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プロント、パスタロボ始動。丸ビル「エビノスパゲッティ」

プロントコーポレーションは、6月30日に東京・丸ビルB1Fで新業態「エビノスパゲッティ」をオープンする。調理ロボット事業を手がけるTechMagicが新規に開発したパスタ自動調理ロボット「P-Robo」を導入し、パスタを自動調理して提供する。独自開発した形状のフライパンと高出力のIHで調理することで1食目は約75秒、連続調理時の2食目以降は約45秒ごとに提供できる。調理スピードと熟練の調理技術の再現を両立させ、省人化も目指す。

提供されるパスタは8種類
サラダ類も

コンセプトは「未来の食卓」こだわったのは美味しさ

店内は木と金属の組み合わせで伝統と新しさを演出

「エビノスパゲッティ丸ビル店」のデザインコンセプトは「未来の食卓」。伝統的な食卓の風景と先進的要素の素材を組み合わせ、「懐かしいけれど新しい洗練された空間」を演出した。「食事だけでも、酒だけでも楽しめるスパゲッティ屋」というコンセプトで、店内飲食のほか、持ち帰り販売ブースを店頭に用意してテイクアウトニーズに応える。なお、プロントコーポレーションの石浜敏青氏によれば、「エビノスパゲッティ」という店名はイタリア語で「ワインとスパゲッティ」という意味だという。

メニューの価格は、ペペロンチーノ 990円、カルボナーラ 935円、イカスミ 1,078円、ミニサラダ308円など。

メニュー。パスタのほかサラダやパンなど
持ち帰り需要にも応える
調理ロボットの様子は客席からも見える
プロントコーポレーション 企画開発部 石浜敏青氏

目標は人とロボットが融合した未来の飲食

プロントコーポレーション 常務取締役 杉山和弘氏

プロントとTechMagicが共同研究開発をスタートしたのは2018年9月。実際のものづくりが始まったのは2019年2月。プロントコーポレーション 常務取締役 杉山和弘氏は、パスタ調理ロボットの共同開発に至った経緯を「反対意見もあったが、食における社会課題を解決したいと考えた」と紹介した。そして「ロボットの目新しさだけでは続かない。もっともこだわったのは美味しさの追求。構想から4年かかった。ロボットが均一に美味しいパスタを作り、サーブはホスピタリティのある人が行なう。人とロボットが融合して未来の飲食が実現できる」と語った。

一号店を丸ビルに構えた理由は「インパクトを残したいので、まずは丸の内という日本の中心でやりたかった」とのこと。「どちらかといえば地方のほうがロボット自体は活用しやすいと思うが、この店のコンセプトはローテクとハイテクの掛け合わせ。この土地は今昔が交わる歴史のある場所。ここで新しいものができるというのはいいのではないか」と述べた。店舗規模も1号店としてはちょうどいいのではないかと考えているという。

今後、開発したロボットを活用した業態店舗を5年で50店舗まで増やしたいと考えているとのこと。まずはプロントのなかで技術を確立しながら3店舗くらいまでを目処に早期に広げ、その後はフランチャイズ展開や食堂などその他の業態への展開、ロボット外販も視野に入れる。

日本のものづくりと食文化を組み合わせた調理ロボで世界と戦う

TechMagic 代表取締役社長 白木裕士氏

パスタ調理ロボットはTechMagicの1号案件。代表取締役社長の白木裕士氏は「夢と希望をもって創業したが当初は多くの投資家から『成功事例がない』とネガティブな意見を多く頂いたが、プロントは面白いと評価してくれた」と経緯を紹介。そして「調理ロボットはハードとソフトの融合。ポイントは熟練シェフの味を再現するところにある。自動運転の世界はアメリカや中国がリードしているが、調理ロボの世界では日本のものづくりと食文化を組み合わせることで戦っていける」と意気込みを語った。

TechMagicの社員は現在70名程度。白木氏は「ロボットはやればやるほど様々な課題が出てくるが、問題を一つずつ解決していくことでどんどんバージョンアップされる」と語った。

パスタ自動調理ロボット「P-Robo」

パスタ自動調理ロボット「P-Robo」は4つの鍋を同時に動かしているので45秒間隔でパスタを出せる。エビノスパゲッティは従来の店舗と比較し、ロボット導入によって1〜2人の省人化を想定している。むらなく攪拌加熱するIH調理器とアームロボットを組み合わせ、1時間当たり最大90食の調理が可能。従来の2倍以上の高温調理でソース・具材・スパゲッティを一気に絡めて仕上げ、こだわりのアルデンテ食感の維持と、素材本来の香りを活かした熱々スパゲッティを約45秒ごとに1食提供できるとしている。

ロボットが扱うフライパン

厨房ではロボットアームがスパゲッティを茹で上げ、スライダーで移動しながら同時に4つのフライパンをハンドリングしている。IH調理器は回転しながら調理を行なう。強火力の短時間調理によりソースが煮詰まらず、麺にしっかりなじませられるという。

パスタは冷凍されている。冷凍されたパスタが冷凍庫から供給されるとアームが動いてそのままスパゲッティを茹で上げる。パスタの解凍自体は10秒程度。一方の具材とソースはシステム上部に設置されている冷蔵庫から供給されるので、スライダーで移動するアームがフライパンをハンドリングして、上の冷蔵庫から落ちてくる具材とソースを受け取る。そのまま茹で上がったパスタと一緒に回転加熱して一気に仕上げる流れだ。具材等の状態把握にはAI画像認識を活用しており、事前学習結果に基づいて間違ったソース・具材が投入されていないかどうかを自動でチェックできる。

冷凍されたパスタを茹でる
ソースと具材を入れてIH調理機で一気に加熱

従業員は盛付場所でフライパンを待つ。完成するとフライパンが盛り付け場所まで運ばれてくるので、フライパンから皿に盛り付け、トッピング作業を人手で行なう。操作インターフェイスもスタッフの使いやすさを追求し、P-Roboが何を調理しているか一目でわかるようにしたという。レシピ情報の更新も調整可能。厨房に滞在する人数は2人を予定している。フライパンの洗浄はロボットが自動で行なう。

TechMagicの横内浩平氏によればロボット開発にはROS(Robot Operating System)が用いられており、既存のライブラリのほか、独自開発部分が組み合わせられているとのこと。

TechMagic 横内浩平氏。「P-Robo」開発責任者
提供されたスパゲッティ

エビノスパゲッティ丸ビル店の所在地は、東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディングB1F。営業時間は11時~22時30分。座席数は32席。