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日本初、つくば市がシャープのIoT家電を用いた防災情報伝達
2023年2月14日 09:00
茨城県つくば市と国立研究法人防災科学技術研究所、シャープの3者は、シャープ製のIoT家電を防災で活用するための共同研究契約を締結し、2023年2月27日から3月5日まで、つくば市内で実証実験を実施する。
実証実験では、音声発話機能を搭載したシャープ製の冷蔵庫・エアコン・空気清浄機の対象機種を利用している市民から参加者を募集。防災情報を模した音声情報を各家電から1日数回発信し、期間終了後に音声情報の内容をどの程度認知したか確認することで、家電の発話による防災情報の伝達効果を検証する。
シャープからの提案で発話機能を防災に役立てる
記者説明会では、つくば市市長の五十嵐立青氏、理事長の林春男氏、同総合防災情報センター センター長補佐の取出新吾氏、シャープのSmart Appliances & Solutions 事業本部 AIoT 事業推進部 部長の中田尋経氏の4名が出席し、実証実験について説明を行なった。
防災科研の取出氏は、実証実験をやることになった経緯について説明。2021年12月にシャープの担当と会い、シャープのIoT生活家電でどんなデータが出せるかという話を聞いた。そのときにそのデータは防災にも使えると気付いて、シャープに共同研究を持ちかけたという。
実際に始めたのは2022年2月で、防災利用に関する検討を重ねてきた。その後、シャープから発話機能を使って防災に貢献できないかという提案を得て、つくば市の危機管理課に相談し、3者で研究を始めたという。
その結果、つくば市からも生活家電のIoTを利用するのは面白いという評価を受け、今回発表することになった。今回行なう実証実験は発話機能を利用するものだが、これはあくまで第1弾であり、今後は発話機能だけに留まらず、IoT家電から得られるデータを使った防災利用も進めていきたい。また、シャープを皮切りにスタートするが、他の家電メーカーとも一緒に歩調をあわせて同様の活動ができるように働きかけていきたいとする。
シャープの中田氏は、今回の実証実験の詳細について説明。シャープは2016年にAIoT対応家電の最初の製品を発売し、現在では12カテゴリー、延べ786機種がAIoT対応家電として登場している。現時点でのAIoT対応家電の市区町村カバー率は99%に達しており、ほぼ日本の全域をカバーしている。
もう一つの特徴は、オープンプラットフォーム指向ということで、色々な機器やサービスと連携できるということだ。AIoT対応家電には、クラウド発話機能が搭載されており、定型文だけでなく自由文の発話が可能である。今回の実証実験では、その自由文発話機能を使って防災・災害情報を伝達する。
エアコンや冷蔵庫は普段から電源に接続されている機器であり、「普段」そばにある家電が「もしも」をサポートする意義は大きい。実証実験の募集は2月13日~19日で、つくば市在住のシャープの発話に対応した冷蔵庫やエアコン、空気清浄機のユーザーが対象となる。実験期間は2023年2月27日~3月5日で、1日に数回、クラウドからの自由文発話が実行される。なお、その内容は誤解を避けるために、実際の防災情報を模したものではなく防災を啓蒙するようなものとなる。
今回の実証実験はあくまで最初のステップであり、エアコンや空気清浄機などに搭載されているセンサーで計測した温湿度などのイエナカ情報を災害対応機関に伝えるといったことも検討している。また、シャープ以外の機器とも連携できるような仕組みを作り、災害から身を守ることに貢献していきたいとする。
将来的にはマルチベンダーのIoT家電に対応
次に、防災科研理事長の林氏が、IoT家電の防災利用の可能性についてプレゼンを行なった。
2022年3月に福島県沖を震源とする地震が発生し、多くの停電が生じた。茨城県の震度は4、一部で5弱程度であり、防災の常識でいうと大した被害が出るレベルではないが、停電についてはシャープのIoT生活家電を利用して実際にモニターできたという。本来は1軒ごとに情報を知ることができるが、プライバシー保護のため、郵便番号単位で集計し、地図上にプロットした。これまでの停電情報は全て「電力会社側」からの提供であり、細かな部分は分からなかったが、IoT生活家電を利用することで、より正確な情報が分かり、早急に対応ができる。
将来的には、マルチベンダーのIoT生活家電からの情報を防災科研が設立したベンチャー企業「I-レジリエンス」が提供する統合プラットフォーム「IRIN」に集積し、府省庁、自治体などの公的機関の災害対応や民間企業の事業継続に活用していく。発話機能もいろんなことができるため、防災行政無線や防災ラジオ、スマホでの緊急速報メールなどを補完する役割を果たせる。
今回の実証実験はつくば市のスーパーサイエンスシティ構想にも合致する
最後につくば市市長の五十嵐氏が、つくば市の方針と今回の実証実験について以下のようにコメントした。
「つくば市のスーパーサイエンスシティ構想は、先進技術によって、社会全体が支え合う「誰一人取り残さない」社会を目指すものであり、その要素の一つとして、つくばレジリエンスと呼ばれる先端的防犯・防災・インフラサービスがある。今回のシャープや防災科研との取り組みは、市民全体の安心安全に繋がるものとして大きく期待している」
最後に、実際の発話イメージのデモが行なわれた。このデモは、クラウドからの発話ではなく、あらかじめ本体内に登録された音声によるものであったが、どのくらいの音量で再生するかといったことも実証実験で検証していく。
今回の実証実験はあくまでファーストステップであり、1年以内を目処に、現在は実現できていない他社プラットフォームや災害対応機関との連携を実現し、実用化への道筋を付けたいとのことだ。