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後払いとは競合しない。すぐに返せる個人向けローンを狙う「LINE ポケットマネー」
2021年9月7日 09:10
LINEの個人向けローンサービス「LINE ポケットマネー」は6日、サービス開始2年で累計申込件数70万件を突破し、累計貸付実行額は300億円以上になったと発表した。
LINEポケットマネーは、LINE上の行動データを使った柔軟な貸付利率の決定や、LINEだけで貸出・返済を完結できる使いやすさを特徴とした個人向けローンサービス。2020年度は個人向けローン市場の苦戦が続くなか、残高を堅調に増え、ユーザー数も拡大。「多様な働き方をする個人」の利用が増えているという。
いま、LINEポケットマネーが目指すものを、LINE Creditサービス企画チーム マネージャーの川崎 龍吾氏に聞いた。
LINEの友だちが急減するとリスク大。LINEのCredit Tech
「LINE ポケットマネーは、LINE上の行動データから算出される「LINEスコア」と従来の信用情報を加味した独自の与信モデルを使い、一人ひとりに応じた貸付利率(年率)と利用可能額を決定するローンサービス。クレジットカードなどの与信は、勤め先や年収などの「属性情報」を元に与信を行なうが、それらに加えてLINE上の行動やLINE Payの決済データの「行動データ」を使うため、「属性」に頼りすぎない信用評価が行なえることを特徴とする。
近年、副業やフリーランスが増えており、またコロナ禍では一時的に職を失う人なども増えたことから、「伝統的な与信モデル」だけでは、信用評価が難しくなっている。そこで行動データの活用が必要とする。なお、LINEポケットマネーの貸付利率(実質年率)は3.0%~18.0%、契約極度額は5万円~300万円。遅延損害金(実質年率)は20.0%。
行動データを使った後払いのサービスなども増えているが、LINEの特徴は「コミュニケーション」で信用を評価できること。「NP後払い」や「Paidy」などの後払いサービスは、「決済」情報で与信を判断しており、メルペイの後払い「スマート払い」や融資サービス「メルペイスマートマネー」は、決済情報に加え、取引(メルカリ上でのやり取り)などを与信に活用している。
これらに対し、LINEポケットマネーは、決済情報に加え、「人とのつながり」も信用評価に活用する点が特徴となる。
例えば、LINEで直近1カ月前と比較して友だちフォロー数が大きく減少している場合、短期間で友だちが減る(ブロックしている)ユーザーは「リスクが高い」と判断。また、40代のユーザーが10代のユーザーから活発にメッセージ受信している場合は、家族でのやり取りであり「リスクが低い」と判断される。こうしたLINE利用におけるコミュニケーション傾向が、延滞や貸倒の結果と「明確な相関性がある」という。
「LINEスコア」も、常にモデルを改善しており、デフォルト率は抑制傾向で、延滞率も業界他社と相応の水準になっているとする。
後払いとLINEポケットマネーは何が違うのか?
ユーザーの利用動向では、1回あたりの借入金は3万円未満で、小額・高頻度での利用が7割。また食費・日用品など「生活費」での利用が多くなっている。
LINEポケットマネーの特徴といえるのが、随時返済率の高さ。約定返済日を待たずに前倒しで返済する「随時返済」が取引金額の84%となっている。一般的な個人向けローンの場合、期日までの貸付に応じて収益が生まれるため、返済は約定返済日当日もしくは数日前から受け付けるケースが多いが、LINEポケットマネーはいつでも100円から返済できるため、「返したいときにこまめに返す」というユーザーに支持されているという。
また、返済アラートもメッセージで3日前に通知するなどで、返済の遅延を抑制。返済手段もLINE上で完結でき、ATMに行かなくて良いという点も特徴としている。
個人向けローンの外に目を向けると、2021年に入ってからは後払い決済サービス(BNPL/Buy Now Pay Later)も拡大し、参入企業やサービスも増えている。商品などを購入後、翌月などに返済するという使い方で、PaidyやNP後払いや、メルペイスマート払いなどのサービスがユーザーを増やしている。利用シーンは個人向けローンにもよく似ており、LINEポケットマネーと競合しているようにも見える。
川崎氏によれば、もちろん一部では競合するが、後払いサービスとLINEポケットマネーの使われ方の違いは「生活資金」であることという。後払いサービスでは「商品」の支払いが多いが、LINEポケットマネーは、食品や日用品、あるいは「家賃」などで利用されるケースが多く、また、一定の金額がATMから現金から引き出されている。
「現金に近く、それでいて、アプリ(LINE)からいつでも返済できるという気軽さ」で支持されており、「短期的に必要なお金を、必要なときに借りてすぐに返す」というサービス利用が中心となっているという。
ECでもLINE ポケットマネー?
行動データにより、“スコア化“し新しい信用を作り出すというLINEポケットマネー。この“スコア”利用については、昨年よりややトーンダウンしたように見える部分もある。
2020年時点では、信用スコアを広く横展開していくという構想を示していたが、この1年でプライバシーに関する世間の考え方も厳格化した。スコアについては、しっかりとしたニーズがあるものに限定して使っていく考えで、LINEポケットマネー以外に大きく広げていく状況にはないとする。
今後強化していく点としては、EC展開などZホールディングス(ZHD)のサービスとの連携があげられる。ZHDでは、ユーザーがアクションを起こす際のニーズに沿った金融商品を提案する、「シナリオ金融」の構想を進めており、この一貫としてEC連携を強化していくという。詳細については明かしていないが、ヤフーのECの商品購入とLINEポケットマネーを連携させるといった展開はありそうだ。