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ノーコードから川重メタバース マイクロソフトがBuildで示す未来

基調講演を行なうマイクロソフトのサティア・ナデラCEO

マイクロソフトは、年次開発者会議「Build 2022」をオンラインで開催中だ。日本向けには5月25日午前より、日本語での解説セッションなども準備されている。

イベントはアメリカ太平洋時間で進行中。日本時間の5月25日深夜0時より、基調講演が行なわれた。ここでは基調講演で解説された内容から、特に企業向けのビジネスやAIに関する話のいくつかをピックアップして紹介する。

AI自動プログラミング「GitHub Copilot」が今夏一般公開

「Build」は開発者向けのイベントなので、内容も開発者のための技術が中心になる。

AI関連でまずわかりやすいのは、昨年登場した、AIを使ったプログラミング機能である「GitHub Copilot」が、ベータを脱して、今夏から一般提供を開始する、ということだろう。

「GitHub Copilot」が夏から一般提供されることに

GitHub Copilotは、コメントなどからAIが文脈を読み取り、関数などのコードを提案するもの。AIがプログラミングをしてくれる、ということで非常に話題となった。

マイクロソフトによれば、ベータ版利用に登録した開発者のうち3分の1が毎日使う「デイリーユーザー」になっているという。それだけ、有望なツールと判断されている、ということだろう。

GitHub Copilotは、イーロン・マスク氏が出資して設立された(現在は運営からは離れている)アメリカのAI研究非営利団体「OpenAI」の技術を使って作られている。マイクロソフトは2019年にOpenAIと提携しているが、今後もGitHub Copilotやマイクロソフトのクラウドサービス「Azure」上でOpenAIの成果を利用する「Azure OpenAI Service」を通じ、協力関係を続けていくという。

手書きメモからアプリに。コードを知らなくてもソフト開発を推進

もう一つ、AIが目指すのは「ノーコード」、すなわち、利用側でコードを一切書くことなく、目的のプログラムが生成できる世界である。

今回は、Azure Cognitive ServiceのAIを活用し、手書きで書いた図面によるアプリ設計をそのまま「アプリ」にする「Power Apps Express Design」が発表された。

「Power Apps Express Design」では、手書きメモから認識して、ごく少ないメニュー選択でアプリを開発できる

これは少々極端な例にも思えるが、マイクロソフトとしては、AIを活用してプログラミングをする手間を減らしていき、より多くの人がコンピュータの力を使えるようにすることを狙っている。

AIの活用はメタバースなどにも応用される。文章で書くとそれに合わせてCGなどを自動生成することで、ユーザーインターフェースのシンプル化を行なうことも可能だという。

3Dアプリの操作は大変だが、そこに「自然言語での命令」を入れることで、より簡単に実現可能になる

川崎重工が「インダストリアルメタバース」を構築

そして、もう一つの大きな変化が「メタバース」だ。

アバターによるコミュニケーションである「Mesh for Teams」は、マイクロソフトのメタバース戦略にとって重要な要素で、その活用について時間を割いて解説された。

だが、同時に重要なのが、企業の生産環境の中でメタバースをどう活かすのか、という点だ。

基調講演の中では、川崎重工業(川崎重工)による「インダストリアルメタバース」の構築が紹介された。

川崎重工とのコラボレーションについて紹介するナデラCEO
Kawasaki Heavy Industries (Satya Nadella 2022 Build Keynote)

コロナ禍から立ち直る中で、オンラインとオフラインの混じり合うハイブリッド環境になってきているが、それをホワイトカラーの現場だけでなく、ロボットを活用した製造環境の中に取り込もうというのが、川崎重工のプロジェクトの狙いである。

川崎重工では、ロボットの動作確認から操作までをリモート化し、さらに「デジタルツイン」化することで、試験・開発なども仮想空間内で展開している

トラブルの遠隔管理はもちろん、そうした状況をデジタル空間の中に「デジタルツイン」としてそのまま再現し、トラブルの状況を把握し、課題解決に活かせる。開発から実行までの全てをデジタルツインと開発環境を連携して確認できるため、移動時間とコストを大幅に削減することが可能となる。

そのためには当然、3D環境でのシミュレーションとコミュニケーション環境が必須になる。それだけでなく、IoTを介してロボットの状況を素早く把握する機能も必須だ。

そのために、IoTとしての連携からデジタルツインの活用まで、マイクロソフトと川崎重工は連携し、開発を続けていくことになるという。