ニュース
富士五湖周辺エリアで顔パス観光型MaaS「手ぶら観光サービス」開始
2021年10月29日 09:10
パナソニック、富士急行、ナビタイムジャパンは10月27日、「富士山エリア観光 DX 革新コンソーシアム」を立ち上げるとともに、富士五湖周辺エリア全体の回遊性を向上する観光型MaaS「手ぶら観光サービス」の実証実験を行なうと発表した。
本実証実験では、パナソニックの顔認証技術を利用したデジタルチケットを利用し、エリア内に点在する複数の観光施設と、鉄道や周遊バスなど公共交通機関における入場および決済を、顔認証を利用してシームレスに利用できる。このような、複数の観光施設、公共交通機関、決済の全てを顔認証を活用してシームレスに利用できる観光型Maasは、今回が国内初となる。
また、本実証実験には富士五湖エリアの自治体である富士吉田市、富士河口湖町、鳴沢村、忍野村、山中湖村に加え、富士五湖観光連盟も後援に加わっており、官民一体となった取り組みとなっている。
富士五湖周辺エリアは、首都圏などからの日帰り観光客が多く、平均訪問観光地点数が1人あたり1.3カ所と少ないことが長年課題となっている。また、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響で観光客数が減少しており、感染対策を徹底しながらの観光需要回復も急務となっている。
そこで、顔認証で利用できるデジタルパスを発行し、その有効性を確認するとともに、富士五湖エリアに点在する観光施設の回遊性向上を通じた地域観光収益の最大化を目的として、今回の実証実験が行なわれることとなった。
期間中、周遊eチケット「富士五湖 顔認証デジタルパス」(以下、顔認証デジタルパス)を販売。顔認証デジタルパスは、あらかじめ利用者の顔情報を登録することで、対象エリア内の観光施設や公共交通機関を顔認証のみで利用可能となる。合わせて、パナソニックが提供する顔認証決済システムを利用し、あらかじめクレジットカード情報を登録することで、対応する売店で顔認証決済での購買も可能となる。
顔認証デジタルパスの有効期間は2日間で、期間中、富士急ハイランド(アトラクション乗り放題のフリーパス1日券が付属)をはじめとする全9カ所の観光施設や、公共交通機関の富士急行線 河口湖駅から下吉田駅間、4路線の周遊バスを顔認証のみで使い放題となる。
顔認証決済での購買が可能な店舗は、富士急ハイランド内の売店など4カ所。また、ハイランドリゾートホテル&スパなど3カ所のホテルでの顔認証チェックイン支援も実施される。
顔認証デジタルパスは、富士急ハイランドのスマートフォンアプリ「富士急ハイランド公式アプリ」内から購入。購入後に利用者の顔写真をアプリ上で登録することで、紙のチケットを持ち歩いたり、スマートフォンに顔認証デジタルパスを表示して示す必要なく、対応施設や交通機関を顔認証のみで利用可能となる。
利用者がスマートフォンを持っていない場合でも、家族や友人のスマートフォンから顔認証デジタルパスの購入と顔写真の登録を行なえば利用可能。
顔認証デジタルパスの価格は、混雑緩和による回遊性向上や感染症対策を目的とし、過去の入場者数や天気予報などに基づいてAIが算出した日別の来場予測数に応じた変動制価格を採用。価格は、大人(中学生以上)が6,300円~10,000円、小人(小学生)が4,600円~6,300円となる。
また、顔認証デジタルパスの販売に合わせ、富士急ハイランド公式アプリを拡張。周遊エリア内の施設や周遊バスの混雑状況を表示したり、各種クーポンの配布、予定プランの作成機能や観光施設情報の閲覧といった機能が用意される。
顔認証でスムーズにエリア周遊
顔認証デジタルパスで利用される顔認証技術は、パナソニックの顔認証技術を採用。そして、2018年に富士急ハイランドに導入され、これまでにのべ約3,200万回利用されている顔認証システムを拡張することで実現している。
顔認証デジタルパスの発売に合わせ、富士急ハイランド以外の観光施設、富士急行線の駅や周遊バス、顔認証決済で購買が可能な売店には、パナソニックのAndroid頑丈タブレット「タフブック FZ-S1」を顔認証端末として設置。タブレットの画面に従って顔認証を行なうだけで入場・乗車できる。売店での購買時には、顔認証とともに、あらかじめ設定した暗証番号を入力することで自動的に決済が行なわれる。
また、富士急ハイランドでは、既存の顔認証システムを利用し、園内への入場やアトラクションの利用が顔認証で行なえる(顔認証デジタルパスに含まれるフリーパス1日券の利用を設定した日であれば、アトラクションの利用は無料)。
顔認証の精度は、システムによって少々異なっている。富士急ハイランドでの顔認証ではマスクを外す必要があるのに対し、その他の観光施設や富士急行線、周遊バス、売店での購買時は、マスクを付けたままでも顔認証が行なえる。
富士急行線の対応5駅のうち、河口湖駅と富士急ハイランド駅には、パナソニックのウォークスルー型顔認証改札を設置。このウォークスルー型顔認証改札は、フリッパーレスでポール型の独特な形状をしており、上部のカメラで人の動きを捉えつつ、ポール中央のカメラで顔認証を行なう仕組みとなっている。これにより、ポールの横を止まらず通過する間に顔認証が行なえるようになっている。
実際の、富士急ハイランド、富士急行線、周遊バス、売店での顔認証の様子は、掲載した動画を見てもらうとよく分かると思うが、富士急ハイランドではマスクを外す必要があるものの、いずれも顔認証にかかる時間は非常に短く、スムーズに認証できている。売店では、まだ店員が慣れていない場面もあったが、施設への入場や公共交通機関の利用、商品の購買を非接触かつ短時間で行なえるようになることで、感染症対策はもちろん、利用者にとっても利便性が大きく高まると感じた。
今回の実証実験は、11月1日から12月31日までの2カ月間のみの実施となる。現時点では、その後の展開について具体的なことは決まっていないものの、今回の実証実験の結果を踏まえ、感染症対策を実施しつつ回遊性を高めた、観光客により楽しく富士五湖エリアを周遊してもらえるサービス構築に取り組むとともに、富士五湖地域の観光収益を高めていきたいと説明した。