ニュース
JR東日本、ウォーターズ竹芝で自動運転モビリティ体験
2023年3月10日 20:14
JR東日本とゲキダンイイノは、「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」におけるモビリティサービスの提供に向け、自動走行モビリティなどを利用した回遊性向上の実証実験をウォーターズ竹芝で実施する。
高輪ゲートウェイシティは、JR東日本を中心に高輪ゲートウェイ駅周辺に2つの複合棟や文化創造施設、住宅などを整備する大規模再開発。
「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」では、街の南北を繋ぐデッキ上で歩行者と共存可能なモビリティの運用を目指し、単なる移動手段ではなく街の施設や地域と連携しながら、エリアの魅力向上に繋がるモビリティサービスの創出に取り組む計画がある。デッキは最終的に高輪ゲートシティから品川駅まで1,100mという距離になり、これを楽しみながら移動できる手段としてのモビリティを検討している。
クルマや自転車等と交錯しない、モビリティと歩行者の共存を目指すものとし、移動だけでなく乗りながら街を楽しむ、疲れたとおもったらふらっと乗れる気軽さをめざし、多様なモビリティで移動できる街づくりを行なっていく。
実証実験は、3月11日、12日の11時~14時と、15時~18時に実施。一般参加が可能で、11時から先着順で受け付ける。レストランやショップの多いアトレ竹芝タワー棟と、エンターテインメント施設の多いアトレ竹芝シアター棟とを結ぶ約300mを移動する。利用は無料。
今回の実験では、歩行者が主役のスペースで、いかにモビリティを安全に共存させるか、コンテンツを街に散りばめ、それをモビリティによってどうやって体験してもらい、価値を向上させるか、運行費用をどのように賄うのかなどを検討する。特に今回のモビリティについては、基本的に無料で利用が可能なため、マネタイズは重要な要素。基本的には「楽しんで貰うことで次の消費に繋げる」ことを目指しており、モビリティ乗車中に肩掛けスピーカーで案内や広告を配信したり、停車スポット等で広告を展開するなどで行動変容を促し、販促に繋げることでマネタイズを実現する。
「動く家具」がコンセプト
使用するモビリティは、ゲキダンイイノの「iino type-S712」。「712」という数字は、歩道を走行可能な電動車いすのサイズ「700×1,200mm」からきている。
時速5kmで移動するモビリティだが、実際には5km以下で移動し、場所に合わせて速度を変える。今回行なわれる実証実験でも、何も無いエリアは時速4km、観光スポットに近づくと時速1kmでゆっくり走行しながら観光案内などを行なう。
実際に乗ってみると、時速4kmという速度は早歩きぐらいの速度という感覚。もっと速く歩ける人もいると思うが、コンスタントにこの速度で走ってくれると意外と速い、という印象だった。逆に時速1kmは、ゆっくりと景色を楽しみながら移動するのにちょうどよい速度だ。
iino type-S712にはセンサーが多数搭載されており、人が近くにくると自動で速度が遅くなり、利用者は歩いて乗り移る。ゆっくりと走るゴミ収集車の後部ステップに、作業員がゴミを集めながら飛び乗ったり降りたりするシーンから着想したものという。
乗車人数は3人まで。家族で観光地に行く人達からアンケートをとったところ、観光地で一人乗りのモビリティに自分だけ乗って移動したくない、という意見がかなりあったという。このためiino type-S712では3人乗りとし、一緒に会話しながら楽しめるモビリティとした。
立ったまま乗れる視線の高さも観光用としては重要で、同じ目線で同じ風景をみながら観光ができる。デザインも、いかにもロボットというデザインではなく、「動く家具」をコンセプトとし、木材から削り出して作ったボディによる既視感が無いモビリティを目指した。
高輪ゲートウェイシティで整備予定の歩行者デッキの総延長は1,100mが予定されているが、歩行者は、徒歩10分(600m)を超える移動では、何らかの交通手段が欲しくなる人が多いというデータがあるという。高輪ゲートウェイシティは1,100mの距離を移動しながら楽しめる街づくりを目指しており、モビリティによる移動の補助は、より一層街を楽しむためには重要な要素となる。
4月には道路交通法が改正され、電動車いす以下のサイズで、時速6km以下なら歩道を立ち乗りモビリティやデリバリーロボなどが走行可能になる。JR東日本は、高輪ゲートウェイシティでも将来的にはさまざまなモビリティが入り乱れながらも、歩行者と安全に共存できるスペースを目指す。