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スタバのリユースカップが加速。渋谷は半数がリユース利用
2023年5月31日 12:25
スターバックスのリユースカップ利用が加速している。使い捨てカップの削減を目的に繰り返し使えるカップを開発し、現在は全国で80%以上の店舗で導入されている。特に渋谷エリアはリユース利用率が高く、その背景にはスタッフの働きかけも大きいという。
具体的な事例とともに、日本上陸時から現在までの歴代タンブラーの変遷など、同社のリユース促進に関する取り組みについて話を聞いた。
使い捨てカップから洗える「店内グラス」へ
2019年に同社は、「2030年までにCO2排出量、水使用量、廃棄物量50%削減」という目標を掲げており、その実現に向けてさまざまな取り組みを進めている。
店内利用客には、洗って再利用できる「店内グラス」やマグカップでドリンクを提供し、自前のタンブラー利用客には20円引きでドリンクを提供するなどリユース活動を促進。
店内グラスはアイス飲料専用で、これまでの使い捨てカップに代わるアイテムとなる。2022年4月から106店舗で試験導入し、2023年3月末に全国の約1,500店舗で正式導入。国内のスターバックス店舗数は約1,800店舗なため、80%以上の店舗で導入されている。非導入店舗には、新幹線改札内やテイクアウト専用店舗、洗浄機が置けない店舗などが含まれているため、導入可能な店舗ではほとんど取り入れているという。
素材には樹脂を採用。2サイズがあり、ショート/トール、グランデ/ベンティにそれぞれ対応する。これまでの使い捨てプラスチックカップと比較して、年100トンの廃棄物を削減できる見込みになる。
透明度の高いグラスなため、ドリンクがより美味しそうに見える、グラデーションがきれいに見えるといった声も寄せられている。
試験導入から正式導入までには、検証を重ねたほか店舗スタッフからのフィードバックなどもあり、デザインや仕様を変更した。特に大きく変わったのが、グラスの一部にシボ加工をしたこと。
「スターバックスでは、注文客からのオーダー内容をシールにしてカップに貼るのですが、導入当初の店内グラスはシールが剥がしにくいという声が店舗スタッフからありました。そこで正式導入の際には、グラスの一部をシボ加工にし、シールを剥がしやすくしました。このリユースウエアは全社的に部署横断で行なっている事業で、まずは一部の店舗で導入し、改善をしてから正式導入という形をとっています」(スターバックス コーヒー ジャパン サプライチェーン本部 エシカルソーシング・サステナビリティチーム 高橋芽衣氏)
店内グラスはアイス専用だが、ホット飲料の場合はマグカップで提供。現在は、店内利用客の3人に1人がリユースウエア(店内グラス、マグカップ)を使っているという。利用の流れとしては、レジでオーダーを受ける際に「グラス(マグカップ)で提供しても良いですか?」と声掛けをして了承を得た場合に提供している。
残りの3人に2人は店内で使い捨てカップを利用していることになるが、これらは「店内で飲みきれないから持ち帰る前提の人」が多い。またモバイルオーダーの場合もリユースウエアの利用を尋ねられないため、店内利用でも使い捨てカップでの提供になる。
店内でのリユース率を増やすための活動は、店舗ごとに裁量を委ねている。「例えば渋谷と丸の内では客層が違います。その店舗のお客様のことを一番知っているのは店舗スタッフなので、リユース促進の取り組みはスタッフに任せています」(高橋氏)
渋谷エリアでリユース増
特に渋谷エリアはリユース率が高く、全国の店舗では3人に1人がリユースウエアを使用しているが、渋谷エリアの店舗全体では、2人に1人がリユースウエア使用の声掛けに応じている。正式導入から1カ月間で、削減できた使い捨てカップ数は約60,000杯分にも及ぶ。
なぜ、渋谷エリアでリユース率が高いのか。それはスタッフ側の働きかけも大きいという。渋谷エリアは若い世代が集まるため、これからの未来を生きる若者たちにサステナブルの意義を伝える必要がある、という意識をスタッフが持っており、グラス提供の声掛けを工夫して行なっている。
どういう風にグラス提供の声掛けをしたら受け入れてもらえるか色々考えて、ただ「グラスでお出ししても良いですか」と言うのではなく、「環境に優しいグラスで提供して良いですか?」など、どういう理由でグラス提供するのかを伝えることで、多くの人に了承してもらえているという。
「声掛けの仕方を考えるにあたり、環境配慮型店舗の第1号店である皇居外苑の和田倉噴水公園店にも行きました。客として赴き、スタッフがどんな行動をしているのか研究しています。また渋谷エリアの店舗横断で、Microsoft Teamsを使ってリユース促進に関する情報共有もしています。実際に目に見えてゴミが減っているので、スタッフ全体でリユース促進の効果を実感できています」と、渋谷ファイアー通り店のスタッフである加藤氏は話す。
日本独自商品も、歴代タンブラーの変遷
店内利用だけでなく、テイクアウトでもリユースを促進できるよう、同社は日本上陸時から展開しているタンブラーにも注力。店内/テイクアウトどちらでも、自前のタンブラーを持ち込むと20円引き(税別)で提供され、タンブラー自体も多彩なラインナップを用意している。
日本上陸時は、グローバルで販売されていたシンプルなタイプからスタートしたが、以降は保温・保冷効果のあるタイプ、国内独自のデザインとして桜をモチーフにしたデザイン、地域に根ざしたデザインなどさまざまな商品がある。
タンブラーはグローバル共通ではなく、国ごとに独自開発しているものが多く、日本市場では「隅々まで洗いたい」というニーズが高いため、分解可能なボトルを展開している。分解するとマグカップほどのサイズで洗えるため、柄の長い水筒用の洗浄ブラシを用意しなくても、スポンジで気軽に洗える点が特徴。
また5月31日からは、「タンブラーは飲み終わった後にカバンの中でかさばる」という声に応えて「おりたたみシリコンボトル」を発売する。シリコン製で軽く、飲み終わったらたたんで収納可能。容量は355mlで価格は2,500円。
「トレンドとして、レディースバッグがどんどん小さくなっており、大きいタンブラーはバッグに入らないということがあります。今回発売するおりたたみシリコンボトルは、飲み終わったらたたんで小さくなるのでバッグが小さい方にもタンブラーを使ってもらいやすくなりました」(高橋氏)
同じく5月31日から、マイタンブラーを楽しく使うユーザー参加型プロジェクトとして「タンブラー部」をスタート。6月30日までは、タンブラーやマグカップを持ち込むとドリンク価格の値引きが通常22円のところ、55円になる(店内利用時)。テイクアウトの場合は、通常21円が54円引き。
また、全国の店舗でマイタンブラーが利用された総数をカウントアップし、合計30万杯、50万杯、70万杯を達成すると最大3つのプレゼント企画が実施される。プレゼント企画の詳細は7月1日に発表。
タンブラー部公式フラペチーノとして「瀬戸内 レモンケーキ フラペチーノ」も、5月31日に販売開始。一足先に試飲したが、甘すぎず程よい酸味があって美味しく、梅雨のジメッとした時期や、夏の暑い時期でもスッキリ飲める一品だった。
「『タンブラー部』と部活っぽいネーミングにしたので、フラペチーノは爽やかなレモン味にしました。スターバックスでは、用途や気分に合わせて選べるようにさまざまなタンブラーを用意しているのでぜひ参加してもらいたいです。一番の目的はリユース促進なので、スターバックスのタンブラーでなくてもお好きなものを持ち込んでもらえたらと思います」(高橋氏)