謗中傷対策検討会」を設置したと発表した。誹謗中傷対策で互いに連携して課題に取り組んでいくとしている。

「誹謗中傷対策検討会」はクリエイターエコノミー協会が主催し、関係する各社が参画した。プラットフォーマーとして「YouTube」を提供しているグーグルや「note」を提供するnoteが参画するほか、クリエイター事務所としてヒカキンらが所属するUUUM、「にじさんじ」を運営するANYCOLOR、「ホロライブ」を運営するカバーが参加。また協会のアドバイザーである国際大学 准教授の山口真一氏も誹謗中傷問題の有識者として検討会に参加する。

同検討会は6月28日に設置されたもので、詳細な活動内容は今後決定される。これまでは各社が独自に対策を行ない、政策を提言するなどしてきたが、検討会の設置によってクリエイター側とプラットフォーム側という異なる立場の課題を互いに持ち寄り、より実効性のある対策や課題解決の推進を図る。また今後も、必要に応じてほかの関係者やプラットフォーマーなどに参画を呼びかけていくとしている。

クリエイターエコノミー協会 代表理事 兼 UUUM取締役会長の鎌田和樹氏
クリエイターエコノミーの市場規模
誹謗中傷対策検討会に参画する各社

誹謗中傷対策が喫緊の課題であり、社会問題に発展しつつあるとする認識は、業界の内外で高まっている。人気YouTuber事務所や2大VTuber事務所が参加したことで、現場での危機感や課題感が大きいことも裏付けられる形になった。

すでに総務省が有識者会議を立ち上げ、対策の検討を始めているという背景がある一方、政策に対して意見を提出するプラットフォーマーやクリエイター(クリエイター事務所)は個別に活動し、連携が深められていなかったという。

例えば、2020年以降にUUUM、ANYCOLOR、カバーはそれぞれ誹謗中傷対策の専門チームを発足させているが、各社独自の活動が中心になっていた。そこでクリエイターエコノミー協会が主体となって「誹謗中傷対策検討会」を設置することで、各関係者の対策の連携を深めていくというのが、同検討会の役割となる。

総務省によるワーキング・グループもすでに開催
これまでの対応

「検討会ですべてが解決するとは思っていないが、課題に取り組むのがまずはポイント。クリエイターが活動しやすい社会環境を整備していく。これまでは事後の対策が多かったが、今後は未然に防ぐことや、数を減らすことも行なっていく」(クリエイターエコノミー協会 代表理事 兼 UUUM取締役会長の鎌田和樹氏)と、これまでより一歩進めた対策にしていく方針が語られている。

検討会の目的

炎上は陽炎? 一部の人が作りだせるSNSの歪な実態

国際大学の山口氏からは、誹謗中傷問題が社会問題に発展していることが解説された。一般ユーザーと比較してクリエイターは誹謗中傷に合う割合が高く、表現方法を変えるといった“萎縮する”例が報告されているほか、精神面への影響も大きく、件数が少なくても攻撃的な言葉により活動に支障が出るケースは多いという。

国際大学の山口氏が誹謗中傷問題について解説
誹謗中傷の経験率。右側の円グラフはクリエイターで、誹謗中傷に合う割合が高い
誹謗中傷の影響
自殺につながるケースも

一方、広く“ネット炎上”という視野で捉えると、一部の人が多数のアカウントを使って投稿を繰り返すといった事例が報告されており、SNSなどが一部の意見をより大きく見せる構造・性質になっていることが指摘されている。加えてこうした誹謗中傷の投稿の中には、“個人的な正義”に基づいて発信し、誹謗中傷になっていることを自覚していないケースもあるという。

また炎上でなくても、(憲法改正といった)賛否両論になる話題では、SNSなどで両極端の意見は発信される数が多く、世間一般で多数を占める中庸の意見は登場せず、あたかも世間一般で極端な意見だけが争われているかのように見えるバイアスが生じてしまうという。

一部の人が多数の意見を投稿でき、声を大きくできる
一人で200以上のアカウントを作って誹謗中傷を行なっていたケースもあるという

山口氏は、クリエイターは個人や少数のグループで活動することが多く、炎上や誹謗中傷の対象になってもアクションが限られる脆弱な面があるとし、サポートを充実させる策や、カウンセリングの充実、SNSの啓発活動なども重要になるとしている。

炎上の実態はともかく、誹謗中傷に対してクリエイターは脆弱であることが多い
個人では対応に限界も

UUUMの鎌田氏も誹謗中傷への危機感を語っている。「10年前に会社を作った時は、何かをやる度に称賛や応援の声があった。一定程度にまで普及する中で(誹謗中傷が)増えていった。いい時も悪い時も支える必要があると思いクリエイター事務所をやってきたが、誹謗中傷はひとつでもクリエイターを壊してしまう、良くない影響力がある。その数が増えてしまっているのが実態」と、事業が拡大する中で直面している課題であるとした。