ニュース

「リモートワークタウン ムスブ宮若」が福岡県で始動。トライアルや九大ら連携

福岡県宮若市で7月29日より本格稼働が始まったリテールDXを軸としたまちづくり「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクト

トライアルホールディングスと福岡県宮若市、九州大学は、産官学協働で推進するリテールDX(小売りのIT/AT化)を軸としたまちづくり「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトを、7月29日より本格稼働を開始した。

ムスブ宮若プロジェクトでは、宮若市内の廃校跡地などを活用して、トライアルホールディングスのデバイス開発拠点「トライアル IoT ラボ」やリテールAI開発拠点「ムスブAI」を開設するとともに、九州大学、宮若市、トライアルの産官学連携による地域創生・事業活性化スタートアップイベント「第1回宮若国際芸術トリエンナーレ」を7月30日より開催する。

ムスブ宮若は、トライアル、福岡県宮若市、九州大学が産官学協働で推進
ムスブ宮若プロジェクトは、宮若市内の廃校跡地などを活用して展開される
地域創生・事業活性化スタートアップイベント「第1回宮若国際芸術トリエンナーレ」も7月30日より開催

29日に記念式典が開催されたトライアル IoT ラボは、旧宮田西中学校跡地を、校舎や体育館などの建物をほぼそのまま活用して開設。トライアルの店舗などで利用されているスマートショッピングカートやAIカメラ、デジタルサイネージなど、様々なIoTデバイスを開発する拠点として活用される。

トライアルグループだけでなく、トライアルグループと取引のある企業のエンジニアも招聘してリテール技術革新を進め、流通革命を起こす拠点にしたいという。

旧宮田西中学校跡地を利用して開設された「トライアル IoT ラボ」
旧宮田西中学校の校舎をほぼそのまま活用している
体育館もそのまま活用。今回開催された記念式典は、こちらの体育館で行なわれた
敷地内には従業員用の住宅も建設中
建物内は改装され、ネットワーク環境なども整えられているが、大規模な改修は行なわず、もとの校舎の姿がほぼそのままとどめられている
旧宮田西中学校もともとモダンな作りの校舎で、吹き抜けスペースには大きなアート作品を展示している
ラウンジスペースも学校の雰囲気が残されている
教室がワークスペースとなっており、プロジェクトごとに異なる教室で作業が行なわれている
トライアル IoT ラボでは、トライアルの店舗などで使われるスマートショッピングカートやAIカメラ、デジタルサイネージなど、様々なIoTデバイスを開発

またムスブAIは、旧吉川小学校跡地を利用。こちらも旧校舎をほぼそのまま活用しており、AI研究開発の拠点となる。リモートワーク環境を整えたサテライトオフィスやプロジェクトルームを備えることで、日本はもちろん海外とも繋いで距離の障壁をなくした研究開発が行なえるとしている。

旧吉川小学校跡地を利用した、AI研究開発の拠点となる「ムスブAI」
こちらもトライアル IoT ラボ同様にもともとの校舎をほぼそのまま活用
旧吉川小学校のプレートもそのまま残されている
こちらも校舎をほぼそのまま活用しているが、機密情報も多く扱うため、セキュリティドアの設置などセキュリティも高められている
ラウンジスペースは、小学校の備品をうまく活用したモダンな作りとなっている
セキュリティゾーン内も学校の雰囲気がほぼそのまま残されている
快適なリモートワークが行なえる環境も整えられている
プロジェクトごとに異なる教室を利用する
すでに本格稼働となっており、複数企業の開発者によるプロジェクトも動き始めている

この他、アパレル・ホームファッションにおけるモノづくり・販売・接客を、最新テクノロジーを活用し新しいカタチのビジネスモデルとして構築するためのアートラボ「MEDIA BASE」、宮若市の農産物直売所「ドリームホープ宮若」で扱われている市内で栽培された農林畜産物、農産加工品を使用した農家レストラン「グロッサリア」、温泉旅館などを備えた複合施設「宮若虎の湯、古民家煉り、颯香亭」なども順次開設を予定している。

旧笠松小学校を利用したアートラボ「MEDIA BASE」
温泉旅館「宮若虎の湯」
宮若の自然や文化をいかした体験が行なえる「古民家煉り」
オーベルジュ「颯香亭」もオープン予定
旧吉川小学校の体育館を利用した農家レストラン「グロッサリア」

宮若市を巨大なテストベッドに

トライアル IoT ラボ内の体育館で開催された記念式典では、トライアルホールディングス 代表取締役社長の亀田晃一氏が「今、第4次産業革命と言われている。データ、情報をベースとして社会課題を解決していこうという変化が起きており、それを実現するために宮若を拠点としてやっていきたい」と挨拶した。

トライアルは今後、宮若市を拠点として、データを活用するIT技術やデバイスの開発などを様々な企業と協力して取り組むとともに、実証実験の場として宮若市に新たに開設するトライアル店舗を活用しつつ変化を推進していく計画。また、「宮若市は日本の多くの地方都市同様に過疎化、高齢化が進んだことによる多くの課題を抱えている」と指摘し、そういった課題を解決するべく宮若市と連携し規制緩和も含め許される範囲内で様々な実験を行ないたいという。

そして「生産、物流、決済など小売りに関わる企業をまたいでリアルタイムでデータ連係し、サプライチェーン全体の最適化を進めるとともに、企業だけでできることは限られているため、行政や九州大学などとも連携し、既成概念にとらわれない発想で新しいことにチャレンジしていきたい」と述べた。

トライアルホールディングス 代表取締役社長の亀田晃一氏
ムスブ宮若を拠点として関連企業とも協力しながらIT技術やデバイス開発を行ない、サプライチェーン全体の最適化を進める
宮若市を実証実験の場として様々な取り組みを行なう計画
行政や九州大学などとも連携し、既成概念にとらわれない発想で新しいことにチャレンジしたいと意気込みを語る亀田氏

宮若市長の有吉哲信氏も登壇。宮若市は、平成18年に合併し、九州を中心としたものづくりの町として発展してきたそうだが、少子化、人口減少の影響で学校再編を余儀なくされたという。それにより学校跡地の利活用が大きな課題として残ったが、トライアルグループと2020年9月にムスブ宮若連携協定を締結し、国の地方創生事業の支援も受けつつ、学校跡地を活用したムスブ宮若プロジェクトを推進するに至ったと経緯を説明。そして「トライアルグループとの出会いによって、ムスブ宮若プロジェクトでの活用という解決策へと結びついた。思いもよらなかったことで、驚きと喜びを禁じ得ない」と感想を述べつつ、「各施設がスポットとして国内外から注目され、関係人口、定住人口の増加に繋がり、地域活性化への波及効果を大いに期待するとともに、まちづくりの新たな可能性にチャレンジしたい」と挨拶した。

記念式典で挨拶する、宮若市長の有吉哲信氏

最後に登壇した、九州大学総長の石橋達朗氏は、「九州大学は、これまでも宮若市と包括連携協定を結び、様々な実践研究を行なってきたが、第1回宮若国際芸術トリエンナーレや様々な形での教育研究のプラットフォームとして、新しい形での産官学連携実装として注目している」と挨拶。また、「トライアルグループとはAI技術開発や人材育成も視野に入れ、未来を見据えた地域デザインの研究、共創していく予定。宮若市とは未来社会デザインの先駆者として地域とビジネスとアートを融合した永続的なイノベーションモデルとなり、九州のみならず世界に通用する新たなフラッグシップ地域未来社会の構築を期待している」とムスブ宮若プロジェクトへの期待感を述べた。

なお、第1回宮若国際芸術トリエンナーレは2021年7月30日から2024年5月末までの会期で開催される予定で、受賞作品は、トライアル IoT ラボやムスブAIなどに展示される。

記念式典でムスブ宮若プロジェクトへの期待感を述べる、九州大学総長の石橋達朗氏
第1回宮若国際芸術トリエンナーレの受賞作品は、トライアル IoT ラボやムスブAIなどの館内に展示される
作品が設置されている場所はオープンスペースとなっており、開館日であれば誰でも自由に鑑賞できる
ムスブ宮若プロジェクトの始動を記念しテープカット