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日本独自の「コンビニ決済」。決済大手Stripeが積極対応した理由
2022年3月3日 14:28
ネット決済インフラを展開するStripeは3日、日本発の新機能として「コンビニ決済」を提供開始した。これにより、国内企業がスタートアップから大企業まで、Stripeの決済インフラを活用し、Stripe APIを通じてコンビニ決済を取り扱うことができるようなる。
Stripeは、オンライン決済の「Payments」や「Checkout」、Shopifyなどプラットフォーム向けの決済「Connect」、サブスクリプション管理「Billing」など、決済にまつわる様々なサービスを展開する企業。顧客も、Amazon、Google、Twitter、セールスフォース、Zoomなどのグローバルなテック企業や、Shopifyなどのプラットフォーム、日本ではANA、DeNA、クックパッド、SmartHR、freee、日本経済新聞などのサービスで採用されている。Stripeの名前は知らなくても「実は使っている」という人は非常に多いサービスだ。
そのStripeが、日本向けに開発したのが「コンビニ決済」。Stripeの決済手段として、クレジットカード、デビットカードに加え、決済時にコンビニ決済を選べるようになる。
コンビニ決済は、事業者がユーザーに決済コードを発行し、ユーザーはそのコードを使ってコンビニで現金で支払う仕組み。約20兆円の日本のB2C(消費者向け)オンライン市場において、クレジットカード決済に続いて2番目に利用率が高い決済方法であり、特にEC企業の物販やチケット販売での利用が多い。そのため、Stripeのユーザー企業からも導入の要望が非常に強かったという。
Stripeはグローバルなプラットフォームだが、日本とAPACのチームにおいて、ユーザーが多く、規模が大きい日本のコンビニ決済に対応した。サービス事業者としては、Shopify Japan、DeNA、ZAIKOなどが参加している。今回のコンビニ決済は日本の加盟店のみの機能となり、海外のStripe加盟店では利用できない。
対応するコンビニエンスストアは、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、セイコーマート。セブンイレブンやデイリーヤマザキには対応しない。
ECサイトなどStripe加盟店で購入時に「コンビニ決済」を選ぶと、支払画面で支払予定のコンビニを選択する画面が表示される。ここでローソン、ファミマなどのコンビニを選択すると、支払情報や支払番号が発行される。それをもってコンビニのマルチメディア端末で申し込み端末を発行し、現金で支払いを行なう。
支払いを行なうと、ストライプの加盟店に即時で購入情報が通知され、商品の発送などが行なわれる仕組み。
導入手続きの簡略化やコンバージョン率の向上、シームレスな支払い選択など、ユーザー企業や消費者が抱える課題を解決する Stripe の開発技術を盛り込んだユーザビリティを実現しています。#コンビニ決済pic.twitter.com/QuYhjJG4rr
— Stripe Japan (@StripeJapan)March 3, 2022
Stripeでは「2年強」とかなりの開発期間をかけて「コンビニ決済」を開発した。日本で一般的に使われているコンビニ決済だが、「明確な定義やルールがあるわけではない」(ストライプジャパン共同代表取締役のダニエル・ヘフェルナン氏)という。
そのため、各コンビニチェーンが提供する決済機能やルールを集めて、それをまとめて「コンビニ決済」というソリューションにまとめる必要がある。各チェーンによってマルチメディア端末の使い方などユーザー体験やフローも異なり、チェーンごとの審査もあるなど、開発の難易度は高かったとする。
また、コンビニ決済のプロダクトチームは日本だが、開発はStripeグローバルで分担している。「コンビニ決済」「コンビニ払い」という独特の仕組みは、「日本の人が思っている以上に、海外ではユニークなもの」で、理解してもらいにくかったという。そこで店頭での決済の流れなどをビデオで撮影して共有するなど、日本発のソリューションならではの難しさがあったとする。
なお、セブン-イレブンやデイリーが外れている理由については、セブンイレブンは審査が他のチェーンに比べて厳し目のため対応を見送った。また、デイリーについてもシステムが異なっていることや店舗数などから、対応を見送っているが、「お客様のフィードバックにより今後検討していきたい」としている。
加盟店手数料は3.6%で、決済手数料として最低120円を徴収する。
Stripeにおけるコンビニ決済対応では、提供開始に伴う事務処理も簡易化。一般的なコンビニ決済機能に比べ、約10分の1の開発時間で機能統合でき、審査や事務処理で約10週間かかっていた工程は、Stripeでは最短2週間で可能となるという。
コンビニ決済では支払い率が低くなりがちだが、「リマインダー通知」をカスタマイズ可能とし、消費者の支払い行動を促進。コンバージョン率の向上に配慮しているという。また、返金時なども効率的にサービス提供できる仕組みを導入しているという。
Stripeの各サービスとも連携。Payment Links(リンクを共有するだけで決済を可能にするノーコードサービス)やStripe Invoicing(請求プラットフォーム)を導入していれば、開発を必要とせずにコンビニ決済の取り扱いを開始できるという。また、コンビニ払いでは、翌月末や翌々月末払いが一般的な入金サイクルだが、Stripeでは4営業日後にコンビニ側から売り上げ分の入金ができるという。