ニュース
新型決済ターミナルや不正検知セルフレジなどリテールテック最前線
2022年3月8日 08:20
3月1日から4日の期間、東京ビッグサイトにおいて第38回流通情報システム総合展「リテールテックJAPAN 2022」が開催された。本稿では、展示会場で展示されていた製品やソリューションのうち、無人店舗やセルフ決済レジなど、決済関連分野で目に付いたものをメーカー別に紹介する。
東芝テックは新型決済ターミナルやAIカート
東芝テックは、日本カードネットワーク専用のキャッシュレス決済ターミナル「CT-5100」の後継モデルとなる「CT-6100」を参考展示した。
CT-5100は、決済手段を選択するタッチディスプレイと磁気ストライプリーダ、レシートプリンタを備える本体と、ICカードやバーコードを読み取る非接触リーダライタ、ICカードリーダライタを備えるPIN入力用のピンパッドの3ピース構成(オプションの電子サインパッドも加えると最大4ピース構成)だった。
それに対しCT-6100ではタッチディスプレイとレシートプリンタを備える本体に、非接触ICカードリーダライタ、ICリーダライタ、磁気ストライプリーダ、バーコード読み取り用カメラ、PIN入力などを行なうタッチディスプレイを備える統合リーダライタの2ピース構造となった。
さらに、クレジットカード利用時の待ち受けは、IC、非接触IC(NFC)、磁気ストライプの同時待ち受けに対応となった。
また、統合リーダライタは正面にICカード挿入口を用意。これにより、レジ回りの決済機器設置スペースを削減するとともに、コロナ禍以降主流となっている、利用客が決済時にICカードを挿入したカードをかざすオペレーションがやりやすくなっているという。
スーパーなどで利用されるAIカートやセルフレジなどの最新ソリューションも参考展示した。
利用者のスマートフォンを利用して商品の読み取り/決済を行なう「ピピットスマホ」用のスルーチェックゲートも展示した。ピピットスマホでは、利用客のスマートフォンにインストールした専用アプリで購入する商品を読み取り、有人レジやセルフレジで最終的な決済を行なう流れとなるが、参考展示されたスルーチェックゲートでは、専用アプリに決済用クレジットカードを登録しておき、アプリ上で決済を行なった後に表示されるバーコードをスルーチェックゲートで読み取らせるだけで退店できる。
有人レジやセルフレジに立ち寄らず退店でき、利用者の利便性向上と店舗の省力化に繋がるとしている。
「画像認識AIカート」は、文字通りAI画像認識でカートに投入する商品を識別。カート上部の前後左右4カ所にカメラを装着し4方向から商品を画像解析で認識し、商品のバーコードを読み取ることなく高精度に商品を識別する。また、カートに表記されている2次元バーコードを専用アプリで読み取ることで、カートと利用者が紐付けられ、アプリだけで決済まで行なわれるため、レジを通る必要もないという。
この他、顔認証決済機能や上部にカメラを装着し不正を検知する機能を組み合わせたセフルレジも参考展示した。
画像認識と自動ドアを融合するNEC
NECは、生体認証を利用した決済システムや画像認識を利用した自動ドアエントランスなどを参考展示した。
「マルチモーダル生体認証決済」システムは、生体情報として顔情報と虹彩情報を同時に利用する決済システム。あらかじめ顔情報と虹彩情報や決済手段などを登録しておくことで、顔認証単体よりも非常に高精度に個人認証が行なわれ、決済まで完了するという。こちらは、POSシステムに接続して利用することを想定して開発を進めるとともに、実証実験を行なっているとのこと。
「棚定点観測サービス」は、商品棚を捉えるようにカメラを設置し、画像認識によって商品棚の状況をチェックし、欠品などを通知するというものだ。店員が売り場を回って欠品チェックすることなく、バックヤードから欠品状況が把握できるため、店員の省力化や品出しが遅れることによる機会ロスなどを防ぐことが可能。利用するカメラは汎用のネットワークカメラのため、安価に実現できる点も特徴とのこと。
また、画像解析AIと自動ドアを組み合わせた「価値創造型エントランス」も展示した。
NECの画像解析技術と、フルテックの自動ドアを組み合わせたもので、カメラで人の移動方向を検知してドアを開閉する点が大きな特徴。
例えば、ドアに向かってくる人を検知するとドアが開き、ドアを横切る人を検知するとドアが開かないため、無駄なドアの開きを防止し、空調効率などを向上。また、車椅子の人を検知すると、通常よりも長くドアを開くとともに、閉じるスピードも遅くなる。さらにドア横に設置されたサイネージや音声で、車椅子の人が通過することを告知して注意喚起するといった機能も備わっている。
この他、通過する人の性別や年齢といった属性も検知し、その人に合った広告や情報をサイネージに表示することも可能となっている。商業施設への設置をターゲットとしており、JR戸塚駅前の「トツカーナモール」などで実証実験が行なわれている。
日本NCRは不正検知セルフレジ
日本NCRは、クラウドを活用した店舗向けDXソリューション「NCRコマースプラットフォーム」を中心とした展示を行なった。
NCRコマースプラットフォームは、店舗のデジタルトランスフォーメーションを実現するための統合基盤となっており、顧客情報や取引情報などの店舗運営に関連する様々な情報をクラウドに集約し利活用したり、POSシステムとセルフレジ、スマートカードなどとの連携、店舗デバイスの仮想化などによるメンテナンスの負荷やコストの軽減、IoT機器を活用した店舗機器の一括監視、他社サービスとのAPI連携などの様々な機能を提供する。
このうち店舗危機管理サービスでは、IoTを活用し、ネットワーク機器や棚札、空調、冷蔵庫など、小売店舗に欠かせない機器の稼働状況を把握し、問題が発生した場合には、いち早く管理者やサポートに連絡を送ることで、店舗運営を効率化。実際にアメリカでの運用例では、インシデントが10~15%減少、サポートへのコール回数が30~50%減少、サポート出動費は10~25%低減、店舗機器の稼働率は10~20%向上し、機器メンテナンスに関わる時間やコストの低減に繋がったという。
NCRコマースプラットフォームは、今後日本でも導入に向けて実証実験を進め、2022年7月頃の提供開始を予定している。
また、カメラを利用したセルフレジのセキュリティシステムも展示した。セルフレジの上方にカメラを設置し、利用客の動作や商品の移動を画像認識で検知。これにより、不正会計しようとした動きを検知して警告を表示するなどして、不正を防止するという。
例えば、高額商品と低額商品を重ね、高額商品をスキャンするふりをして低額商品だけをスキャンするといった場合でも、カメラで捉えた商品の動きと、その時に実際にスキャンされた商品の食い違いを検知できるとする。不正を検知した場合には、画面にアラートを表示したり、店員に通知する。
この不正検知システムは、現在あるセルフレジに追加して運用可能。画像解析はクラウドで行なわれるため、ローカルサーバーなどの設置も不要という。アメリカやイギリスではすでに導入事例があるそうで、日本では今後導入を進めたいとのことだ。
IngenicoはオールインワンPOS
WorldlineグループのIngenicoブースでは、最新のオールインワンPOS端末「AXIUM DX8000」を展示した。
AXIUM DX8000は、OSにAndroid 10を採用した最新のオールインワンPOS端末。日本ではまだ導入されておらず、展開はこれからとのこと。従来モデルではOSがAndroid 5.1だったが、AXIUM DX8000ではAndroid 10となりセキュリティ性が向上するとともに、対応アプリケーションの強化など機能面が向上。キャッシュレス決済だけでなくPOSアプリなども導入できる。通信機能も内蔵しているため、場所を問わずPOS/キャッシュレス決済端末として利用できる。
また会場ブースでは、AXIUM DX8000に富士通フロンテックの手のひら静脈センサーを搭載したデモ端末も展示し、手のひら静脈センサーを利用した決済のデモも行なわれた。あらかじめ利用者の手のひら静脈情報と決済手段を登録しておくことで、手のひらをかざすだけで決済できるようになる。こちらはあくまでもデモ展示で、搭載機の発売が決まっているわけではく、様々な手段で決済を実現する取り組みを示すために展示したとのことだ。
Retail AIは次世代スマートショッピングカート
トライアル傘下のRetail AIブースでは、次世代スマートショッピングカートやAI冷蔵ショーケースなどを展示した。
次世代スマートショッピングカートは、2021年6月に発表し、2022年2月末より本格稼働を開始した、スマートショッピングカートの最新モデル。センサーを活用した商品スキャン漏れ防止の自動検知アラーム装置や、利用者の属性や購買情報などから、各個人に最適な商品をカート上のタブレットにレコメンド表示する機能などを搭載。特に、スキャン漏れ防止の自動検知アラーム装置の搭載は不正防止に繋げられるため、今後導入を進める中で効果を検証しつつ、スマートショッピングカートの導入を大きく加速していきたいという。
また、AI冷蔵ショーケースは、今回が関東初展示となった。このAI冷蔵ショーケースは、上部に欠品検知用のカメラを設置し、1日に2回カメラを作動させ商品の欠品を検知したら、ショーケースに設置された欠品を知らせるLEDを光らせる、というシンプルな構造を採用。システムはショーケース単体で完結しており、外部のサーバーなどと連携することもないという。
Retail AIでは、すでに棚検知用のカメラを多数設置し、画像認識で欠品を検知しバックヤードから確認したり、担当者に通知を送るシステムも開発し、トライアル店舗などで運用している。その中で、欠品検知はもっとシンプルな形でも対応してもいいのでは、という判断の中から出てきたシステムが、このAI冷蔵ショーケースとのこと。様々なシステムを開発、運用することで、店舗ごとに異なるオペレーションに最適なシステムを柔軟に提供したいとのことだ。
BLE発信できるIoTラベル
サトーブースでは、イスラエルのWiliotが開発したIoTセンシングラベル「Wiliot IoT ピクセル」のデモを行なった。
Wiliot IoT ピクセルは、電源不要でBluetooth Low Energy(BLE)パケットを発信できるラベルだ。2.4GHz帯域の電波を受信することで発電し、ラベル内のキャパシタに電力を蓄積。十分な電力が溜まるとBLEパケットを発信するようになる。そのうえで、動きや位置、温度、質量などの情報を送信できるという。
このWiliot IoT ピクセルを商品に貼り付けておけば、その商品の在庫を瞬時に判断できるという。また、商品棚に設置すれば、その棚の商品の在庫がわかる。この他、デモとして展示している商品が何回使われたかを検知したり、香水などのサンプルの残量を検知するといったことにも応用可能で、商品の在庫管理から販促商品の管理まで、幅広い用途に活用できることが示された。
この他、イトーヨーカドーと共同で行なった、食品ロスの軽減を目指して食品のダイナミックプライシングを実現するための電子棚札の実証実験システムも展示した。商品の消費期限ごとにタグを付けておき、電子棚札にタグごとの値段を表示。値段は消費期限までの残り期間に応じて変化するが、サーバーから変更指示を出すだけで電子棚札の表示を簡単に書き換え可能となっている。これにより、消費者にわかりやすいダイナミックプライシングの実現を目指しているという。