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三井物産とKDDIが高粒度“人流”解析でJV、都市DXを支援

三井物産とKDDIは、人の流れをAIで分析・可視化し予測も可能なプラットフォームを開発、共同設立の子会社GEOTRAがサービスの提供を開始したと発表した。一部ですでに導入実績があり、都市DXを推進する取り組みとして事業を本格化させる。

三井物産とKDDIは2021年3月、都市の人の流れをAIで分析するシミュレーターを共同開発すると発表していたが、具体的な成果として発表されたのが今回の取り組み。三井物産51%、KDDI49%の比率で出資するGEOTRAも設立した。

GEOTRA

GEOTRA(ジオトラ)は「GEOTRA 地理空間分析プラットフォーム」を提供する。都市の人の流れについて、現状の可視化や分析に加えて、未来の動向も予測できるのが特徴という。各種のデータを見られるダッシュボードのほか、コンサルティングなども提供する。

同プラットフォームはすでに、GEOTRAと三菱地所の共同で、丸の内エリアのMaaSや街の利便性に関する施策の検討といった取り組みに利用されている。また渋谷区では、交通や防災などを含め区の課題を的確に把握するために活用しており、今後も区のエリア・空間特性の把握に役立てていくという。

この地理空間分析プラットフォームは、道路などのインフラ、交通機関の計画、出店や広告、配送や物流といった、さまざまな事業に活用できる。実際の街から得られたデータを活用し、シミュレーターとして分析や予測をフィードバックする。

ダッシュボードでの分析

データの基はauユーザーの位置情報で、10mメッシュ、情報取得頻度は15分毎など詳細な情報を取り扱う。前提として、auの契約者から同意を得て取得した位置情報が用いられるが、これがそのまま移動データに転用されるわけではなく、機械学習の合成データの手法で、人工的に生成されたデータに置き換えられる。このためプライバシーに配慮した形で、詳細な分析や活用が可能になっている。

Web上で提供されるダッシュボードでは、例えば都市にある特定のオフィスビルを指定して、そのオフィスビルに通う人の居住地の分布を地図上に示すことが可能。また、オフィス街などのエリアを指定した上で、17時以降に帰宅以外で向かった先の分布、といったデータも見られる。公園など特定エリアに時間帯別で流入する割合を見ることも可能。このように、場所、時間、属性などさまざまな項目を自由に設定して、人の流れを「ひとりひとりの導線」のレベルで把握できるようになっている。

三井物産とKDDIの強み

街における人の流れは、インフラ、医療、商業など非常に広範囲に影響するため、「あらゆる活動のハブで、基礎的なもの」(GEOTRA 代表取締役社長 CEOの陣内寛大氏)。この人流分析が、DXを含め諸課題の突破口になり、未来予測のデータも加えることで、例えば新駅の選定、新しい商業施設の建設、MaaS施策の効果といったさまざまな領域に応用できる。

三井物産は都市開発やインフラ事業に強みを持ち、グローバル展開も行なっている。KDDIは通信インフラをはじめビッグデータの解析にも力を入れており、GEOTRAは両社の強みをかけ合わせて未来のまちづくりに貢献するとしている。

三井物産は、海外でゼロから都市を作る形のスマートシティ構想に参画しているが、近年では、既存の大都市に対して都市の課題に対処していく形でスマートシティ化を進めるというケースが増加、すでにある都市のデータや人流データを活用する潮流は、ますます高まっているという。

KDDIは5Gを中心とした通信インフラだけでなく、IoTも2,450万回線を提供するなど長年注力している。スマートシティ全体では「KDDIが貢献できる範囲は広い」(KDDI 取締役執行役員専務 ソリューション事業本部長の森敬一氏)とする。

三井物産とKDDIは現場レベルでも活発に議論し、「現場の相性は良く、盛り上がってきている」(三井物産 代表取締役副社長執行役員の米谷佳夫氏)。ほかの分野を含めて、具体的な案件が10件以上検討されているという。これらは決まり次第改めて案内される。