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コロナ禍で拡大するVisaのタッチ決済。駅の改札もクレカで“タッチ”

ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)は30日、「Visaのタッチ決済」の利用状況や公共交通機関での採用などについて説明会を開催した。日本におけるVisaタッチ決済(クレジットカードのNFC非接触決済)の取引件数は前年比約12倍以上となり、ファミレスやドラッグストアなどでの利用が拡大。また、4月3日からは南海電鉄において大規模な実証実験がスタートするなど、公共交通機関での導入も進めている。

非対面・非接触でVisaのタッチ決済が支持。薬局や公共も

Visaのタッチ決済は、対応のクレジットカードやデビットカード、もしくはスマートフォンなどを使って店舗での非接触での支払いが行なえる決済サービス。Visa コンシューマーソリューションズ 寺尾林人部長によれば、「2020年は支払いの変化の年になった」という。その理由は「コロナ禍」だ。

世界規模で現金支払いは約10%減少する一方、eコマース市場は19%拡大。「非対面(オフライン)」が伸び、店舗などの対面取引では「非接触」が消費者の支持を得た。対面決済におけるVisaのタッチ決済の割合は2020年9月時点で43%となり、「今はさらに拡大している」という。

コロナ禍における「新しい生活様式」も、Visaのタッチ決済の普及を後押しした。特に「非接触」への消費者ニーズが高く、約半数の消費者がタッチ決済の利用を希望。消費者の非接触を求める声の高まりが、店舗への導入を後押ししたという。

日本においても、コロナ禍において「現金を避ける」という声が高まり、「現金のみの店舗は行くのをやめる」という意見も増えている。Visaでは、キャッシュレスに期待されていることとして、店員との接触を避ける「安全」、サインや暗証番号入力を避ける「安心」、レジ待ちなどを避ける「スピーディ」の3点を重視。3点を満たすソリューションとして、Visaのタッチ決済を推進していく。

日本におけるVisaのタッチ決済対応カードの発行枚数は、2020年末時点で3,670万枚。1年で約2倍となった。対応端末は、2019~2020年の2年間で約11倍に増え、2020年の決済件数は'19年比で12倍以上になった。

2020年前半は、コンビニやスーパーなどでの導入が進み「日常利用」が拡大。さらに'20年後半は加盟店が増えたことで、利用シーンが拡大、2020年1-6月と7月-12月の比較では、ファミレスやファストフードのタッチ決済件数が3倍、ドラッグストアが8倍、郵便局を含む公共/政府で21倍となったという。

また、リクルートの「Airペイ」などのモバイルPOSでもタッチ決済対応が進められたこともあり、中小加盟店が増加。Airペイも9月のVisaのタッチ決済対応以降、毎月1.2倍のペースでタッチ決済が増えているという。

バスなどの交通機関でのVisaのタッチ決済採用が進んでおり、4月3日からは大都市圏の南海電鉄でもVisaのタッチ決済を使った実証実験を開始。タッチ決済の利用シーンを拡大していく。

公共交通機関でVisaのタッチ決済。南海電鉄で実証実験

4月3日からスタートするのが南海電鉄の改札におけるVisaのタッチ決済の実証実験だ。公共交通機関でのVisaのタッチ決済導入は、高速バスや路線バスなどが徐々にスタートしているが、今回の実証実験は大都市圏で多くの利用客が日々通過する南海電鉄16駅の改札機で行なわれる。駅の改札でVisaのタッチ決済による利用区間の運賃支払いは国内初となる。

実施駅は、難波(2F中央改札口、3F北改札口)・新今宮(4F)など、南海電鉄16駅・32改札。タッチ決済機能のあるカード(クレジット、デビット、プリペイド)やスマートフォン、ウェアラブルを入場時と出場時に専用改札機へかざし、改札通過と運賃精算ができる。

説明会で示された動画では、Suicaなど交通系ICカードより若干反応速度は遅かったものの、多くの人が連続して改札通過することが確認できた。

改札機(電動ゲート)は高見沢サイバネティックス製。既存の改札機に日本信号製のポール型の読取機を設置するケースも有る。

電動ゲート
ポール型の読取機

南海電鉄 鉄道営業本部の桑菜良幸統括部長は、実証実験の目的として、訪日客などインバウンド対応強化のほか、窓口混雑緩和や利便性の向上を挙げる。また、キャッシュレス、コンタクトレスの対応拡大という点においても期待しているとする。

コロナ禍前の2019年まで関西空港駅などの利用が急増。特に逼迫したのが、窓口での案内や乗車券の購入引き換えなどで、多くの人員が必要になったほか、現金の用意など多くの手間が発生。また、商習慣の違いから説明にも時間を要したという。

Visaのタッチ決済対応により、訪日客が普段使っているクレジットカードで直接乗車できるようにすることで、窓口混雑の解消と、利用者の利便性向上の実現を目指す。また、窓口や券売機への投資コストの削減なども期待しているという。

ICOCAとの比較では、訪日客にとっては、「クレジットカードがそのまますぐに使える」「チャージが不要」「帰国時の未使用バリューの精算の必要がない」といったメリットを挙げる。改札の通過スピードについては「海外でも実用化されており、問題ないと考えている。さらなる対応が必要かどうかは、まさに実証実験で確認していくこと」とした。

南海電鉄のVisaのタッチ決済による自動改札実験

Visaでは、今後も公共交通機関での採用を拡大する方針。「南海電鉄の発表以降、反響が特に大きい。パートナーと相談しながら増やしていく方向」(Visa デジタル・ソリューション ディレクター 今田 和成氏)。

なお、Visaのタッチ決済は現時点では国内のApple Payに対応していない。今後の対応については、「現時点でお話できることはないが。より消費者の皆様に求められている手段を提供できるよう、様々な検討を進めていく」(Visa 寺尾氏)とした。