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パナソニックの技術戦略は「ウェルビーイング」
2022年6月14日 09:00
パナソニックホールディングスは、中長期の戦略について記者説明会を開いた。サステナビリティとウェルビーイングに注力する。この領域の同社の研究開発投資比率は2022年度では63.9%となっているが、これを2024年度に82.5%にまで引き上げる。具体的には水素関連、ペロブスカイト太陽電池、分散型電源管理システムなどをコア技術としてクリーンエネルギー変革を加速させる。またIoTやサイバーフィジカルシステム、ロボティクスを活用し、ひとの理解、最適化を進め、物心両面の豊かさ両立を目指す。
「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」へ研究開発投資
パナソニックホールディングス 執行役員 グループCTOの小川立夫氏は、同社技術部門の役割は「個々の事業会社の手の及ばない領域および事業会社の競争力強化の後押しを横断的に実施していくことだ」と紹介した。各社の技術者と協力して「技術のダム」を作り、それを武器としてイノベーションを創出する。中長期的事業構想の実現に繋げる。「私たちがいなければ生まれなかった世界をつくる」をミッションとしているという。
注力分野は「サステナビリティ」と「ウェルビーイング」。2030年に向けた社会環境の変化に対応するために、低炭素/脱炭素、RE100(100%再エネ)、循環型経済など環境課題から来る社会課題の解決をビジネスそのものとして本業化、成長戦略に位置付ける。ウェルビーイングについては人間性中心への回帰という文脈で人や社会の課題を見つめていく。「ひととひとの関係性」や「ひとと社会の関係性」を大切にし、物と心が共に豊かな社会の実現に挑戦する。
そのために2024年度に向けて、サステナビリティとウェルビーイングへの研究開発投資比率を上げる。22年度は63.9%だった投資比率を24年度は82.5%まで高める。
ペロブスカイト太陽電池や水素、DERMSを使うカーボンニュートラルの実現
同社は2050年に向けて環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げている。CO2排出量1.1億トンの自社バリューチェーンの排出削減、既存事業による社会への排出削減貢献、そして新技術・新事業による社会への排出削減貢献の3つの取り組みにより、合計約3億トンの削減を目指す。これは全世界のCO2総排出量の1%にあたる。
特にGHG(温室効果ガス)の大気放出ゼロ、廃棄物ゼロを実現するための技術開発を行なう。GHGゼロについては3年から5年後の事業会社の商品サービス作りに貢献するような、再エネ活用、需給バランス調整、電化・省エネ技術を開発する。廃棄物ゼロについてはLCA基盤ものづくり、エコマテリアル開発、リファービッシュなどを進め、サーキュラーエコノミー型事業を創出する。
特にGHG大気放出ゼロについては、クリーンエネルギーを創る、貯める・運ぶ、使うの3つに分け、技術開発を行なっている。再エネ活用は水電解によるグリーン水素生成、ペロブスカイト太陽電池、水素燃料電池を例に挙げた。需給バランス調整に関しては蓄電池、EVソリューション、電化・省エネについてはパワーエレクトロニクス。それぞれの技術基盤へ戦略投資を行ない、クリーンエネルギーへの変革を加速させる。
パナソニックのペロブスカイト型太陽電池は、30cm角では世界No.1の変換効率17.9%を達成している。インクジェットを用いた大面積塗布技術を活用し、大モジュールを安価に作れる。将来は軽量でデザインフリーの特性を活かし、ビル壁面や工場など従来は重量のために設置できなかった場所にも設置できると考えられている。
水素は希少触媒の技術を活用し、希少な金属レス・高効率な水電解デバイスを開発している。
需給バランス調整については不安定な再生可能エネルギーがグリッドに接続されることを前提とした「DERMS(Distributed Energy Resource Management System、分散型電源マネジメントシステム)」と呼ばれる技術開発を進めている。充電ステーション向けのDERMSを電力会社に提供することで経済性と快適性の両立を目指す。
CPSを活用する、くらしとしごとのウェルビーイング
一人一人の豊かな暮らし実現を目指す「ウェルビーイング」については4つのコア領域を想定。より深く人を理解する「ひと理解」、体験価値を進化させる「アップデータブルUX」、サイバー空間の活用で最適解を高速実現する「CPS(サイバーフィジカルシステム)」、もののアクチュエーションにロボティクスを活用する「人協調・人共存ロボティクス」だ。
他社パートナーとも組んで、CPSを核にした「Human and Nature in the Loop」を回し、暮らしの場、仕事の場を丸ごとシミュレーションしながら実際にフィジカルな場で生産性と人と人との関係を改善、パナソニックならではのDXを実現していくことを目指す。
くらしのウェルビーイングを支える技術としては、IoT化を支えるソフトウェア共通基盤と、ロボティクス搬送ソリューションを例としてあげた。前者はタイムリーなソフトウェアアップデートの実現、後者は人手不足や非接触ニーズを満たすことを目指す。
仕事領域においては、人だけでなく人を取り巻く環境をまるごとモデル化、迅速にCPSのなかに取り込んで最適オペレーションを導き出すことで、工場や物流現場の改善を瞬時に回せるようにする。カメラを設置するだけで1日で現場環境をデータ化、課題は人不足ではなく現場効率の悪さだったといったことを高速に発見できるという。
グループ横断でイノベーションを加速
これらの加速のために、全社共通で競争力の源泉となるようなコア技術を選定、どんな価値を産まなければならないのかを見出して、グループ全体で磨き上げていく。グループCTOプロジェクトとして事業会社横断を進め、将来を見据えた足の長いプロジェクトとして育てているという。
弱みだと思っているソフトウェア関連の技術については松岡陽子氏の米国Yohanaのチームにエンジニアを派遣。最新の技術やノウハウの使い方を含めて人材育成を進めているという。
また自力だけで全てをやるのではなく、ベンチャーキャピタルとの連携も進め、新たな事業創出の仕組みを作っていく。パナソニックだけの独りよがりにならず、スピード感を持って世に生み出していくことが重要だと語った。そして最後に同社が4月から掲げているスローガン「幸せの、チカラに。」を紹介。サステナビリティとウェルビーイングの実現に一丸となって進んでいくと結んだ。