ニュース
アルミの1/270の超軽量電磁波遮蔽材料。人工衛星・ドローンに パナやJAXA
2022年8月26日 12:10
パナソニック インダストリー、東海国立大学機構名古屋大学、山形大学、秋田大学は、パナソニック インダストリーを代表機関とし、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、宇宙探査における「課題解決型」研究テーマ「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の共同研究を開始した。2024年の実用化を目指す。
宇宙開発においては、運用する人工衛星などの質量軽減が課題となっており、機体の数十%を占める機内通信・給電用ケーブルの無線化の研究が進んでいる。これを実現するためには、電磁両立性(EMC)確保のため、高度な電磁波遮蔽技術が求められる。また、地上空間でのドローン・eVTOLといった電動航空機普及においても、軽量化と電磁波対策の両立は重要な要素の一つになる。さらに、5G・6G等、無線通信の高速化・高周波化にともない、ミリ波帯からテラヘルツ波帯への対応と軽量化を両立する電磁波遮蔽材料の必要性も高まるとみられている。
超軽量電磁波遮蔽材料は、軽さ(かさ密度0.01g/cm3レベル)と、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能を両立させる新材料。名古屋大学の研究によるカーボンナノチューブを用いた超軽量材料と、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化性樹脂の配合設計の組合せにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウムの270分の1の軽さを実現しながら同等の電磁波遮蔽性能を有する。
これにより、宇宙機や電動航空機の機器軽量化を促し、エネルギー効率を向上させることで、航続距離の伸長に貢献する。
材料の組成を変更することで、機器の仕様に合わせて、遮蔽する電磁波の周波数帯域の設定が可能。多様化する電磁環境において効率の良い電磁波遮蔽を実現し、ノイズによる機器の誤動作を抑制しながら、機器のEMC設計も容易にする。
EMCとは「electromagnetic compatibility」の略で、電気・電子機器が発する電磁波(電磁ノイズ)が周辺の機器に影響を与えず、自らも周辺からの電磁波の影響を受けずに動作する耐性のこと。
加工性にも優れ、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化樹脂の配合設計技術とフリーズドライ製法によりさまざまな立体構造を作成可能。