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ANA オンラインチェックインに本腰。すべてをスマホで

アプリを強化、新サービスモデルとして発表した全日本空輸 代表取締役社長の井上慎一氏

ANAは、航空券の手続きや空港、機内サービスの利用などをスマートフォンの「ANAアプリ」に集約し、新サービス「ANA Smart Travel」(ANA スマートトラベル)として発表した。一部新機能を追加しながら、オンラインチェックインなどデジタルサービスの利用拡大を図る。

ANAの国内線・国際線について、旅の計画から搭乗手続き、空港・機内で過ごす時間、到着後までを、パーソナライズされた情報でカバーするというサービスモデル。大半はすでに提供されているサービスだが、モバイルデバイスひとつでできることを打ち出し、デジタル化の戦略を明確にする。

ANAアプリでは、航空券の予約・購入や、各種渡航書類の登録、機内食・機内販売の事前予約などに対応しており、搭乗便の出発24時間前からはオンラインチェックインが可能。座席選択や変更、搭乗券(モバイル搭乗券)の発行が行なえる。

今後は、テーマや目的地から旅行プランを検索するといった新機能を検討。オンラインチェックインの通知を「2時間前」にも行なうようにする。

モバイル搭乗券を発行した後は、空港まで「アクセスナビ」による案内を利用可能。空港内の各種施設も案内される。空港ではカウンターに立ち寄ることなく保安検査場の通過が可能で、飛行機に搭乗できる。

機内では、ANAアプリから機内Wi-Fiインターネット接続サービスを利用可能で、機内誌や雑誌・新聞はモバイルデバイス上で読むことが可能。

今後は、機内食が不要な場合の申告も可能になる予定。機内Wi-Fiはつながりにくいといった声も多いとし、機器の改善を図っていく方針。

オンラインチェックインに本腰

6月からはオンラインチェックインのサービスが拡充され、座席選択や変更はアプリでワンタップで操作できるようになるなど、簡便化を図る。今年度中にはツータップでオンラインチェックインを完了、ワンタップで搭乗券を発行をできるようにする予定。

オンラインチェックイン自体はすでに提供されているサービスだが、使い勝手や案内不足などもあり、利用は全体の5割にとどまっているという。今後はこれを、来年度に8割に、2026年度には9割にまで引き上げるのが目標。

このほかデジタル化が遅れているのは、欠航や遅延などの際の対応とし、新サービスでは対象ユーザーに、タイムリーにスマートフォンで通知を行なう。例えば予約便では、出発時刻の変更や搭乗口の急な変更が生じた際にプッシュ通知で知らせるようにしているが、これを国際線でも対応する予定。搭乗した飛行中の便が遅延している際の乗継便の案内については、飛行中の機内にいるタイミングで受け取れるようになっている。

さらに2023年度以降には、大幅な遅延や欠航によるANAからの補償手続きも、スマートフォンで申請できるようになる予定。振替便の案内はメールにて行なっているが、アプリのプッシュ通知やSMSにも対応する予定。

なお、オンラインチェックインのサービス拡大に伴い、現在国内線で提供している「SKiP」サービスは2023年3月31日で終了する。また2023年4月以降順次、国内線の自動チェックイン機の取り扱いも終了する。対象は国内51の空港の437台(国際線は他社と機器を共有するため対象外)。1年をかけて順次撤去する方針で、オンラインチェックインへの移行を図る。

オンラインチェックインを利用できない場合は、従来同様にカウンターやアシスタントサービスで対応する。

デジタル化で“人を充実させる”

新サービスの概要について、ANAでは「ほとんどのお客様がスマートフォンを使っている。デジタル化した、さらに価値のあるサービスで、ストレスのないスムーズな体験をしてもらいたい」(全日本空輸 代表取締役社長の井上慎一氏)とする。

コロナ禍の過去2年に社内で議論を重ね、調査も行なった結果、空港はストレスのないスムーズな搭乗が求められていると結論づけ、それを軸足に新サービスの内容を固めたという。スマートフォンを中心に据えているのも、それが革新的だからということではなく、むしろ海外を含めてスタンダードであるとし、「お客様はデジタルに慣れているので、それに合わせるだけ」(井上氏)というスタンス。

もちろん有人のカウンターは継続し、人による案内やサポートは継続する。デジタル化はやがて他社と同じ内容になるだけで差別化しづらい一方、デジタル化により人的サービスの量や質を上げることが可能になり、こうしたスタッフの手厚いサポート体制を構築することこそが、他社が真似しにくいANAの強みになるとしている。