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請求書受領に特化し、インボイス対応を推進「マネーフォワード クラウドインボイス」

マネーフォワードは、24日から中堅・エンタープライズ企業向けの請求書受領システム「マネーフォワード クラウドインボイス」を提供開始する。利用者は、紙やメールで送付されたあらゆる形式の請求書を同サービス上で受領し、一元管理し、改正電子帳簿保存法や2023年10月開始のインボイス制度に対応する。

マネーフォワード クラウドインボイスは、インボイス制度における請求書の「受取」と「送付」に対応したサービス。インボイス制度では、紙やデジタルなど請求書のやり取りが大幅に増加し、また請求書の確認項目も大幅に増えることとなる。こうした取引先とのやりとりを一元管理し、基幹業務システムと連携可能とする主に中堅企業を想定したサービスとなる。サービス開始時点では「受取」から対応を開始し、送付機能は今後開発していく。

マネーフォワードでは、個人事業主や中小企業向けには、「クラウド請求書」や「クラウド会計」、「クラウドBOX」などのサービスを展開し、インボイス制度に対応予定。だが、中堅企業向けには、社内基幹業務向けの「クラウド請求書Plus」「クラウド債務支払」は展開しているものの、取引先と連携するための仕組みがなかったという。

そのため、請求書の「受取」と「送付」に特化した新サービスとして「マネーフォワード クラウドインボイス」を開発し、中堅企業のニーズに答える。また、大手企業ではすでに基幹システムやワークフローシステムが導入されている場合が多いが、そうした場合にも請求書受領に特化したサービスとして、クラウドインボイスは導入しやすく、大企業ニーズも見込んでいる。

マネーフォワード クラウドインボイスでは、メール添付や郵送など、あらゆる請求書を一括受領し、AI-OCRとオペレーター入力により、正確で迅速なデータ化を実現。請求書のオンラインでの一元管理を可能とする。また、電子帳簿保存法の「電子取引要件」「スキャナ保存要件」に沿った保存が可能で、インボイス制度対応における登録番号の確認、仕入税額控除対象かの識別にも対応する。

バックオフィス業務の負荷を軽減。他社基幹システム導入事業者にも提案

'23年10月開始のインボイス制度では、事業者は適格請求書(インボイス)に記載された消費税でないと「仕入税額控除」が受けられなくなる。企業が仕入先などから請求書をもらう場合、制度に準じた「適格請求書」でないと、企業側が支払う消費税が増えてしまうこととなる。

ただし、適格請求書を発行できるのは登録を受けた「課税事業者」のみで、消費税納付を免除されている「免税事業者」は適格請求書を発行できない。インボイス制度開始後は、事業者が免税事業者への支払いを行なう場合、課税事業者に比べて、支払い企業側の税負担が増えることとなる。また、適格請求書を受領した際に、適格請求書発行事業者の登録番号を確認し、消費税区分を把握するなど、これまでになかった多くの作業が発生する。

さらに、適格請求書を発行者と受領者の双方が保存する義務も生じ、流通する請求書数も大幅に増加する。そのため、デジタル化による請求書の発行・受領業務対応のニーズが高まっている。マネーフォワード クラウドインボイスでは、国税庁のAPIと連携し、自動で適格請求書発行事業者かを判別し、仕入税額控除の対象か否かを判定。複雑な作業を自動化できる。

これまでのマネーフォワードのサービスでもインボイス制度対応は行なうが、例えば、既存のマネーフォワードクラウド債務支払は、請求書の受領・データ化だけでなく、承認ワークフローや支払い処理、仕訳なども含まれていた。同社の調査によれば、大企業でも請求書受領に特化したサービスが求められていることから、新サービスとして「マネーフォワードクラウドインボイス」を展開する。

すべての請求書を電子データで一元管理できるようになることで、紙と電子データの混在における課題を解決。また、インボイス制度導入によって負荷増大が見込まれるバックオフィス業務の負荷軽減を図る。

Peppol対応やビジネスカードなど展開

マネーフォワードのビジネスSaaSの今後の展開としては、デジタルインボイスの標準仕様として官民で推進している「Peppol」への対応を発表した。Peppolは、業種やサービスでの異なる請求書の書式を標準化し、どのサービスでも同じデジタルデータとして処理できるようにする取り組み。

Peppolでは「4コーナーモデル」という仕組みを取り入れており、請求書の送り手(C1)→送り手からデジタルインボイスを受け取り検証(C2)、C2から受け取り、受け手に転送(C3)→受け手(C4)という流れでデジタルインボイスを受け渡す。

クラウド会計やクラウドインボイスは、C1とC4に相当するサービスで、C2、C3の工程はアクセスポイントプロバイダーと呼ばれ、デジタル庁で認定を受ける必要がある。このアクセスポイントプロバイダー自体での収益化は難しいというが、マネーフォワードではC2、C3のアクセスポイントプロバイダーとしてもデジタル庁に認定を申請予定という。

アクセスポイントプロバイダーになることで、Peppolネットワークに直接アクセス可能となり、請求書の発行から受領まで一気通貫でのサービス提供が可能になる見込み。

また、請求書業務に関わることで、企業間取引のデータを蓄積。BtoB決済やビジネスカードなど、付加価値ある決済サービス展開につなげていく。