ニュース
旧九段会館の保存・復原工事が12月完了
2021年10月29日 19:44
東急不動産と鹿島建設は、登録有形文化財である旧九段会館を一部保存しながら建て替えるプロジェクトについて、全体の竣工に先駆け、保存棟(旧九段会館部分)の保存・復原工事が12月に完了することを発表した。全体竣工は2022年7月以降。
「(仮称)九段南一丁目プロジェクト」として進められている事業。昭和9年に軍人會館として創建された旧九段会館の一部を、真正性を追求しながら保存・復原しつつ、新築棟ではオフィスを中心とした高度利用を一体的に図ることで、旧九段会館に新たな価値を与えるとともに、歴史と自然が息づくまちづくりの実現を目指す。
プロジェクトを進めていく中で、正倉院宝物殿の銀壺と類似した模様のクロスや、ブロンズや錫メッキなどの金属製建具、希少価値の高い大理石など、現代では手に入らないような創建当時の材料や歴史的価値のある品が見つかっている。歴史的価値のある素材を保存、もしくは一部残すなど、建造物の真正性を追求し、90年の歴史をもつ建造物の魅力を後世に引き継ぐ。
例えば、2階応接室の創建時後に施した塗装を剥がしたところ、正倉院宝物殿にある銀壺と類似した模様の推測されるクロスが発見されたため、計画を変更し、応接室内のクロスとして復原した。
また、施設内様々な箇所で、「刀剣」や「陸軍勲章」など、軍人會館としての歴史が感じられるデザインの金属製装飾が残されており、可能な限り修復の上、活用する計画とした。
階段室においては、歴史的価値の高い霞という大理石が活用されていたことがわかっており、工事の過程で復原することに決定。一部劣化により復原不可な箇所も見受けられたため、他の階段から同素材を集めるなどして、可能な限り保存・復原した。
そのほか、戦前の職人による創建当時の工法・技法を研究し、専用の工具を特注したり、特殊な工法を採用するなど、現代技術も活用して当時の技をなるべく高度に再現している。こういった工法は、ムラのある緑色が特徴の屋根瓦、宴会場「鳳凰」内の漆喰デザイン、外壁に利用されているスクラッチタイルなどのアンカーピン、玄関ホールにあるブロンズ製の扉などに適用している。
安全性については、保存部分の免震化を図り、免震レトロフィット工法を採用することで、安全と保存の両立を実現。基礎に設置された免震装置により建物と地盤が分離されているため、地震が発生しても建物の揺れや被害を最小限に食い止めるという。地下1階に免震装置を設置することで保存部分への影響を最小化しつつ、耐震性能を向上させている。
保存棟は、宴会場、貸し会議室、シェアオフィスおよび小規模オフィスとして活用するとともに、オフィスワーカー専用の屋上庭園とラウンジを設置。
宴会場については2階と3階に、創建時の姿を再現した宴会場「鳳凰」と「真珠」を保存・復原する。両室とも創建時の照明や装飾品を可能な限り創建時と同様のデザインで復原。登録有形文化財としての歴史的価値を残すと同時に、昭和初期のモダニズムを感じさせる空間づくりを図っている。
貸し会議室は、2階の応接室・役員室として使われていた部屋を活用。90年前の雰囲気をそのままに、寄木張りの床や絹織物の天井が醸し出す歴史を感じられる空間としている。また4階には、旧九段会館の歴史がわかるギャラリーを設置する。
シェアオフィスは1階、小規模オフィスは2階から4階に設置。シェアオフィスは会員制で運用する。また、新築棟地下1階に計画している食堂やシェアオフィスと連携したサービスの提供を予定している。
屋上庭園と専用ラウンジは、5階屋上に設置。屋上庭園には植栽を配置するとともに、仕事の合間のリフレッシュに活用できる健康家具を設置する。
所在地は東京都千代田区九段南一丁目5番1外。プロジェクトの敷地面積は約8,765m2、延床面積は約67,738m2。