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デジタル庁はこの1年なにをしてきたのか
2022年9月1日 18:32
デジタル庁に「3つの柱」
発足1年を迎え、デジタル庁では、新たに庁全の体戦略として、新たな「3つの柱」を定義した。
- 生活者、事業者、職員にやさしい公共サービスの提供
- デジタル基盤の整備による成長戦略の推進
- 安心安全で強靭なデジタル基盤の実現
1つめの「公共サービス」については、この1年間で、マイナンバーカードの普及やマイナポータルの改善や、事業者向けサービス認証基盤の提供、府省庁向けオンライン行政サービス、キャッシュレス法の成立などに取り組んだ。
1年の代表的な成果として紹介したのが「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」だ。「使いやすい行政サービスの代表として取り上げることも多く、もっとも有名な行政サービスの一つになった」(浅沼デジタル監)。
証明書発行は1,012万件、アプリのダウンロード数が842万件と幅広く利用されている。また、役所に行かずに証明書を発行できるという利用者の利便性向上だけでなく、自治体職員の業務負荷軽減に寄与した点も評価されているという。
マイナンバーカードは、所有率が45.8%となり、マイナンバーカードを使ったサービスも増えてきている。健康保険証利用申し込みは1,833万件となり、今後も使えるシーンの拡大に向けて関係省庁との協力を拡大していく。マイナポータルは、オンライン行政手続きの“窓口“としての機能を強化。この1年で薬剤情報の閲覧や公金受取口座登録などの機能を強化してきたが、今後も引っ越しのワンストップサービスや、パスポートのオンライン申請などの機能強化を予定。
事業に関する行政手続きのオンライン化も加速し、補助金申請システム(JGrants)の申請が拡大。また、政府機関のWebサイトの標準化のための共通ルールやシステムも開発しており、「デザインシステム」を開発。CMS(コンテンツ管理システム)やデザインルールをまとめており、今後各省庁に広げていく。
「キャッシュレス法」も成立し、11月から施行。車検登録手数料やパスポート発行などの手続きを順次キャッシュレス化していく。
成長戦略の推進では、デジタル臨時行政調査会の推進や、データ戦略、医療DX、教育分野のデジタル化、デジタルインボイスの標準仕様策定などを行なった。
デジタル臨時行政調査会では、デジタル化の障壁となる規制の改正などを行なっている。目視や対面必須といったルールなど、約4,000条項の見直し方向を確認。アナログで対応していたものを、民間のデジタル技術に変えていく取り組みなどを強化し、2025年6月までに「アナログ規制の一掃を目指す」とした。
第3のデジタル基盤については、「ガバメントクラウド」を推進。各行政機関で行なってきたシステムの発注や管理について、国や地方自治体が共通で使える仕組みを構築。高いセキュリティと、コスト面でも最適化を目指し、現在約20件の省庁や地方自治体での採用を進めている。デジタル庁のWebサイトもこのガバメントクラウドの活用事例となる。
共通ネットワークやシステムの整備は、政府機関での“働き方”の改革にも展開。在宅ワークやWeb会議などをしやすい環境を作り、農水省や人事院などから導入していく。
デジタル庁の経営企画機能を強化
デジタル庁の組織全体として、この1年間で官民の境目の無い組織を目指し、組織体制や文化づくり、働く環境づくりなどを改革。霞が関の働き方の“先進事例”となることを目指す。
浅沼デジタル監は、「『デジタル庁はなにをしているかわかりにくい』という声を頂いていることは認識しているが、今日説明したように、幅広く多岐にわたり、深い領域でデジタル化の推進や、法整備、システム整備を進めてきた」と成果を強調。あわせて、「生活者や事業者のメリットをしっかり伝えていく事が重要。わかりやすく伝える活動もこれから積極的に行なっていきたい」とした。
今後の取り組みとしては、「可能な限り数値や目標を明示する」という方針を決定。デジタル庁では現在140のプロジェクトが進んでいるが、KPI(業績評価指標)を導入し、優先度を明確にしながら成果を最大化していく。浅沼デジタル監は「民間・行政出身の人が集まるデジタル庁で、数値を握りながら進めていく活動は大事」とした。
また。「2年目で組織立ち上げフェーズから機能強化フェーズに移った」と語り、採用活動を積極化する。特に、目標と指標の設定やプロジェクトの整理を担当する経営企画機能についての採用を強化する。