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国交省、3D都市モデルで安価な自動運転技術など開発「Project PLATEAU」

国土交通省は、現実の都市を3Dモデル化して活用するプロジェクト「Project PLATEAU」において、自動運転やカーボンニュートラルをテーマとした実証実験を開始した。

スマホで自己位置を測定する自動運転

自動運転では、自己位置を推定する「VPS(Visual Positioning System)」を静岡県と連携して開発。スマートフォンのカメラ画像から取得した情報と3D都市モデルの特徴を照らし合わせることで車両の自己位置を推定する。これにより安価で効率的な自動運転システムへの活用可能性を検証する。実験は沼津市で行なわれる。

一般的な自動運転システムでの車両自己位置推定はGNSS、LiDAR、速度計、ジャイロスコープ等の各種センサーや、3Dベクトルデータ、3D点群データ等の様々なデータが活用されているが、コストが高く、走行環境の状況によっては精度も下がる。

VPSは、カメラ画像から取得した三次元情報とバックデータとして用意した三次元マップを照合することで自己位置を推定する新技術。実証実験では、スマートフォンで撮影したカメラ画像から取得した情報と、LOD3の3D都市モデル(建物の詳細な形状のほか、外構、道路、都市設備等も整備)の特徴点とを照らし合わせることで、車両の自己位置を推定。その有効性を探る。

効率の良い太陽光発電をシミュレート

カーボンニュートラルの観点では、太陽光発電のポテンシャル推計及び反射シミュレーションを実施。3D都市モデルにより、太陽光パネルの効率的なパネル設置方法や、周辺建物への光害発生の確認などを行なう。

都市で屋上に太陽光発電パネルを設置する場合、周辺の建物による入射光の阻害など、周囲の環境に発電量が左右される。そのため、日射量が十分に得られる屋根を選定し、効率よく太陽光パネルを設置する必要がある。また、太陽光パネルの設置により、周辺の建物に反射光が及び、トラブルになる可能性もある。

実証実験では石川県加賀市と連携。3D都市モデルで建物の屋根面積、傾き、隣接建物による日陰影響や日射量等のデータを使い、発電量をシミュレーションする他、周辺の建物への反射シミュレーションを都市スケールで行なう。これにより太陽光発電パネル普及のための施策検討や、特定エリアでのRE100化推進、都市部での面的なエネルギー計画策定等につなげる。

工事車両を効率良く安全に運用するプラットフォーム

都市開発における大規模な建設工事を支援する工事車両の搬入経路シミュレータ「工事車両の交通シミュレーションVer2」は、大阪府大阪市で実証実験を行なう。大規模な建設工事では、様々な地域から工事現場に向かって多数の工事車両や工事関係者の通勤車両が押し寄せる。そのため、工事現場付近の交通渋滞の発生や、地域住民が抱く安全や騒音に対する不安とそれらに起因するトラブルが課題となる。一方で、建設工事のスケジュール遅延防止のため、人員や資材を工事現場へ計画通りに搬入することも重要になる。

2020年度には2025年大阪・関西万博の開催に伴い、再開発が活発化している大阪市で実証実験を実施しており、道路幅員や騒音影響、スクールゾーン等を考慮した工事車両が通行ルートをシミュレートするプロトタイプを開発した。今回は、対象エリアを拡大し、UIの改善や道路幅・電線・信号機・標識・樹木等の道路空間における詳細なオブジェクトを3D都市モデルに取り込んだ緻密な干渉チェック機能の実装等を目指す。これにより最適な工事車両ルートの計画策定ソリューションを提供する「建設物流プラットフォーム」の実装を推進する。

地域の取組みを可視化して参加促進

大丸有(大手町・丸の内・有楽町)エリアでは、大丸有まちづくり協議会と連携し、エリアマネジメント活動のプラットフォーム「Area Management City Index(AMCI)」を開発。まちづくり活動の可視化による企業や個人の参加促進を検証する。

エリアマネジメントによるまちづくりでは、活動の状況や成果を俯瞰的・継続的に伝えるツールがなく、企業や個人に対しエリア活動への参加を促進できない課題がある。実証実験では、3D都市モデルの持つ「一目瞭然」に「エリア」を可視化する特徴を活かしてエリアマネジメント活動を可視化。AMCIにより、大丸有エリアで開催中の「大丸有SDGsACT5」期間中に、ユーザーに付与されるポイントアプリデータ等を可視化、発信することで、参加促進効果を検証する。