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楽天×西友“OMO”本格化。ネットスーパーと店舗融合や西友楽天カード

楽天グループの三木谷浩史会長(左)と西友の大久保恒夫社長(右)

西友と楽天グループは、「楽天ポイント」を軸としたOMO戦略で協力し、4月から本格展開する。4月1日からは西友専用デザインの楽天カードを発行するほか、西友全店舗に楽天ポイントを導入。さらにネットスーパー事業も強化しながら、西友のリアル店舗とアプリを共通化するなど、オフラインとオンラインをシームレスに繋ぎ、スーパー事業の拡大を図る。

OMO(Online Merges with Offline)は、オンライン(EC)とオフライン(実店舗)を連動した販売やマーケティングの取り組み。リアルに強みを持つ西友と、ECやマーケティングに強みを持つ楽天グループが連携し、双方の事業を強化。西友は「スーパーマーケットナンバーワン」かつ、日本を代表するOMOリテーラーを目指す。

具体的な取り組みとして、4月1日から、クレジットカード機能付きオリジナルデザインカード「楽天カード 西友デザイン」を発行開始。スーパーマーケット業界向けの専用デザインは初となり、あわせて電子マネー「楽天Edy」も、西友などの全店舗に導入する。西友は、「楽天ポイントが貯まる・使えるスーパーマーケット」となる。

4月26日からは、「楽天西友ネットスーパー」アプリに店舗でも使える機能を追加し、「楽天西友アプリ」に刷新する。同アプリでは、楽天西友ネットスーパーの機能と、楽天ポイントカード、楽天ペイ(アプリ決済)の各機能を統合。「ネットスーパーでも店舗でも使えるアプリに進化させる」としている。

また、同日(26日)からは楽天ポイントカードが西友グループの全店舗で利用可能となる。

特に重要なのが、西友のアプリとネットスーパーを共通化すること。楽天ネットスーパー利用者が西友を使いやすくし、西友への送客を増やす考え。高齢層が定着している西友の顧客に、ネットスーパーの比較的若い顧客を加え、西友の品揃え刷新なども目指す。重視しているのは「顧客満足度の向上」。

西友では、導入済みの「楽天ペイ(アプリ決済)」と、新たに導入する楽天Edy、楽天ポイントカードの活用により、データ収集・分析の基盤を整備。オンラインとオフラインのデータを統合し、一貫性のあるパーソナライズされたコミュニケーションやプロモーションを利用者に提供していく。

スーパーOMO時代のリーダーに

楽天グループの三木谷浩史会長は、日本の物販分野のEC化率は8.1%で世界平均の17.9%に遅れをとっており、食品に限定すると3.3%とさらに低くなることに言及。しかし、コロナ禍を受けたデジタル化の伸長で、「食品のEC化は超拡大フェーズに入りつつある」と強調し、楽天と西友が進める「楽天西友ネットスーパー」がその中で大きな役割を担っていくとアピールした。

楽天西友ネットスーパーの特徴は、店舗からの配送のほか、大型の物流センターからの配送も行なうこと。大都市圏に3つの物流センターを持ち、常温・冷蔵・冷凍の3温度帯で3~4万アイテムを揃えながら自動化により低コスト化を図っている。また、2023年には千葉県松戸市にも新たなセンターを設置予定。

楽天西友ネットスーパーの2021年流通総額は約500億円(前年比26%増)と順調に成長しているが、物流センターからの出荷総額に限ると前年比79%増。物流センターの存在が、ネットスーパー事業の拡大を支えており、こことに実店舗と楽天の持つデータを組み合わせることが「これからのスーパーで重要なこと」という。

今回の提携強化では、楽天ECと西友店舗の購買データ(カスタマーDNA)を楽天IDにより連携させ、これまでデータ活用が少なかった店舗(西友)におけるデジタルマーケティングや商品展開などに活用。楽天のノウハウを生かした西友の売上拡大を図る。

三木谷氏は、「コロナ禍の3年でデジタル化は進んだが、急速な人口減の中、スーパーマーケットは大きな転換点を迎えている。これを大きなビジネスチャンスとして世界に冠たるOMOプラットフォームを作る」と強調。西友以外のスーパーにもOMOプラットフォームを展開し、「日本でもスーパーマーケットのOMO時代に突入する」と語った。

西友とネットの客層を近づける

西友の大久保恒夫社長は、西友と楽天は、リアル店舗とECで相互に補完関係にあるとし、両社の取り組みとして「楽天西友ネットスーパー」を紹介。店舗出荷と物流センター(倉庫)のハイブリッド型で、店舗は124店で展開している。

「店舗型のネットスーパーは『黒字にならない』と言われているが、すでに多くの店舗で黒字化している」としており、流通センターも拡張して稼働能力を拡大中。当初予定していた「2025年流通総額1,000億円」という目標は、前倒しして2024年には達成予定という。

オンラインとオフラインの融合においては、楽天の持つデータを積極的に活用。所持率・普及率の高い「楽天ポイント」を導入し、オンラインとオフラインをひとつのIDでデータ統合し、顧客に最適なコミュニケーションを展開していく。

西友店舗における楽天ポイント利用者数は、2022年500万人、2025年700万人を目指す。特に「アプリは非常に重要」と語り、'22年120万、'25年に500万のダウンロードを目標としている。

大久保社長が、「アプリが重要」と語る理由は、スーパーの顧客層の現状にある。西友店舗の利用者は50-70代が中心だが、ネットスーパーは30-50代。今後の成長には、このギャップをデータやアプリを使いながら埋めていく必要がある。ネットスーパーとのアプリ共通化でも顧客層を広げていくといった狙いがある。

「品揃えは、どうしてもいま店に来ている客層に寄ってしまう。楽天さんと組むことで顧客層が変わってくる。いままでの品揃えだけでなく、大きく変えないといけないということは、データとしても見えてきている」(西友 執行役員 マーケティング本部長 石谷桂子氏)とした。

またネットスーパーは、店舗網でカバーできないエリアも「面」で抑えることができるとして、楽天との大きなシナジーがあるという。楽天との協力により、価格以外のニーズに対応。「ネットスーパーナンバーワン、デジタルマーケティングナンバーワン、食品スーパーナンバーワンを目指す」(西友 大久保社長)。