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PayPayは「国民の財布」を目指す。LINE・ヤフーID連携で経済圏拡大
2022年8月3日 20:15
ヤフーやLINEの親会社のZホールディングス(ZHD)は3日、2022年度第1四半期決算発表とともに、10月に予定しているPayPayの連結子会社化や、今後の事業展開について説明した。
ZHDの代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎氏は、「PayPayの連結子会社化は、我々の重要な成長戦略のひとつ。LINE、ヤフー、PayPayの圧倒的な顧客基盤をベースにし、相互の結びつきをより強固にすることで、経済圏を一層拡大していく」と言及。LINEやPayPayを相互に連携させながら、PayPayの「マネタイズ」を本格化する方針を示した。
PayPayを「国民誰もが使うサービス」に
PayPay社は、ZHDとソフトバンクが中間持株会社を設立し、10月から連結子会社化。ZHDはソフトバンクと協議しながら、PayPayを運営していくことになる。また、ヤフーからPayPayカードに加盟店開拓のアクワイアリング事業を移管するとともに、PayPayカード株式会社をヤフー直下から、PayPay直下に移管する。事業再構築した新体制は10月からスタートする。
この再構築は、ZHDグループ事業の連携強化と経済圏の最大化といった狙いがある。
PayPayは、累計登録者数が4,865万人、決済取扱高が4.9兆円、決済回数が32.4億回とサービス開始3年9カ月で大きく成長し、決済市場で圧倒的な地位を確立。「マネタイズフェーズ」に入った。現時点でも、広告宣伝などのユーザー・加盟店獲得費用を除けば黒字化できる状態となっている。
そしてマネタイズの流れを加速させるのがZHDによる子会社化と、グループサービスとの連携による「経済圏の拡大」だ。
もっとも大きな施策が「ユーザー基盤の拡大」で、ZHDが抱える、LINE、ヤフー、PayPayの3つのサービスを連携させ、BtoC、BtoCの双方で経済圏を拡大する。4,865万人と決済サービスとして圧倒的なユーザーを抱えるPayPayだが、LINEの月間アクティブユーザー数は9,200万人、ヤフーは5,500万人と、PayPayをさらに超える規模を誇る。
PayPayの拡大には、まずLINEとのID連携を想定。LINEと連携することで、ユーザー基盤を最大化する。「PayPayを国民の誰もが使う決済サービスにする(川邊社長)」とし、LINE Payと連携したQRコード決済に加え、ポイントの統合も予定している。
PayPayユーザーの拡大については、「LINEで9,200万なので、理論値としてそれと同じにはなるはず。今の(PayPayの)倍近い数になる。そうなると日本のインターネットユーザーの大半が使う『国民的お財布』になれる。そういう志でやっている」(川邊社長)とした。
LINE、ヤフー、PayPayのID連携は、2023年以降に開始予定。現在ヤフーとPayPayでは約77%の3,700万件がすでにID連携しているが、今後LINE・ヤフー・PayPayの相互連携を80%を目標に拡大し、「圧倒的なユーザー基盤」を確立。「日本のネットユーザーのほぼ全て」をPayPay経済圏に誘導していく。
経済圏の拡大により、一般消費者向けには、Yahoo!ショッピングのコマース送客や、銀行・カード・証券などの金融事業強化、暗号資産事業などにつなげ、収益機会を最大化していく。BtoB(法人)向けは販促やEC化、金融、求人などの領域の拡大を目指す。
ECは送客強化で年間購入者倍増。楽天カードに対抗
特に力を入れていくのが「コマース」。10月から現在のPayPayモールを「Yahoo!ショッピング」に統合する予定だが、あわせてPayPayやLINEからの送客を強化。PayPayのポイント発行も拡大し、「最もポイントが貯まるEC」としてYahoo!ショッピングの「メインEC化率」を高めていく。目標は「年間購入者2倍」。
カード事業については、PayPayのユーザー基盤とともに、銀行・証券・カードのクロスユースを推進。国内最大規模の金融エコシステムを構築し、中期目標としてカード会員数3倍を掲げる。また、PayPayカードの「メインカード化」にも力を入れていく。
カード事業に強みを持つ「楽天」に近い戦略に見えるが、川邊社長も「楽天カードを抜く、抜かないという戦いをやらないといけない」と言及。楽天については、「経済圏の強さは見習うべきところがある。ロイヤリティプログラムや名称のシンプルさ、カード事業の強さなどが優れている。それに追いつき、追い越すための戦略を作っている」と言及し、戦略の詳細は10月にPayPay社から発表するという。
暗号資産については、LINE NFTやBITMAXとPayPayとの連携を想定。PayPayアプリからの暗号資産購入やPayPay加盟店での暗号資産決済などを目指す。
BtoB向けでは、販促DXでの売上拡大やPayPay加盟店でEC化支援の「My SmartStore」導入を推進。また、PayPay加盟店に、PayPayカードやPayPay銀行の各サービスを一気通貫で提供し、金融サービスの拡大を図っていく。
なお、LINE統合前からみずほ銀行と共同で設立準備を進めていたLINE Bankについても、準備は進めているという。PayPay銀行と重複することとなるが、「LINEとPayPayでは、ユーザー体験の作り方が違う。コミュニケーションと決済では、違った要素、違ったユーザーがいる。ユーザーを獲得し、サービス提供し、単価をあげることで、グループとしてはユーザー数と売上収益の最大化を図れる。拡大局面ではそういう戦略が取れ、いろいろなサービスにチャレンジする」と説明した。
目指すのは「インターネット屋の金融」
PayPayの子会社化とともに経済圏を拡大。LINE、ヤフー、PayPayのID連携により、メディア事業では+5~15%の広告単価拡大を図るほか、販促事業のDXで売上収益1,000億円を目指す。コマース事業ではYahoo!ショッピングへのシナジー効果を狙う。
特に力を入れる金融サービスについて、川邊社長は、「我々がやるのはインターネット屋がやる金融事業。デジタル化、ネットワーク化、パーソナライズ化により、人と社会とお金の関係を革命していく。払う、借りる、送る、増やす。全てのお金に係る行為からユーザー一人ひとりが恩恵を受けられるサービスを作っていく」と強調した。
ZHDの2022年第1四半期決算は、売上高が3,905億円(前年同期比+4.6%)、調整後EBITDAは865億円(同+0.2%)でいずれも第1四半期としては過去最高となった。LINE広告は2桁成長を維持し、トラベル事業の回復と海外ECの成長により、eコマース取り扱い高は9,895億円(前年比+15.1%)となった。