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トヨタ、27年に全固体電池実用化へ 次世代BEVやマニュアルBEVも
2023年6月13日 18:50
トヨタは、2027~28年の実用化に向け、次世代電池として期待されている「全固体電池」のBEV(バッテリーEV)への搭載を目指した実用化フェーズに入る。技術説明会「Toyota Technical Workshop」において、BEVの技術戦略とともに明らかにした。
全固体電池'27年目標に BEV向け電池を強化
全固体電池は、不燃性材料を用いるため、発火・燃焼の危険性が低く、安全性に優れるほか、高いエネルギー密度、急速充電可能な充放電性能などから、自動車用の次世代電池として期待されている。
トヨタでは、「課題だった電池の耐久性を克服する技術的ブレイクスルーを発見した」とし、従来はHEVから徐々に搭載する方針だったものを、BEV用電池に転換し、開発を加速すると表明。現在量産に向けた工法を開発中で、2027-2028年の実用化にチャレンジするという。
2026年の次世代BEVに搭載予定の次世代BEV向けパフォーマンス版角形電池と比べても航続距離が20%向上し、急速充電は10分以下(SOC:充電状態=10-80%)を目指すという。
トヨタが2026年に導入する次世代BEVは、航続距離1,000kmの実現を目指している。同車両への搭載に向けて、性能にこだわった角形電池を開発しており、電池のエネルギー密度を高めながら、空力や軽量化などの車両効率向上で航続距離を伸ばす方針。同時に、コストは現行bZ4X比で20%減、急速充電20分以下(SOC=10-80%)を目指す。
この次世代電池(パフォーマンス版)に加え、普及版の次世代電池として、良品廉価な電池も開発中。ハイブリッド車のアクアやクラウンに搭載してきたバイポーラ構造の電池を、BEVに適用。材料には安価なリン酸鉄リチウム(LFP)を採用し、2026-2027年の実用化を目指す。現行bZ4X比で航続距離は20%向上、コスト40%減、急速充電30分以下(SOC=10-80%)を目標とする。
並行して、バイポーラ構造にハイニッケル正極を組み合わせ、さらなる進化を実現するハイパフォーマンス電池も、2027-2028年の実用化を目指す。次世代電池(パフォーマンス版)の角形電池比で航続距離10%向上、コスト10%減、急速充電20分以下(SOC=10-80%)を達成する。
また、ロケットの極超音速空力技術を応用した、新たな空気抵抗削減技術にも取り組む。三菱重工 宇宙事業部と共同で技術検討中で、そこで得られた知見を要素技術として次世代BEVに導入する。
知能化の取り組み。「マニュアルBEV」も
トヨタの新体制方針で説明した「トヨタモビリティコンセプト」では、電動化、知能化、多様化をキーワードに掲げている。
知能化では、機能のアップデートをすべてのクルマに広げるほか、次世代音声認識による素早い反応や臨機応変な提案など、「人と会話しているような感覚」の実現を目指す。その基盤となるのが車載OSの「Arene OS(アリーンOS)」となる。
次世代音声認識は、Arene OSにより200以上の車両機能の操作に対応。次期グローバル量産モデルに搭載予定。
また、走る、曲がる、止まる、にこだわった、「乗り味」のカスタマイズにも対応していく。BEVのハードとソフトに“クルマ屋”ならではのアップデートを施せるようにするほか、駆動制御やクラッチにより、BEVでもMT車のような車を操る楽しさを提供する「マニュアルBEV」にも取り組む。
さらに、BEVのソフトをアップデートし、乗り味やエンジン音など、オンデマンドで変更可能になる「走りをオンデマンドで変更可能な車」も目指す。昔乗っていた懐かしの車や、走りを追求したスポーツタイプ、将来乗ってみたい車などを、1台のBEVで体験可能にする。
「社会との繋がり」もクルマに反映。車両データ、コネクティッド技術を活用し、リアルタイム輸配送に役立てる「高効率輸送オペレーション支援システム」や、車両データを活用し、道路勾配情報の解像度を向上させる「地図自動生成(Geo)」、登録した駐車パターンをベースに、自動運転技術で障害物などのイレギュラーな事態にも対応する「次世代自動駐車機能」などに取り組む。