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Visaのタッチ決済 1億枚を超える コンビニはカードの半分がタッチに

ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は、日本におけるVisaのタッチ決済対応カードの発行枚数が、3月末で1億枚を超えたと発表した。25日、報道関係者向けにVisaのタッチ決済の現状と今後の展開について説明した。

コンビニではカードの半分が「タッチ」

Visaのタッチ決済は、'13年5月に日本での発行を開始。発行開始10年目のタイミングで、1億枚を達成した。'19年6月末時点で1,000万枚を超えていたが、以降3年9カ月で10倍になるなど、近年大きく伸びている。

コロナ禍による非接触ニーズ拡大や東京五輪などもあり、日本においてもタッチ決済が定着しつつある。加盟店におけるタッチ決済対応端末は、'23年3月時点で180万台を突破。コンビニやスーパーなどの日常利用のほか、旅行やショッピングセンター、飲食など様々な業種に広がっている。

Visaのタッチ決済の利用シーンも拡大している。

2021年3月末と2023年3月末の比較では、コンビニ、ドラッグストア、スーパーといった日常利用で、Visaのタッチ決済が伸びた。コンビニの場合、2年間で約10倍となり、'23年3月末時点で、カード決済の約2件に1件がVisaのタッチ決済となった。

ドラッグストアでは2年間で約12倍、スーパーでは約5倍、家電量販店は約38倍、ディスカウントストアは約100倍、公共交通機関は約62倍。「価格帯や業態に関係なく利用が増えている(ビザ・ワールドワイド・ジャパン 寺尾林人 コンシューマーソリューションズ部長)」という。

加盟店セグメントでは、'21年3月末時点では、日常利用(コンビニ、ドラッグストア、スーパー)がVisaのタッチ決済の全取引件数の86%(その他は14%)だったが、'23年3月末時点では、日常利用以外の加盟店セグメントが全体の31%に拡大。日常“以外”にも拡大している。また、女性の満足度が高い点も決済サービスとしては珍しい傾向で、「“清潔さ”を含めて支持されているのではないか(寺尾氏)」とする。

世界では対面の6割がタッチに

日本以外の国においてもVisaのタッチ決済は拡大しており、2023年3月時点ではVisaの対面決済のうち、59%が対面決済となっている。オーストラリアの99%を筆頭に、スペイン、ニュージーランド、台湾、英国、シンガポールなど9割を超える国も多い。

米国は34%と低いのは、決済端末の普及が遅れていたため。ただし、この2年で日本と同様に急速に普及が進んでいるという。また、米国を除いた場合の全世界でVisaのタッチ決済の構成比は74%で、Visaの対面決済の4回に3回がタッチ決済となる。

海外においてはタッチ決済が「当たり前の日常」になりつつあり、公共交通機関での導入も進み、「移動」でもタッチ決済というケースが増えている。Visaが、目指す姿として、「自国でも旅行先でも、全て同じカード1枚、モバイルに登録された1つのアカウントでシームレスな決済を実現する」とし、日本でも早期の達成を目指す。

インバウンドの回復とタッチによる経済波及効果

日本での日常利用の拡大という点では、「公共交通機関」の拡大に注力している。2023年4月末では、26都道府県42プロジェクトで、Visaのタッチ決済が導入された。

2023年に入ってからは、実証実験から本格導入となる公共交通機関が増えており、鹿児島市交通局や熊本市交通局、福岡市交通局において、全車両・全駅での導入が完了。また、JCBなどVisa以外の国際ブランドの対応も進んでいる。

首都圏では、4月から江ノ島電鉄の全駅で「Visaのタッチ決済」を含むタッチ決済に対応。さらに離島の西表島でも導入され、西表島の北西部の白浜と東南部の豊原の間を結ぶ、西表島交通の路線バスでタッチ決済に対応した。

鹿児島市交通局の事例では、Suica等の交通系ICカード(10カード)を導入していない鹿児島市電で、'22年11月から半数の車両でタッチ決済を導入したが、'23年3月末時点では4倍になったという。つまり、(Suicaなど)の別の“タッチ”の文化が無かった交通機関においても、Visaのタッチ決済は支持されているという。

Visaのタッチ決済は、世界の650の交通機関で導入されているが、Visaが強調するのが「経済波及効果」だ。

ロンドンでは、タッチ決済利用者の方が決済件数が2倍多く、決済金額は70%多い。ミラノやブカレストでも決済金額がタッチ決済利用者のほうが高く、購買増加による周辺経済への波及効果があるという。

日本国内における公共交通機関への導入においても、経済波及効果が特に重視されている。

インバウンド訪問者にはVisaのタッチ決済が支持されており、平均利用金額も高く、日本における消費が増える傾向がある。

インバウンドでの公共交通機関でのタッチ決済利用は、'22年3月比で9.6倍に拡大しており、「この2カ月はさらに増えている(Visa コアプラットフォームソリューションズ ディレクター 今田和成氏)」。90カ国以上の発行カードが利用され、特に韓国、タイ、アメリカ、台湾、香港などでの利用が多い。韓国が多いのは、タッチ決済が福岡市営地下鉄で導入されており、福岡への訪問が多いことも一因という。

Visaでは、インバウンドの回復による国際観光都市間での競争において、「スムーズな移動」は不可欠と説明。インバウンド訪問者がストレス無く公共交通機関に乗車できる、Visaのタッチ決済の導入が重要になるとする。認知の向上と公共交通導入を進め、タッチ決済によるキャッシュレス推進を目指す。