JAXAとホンダ、月面での長期滞在実現に向け循環型再生エネルギー開発

JAXAとホンダは、宇宙で人が長期間滞在するための「循環型再生エネルギーシステム」の実現性検討を共同で開始した。

宇宙で人が生活するためには、水や食料に加え、呼吸のための酸素、燃料となる水素、諸活動のための電気が必要になる。それらを地球から補給することなく宇宙で入手するためには、太陽エネルギーにより水を電気分解して酸素と水素を製造する高圧水電解システムと、酸素と水素から電気と水を発生させる燃料電池システムを組み合わせた「循環型再生エネルギーシステム」を構築することが解決策の一つという。

循環型再生エネルギーシステムは、高圧水電解システムと燃料電池システムを組み合わせたシステムで、太陽エネルギーと水から継続的に酸素・水素・電気を製造することを想定している。太陽エネルギーを使い、高圧水電解システムで水を電気分解し、酸素と水素を製造。酸素は有人拠点で活動する人の呼吸用として活用、水素は月面を離発着する輸送機の燃料として活用する。また、酸素と水素を使って燃料電池システムで発電し、有人拠点や移動用車両などへ電気供給することも想定している。

ホンダの高圧水電解システムは、水素を圧縮するためのコンプレッサーが不要で、コンパクト・軽量とし、宇宙輸送の大きな課題である積載容量・質量の低減化にも貢献する。

JAXAとホンダは、2020年11月に、3年間(2020年度～2022年度)の共同研究協定を締結し、ホンダが有する高圧水電解技術及び燃料電池技術を活用した、月周回有人拠点(Gateway)及び月面での循環型再生エネルギーシステムに関する研究を推進してきた。

共同研究では、JAXAは、これまでに検討してきたGatewayにおける酸素製造及び月面における移動用車両への電気供給に関するミッションのシナリオや要求に基づき、検討条件の設定を担当。ホンダは、JAXAのミッションやシナリオを実現するための技術検討を担当する。今年度は、循環型再生エネルギーシステムの要素技術に関する課題に対し、試作による評価も行ないながら実現性を検討する。なお、この結果は2022年度に計画しているシステムとしての成立性の検討へつなげていく。

日本は、2019年10月に米国提案による国際宇宙探査プロジェクト「アルテミス計画」に参画することを決定。これにともないJAXAでは、火星なども視野に入れた月周回有人拠点(Gateway)への日本が得意とする技術・機器の提供、Gatewayへの新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)での物資補給を目指し、研究開発を進めている。

月面では、ピンポイント着陸技術の獲得を目指す小型月着陸実証機(SLIM)(2022年度打上げ予定)や、月面での水資源探査を目的とした月極域探査機(2023年度打上げ予定)により持続的な月面探査の基盤整備への貢献を目指し、さらに、2020年代後半以降の月面探査を支える移動手段として、有人与圧ローバの研究等も進めている。