ニュース
“断熱”で電気代が安くなる積水ハウスの「賃貸ZEH」
2021年2月26日 13:16
積水ハウスは、太陽光発電や断熱性能の向上などによりエネルギー消費収支をゼロにすることを目指す「賃貸 ZEH(ゼッチ)」を、シャーメゾンブランドで本格展開を開始。1月時点で累計受注戸数3,806戸を達成した。
戸建向けに展開していたZEH(Net Zero Energy House)仕様の住宅を、賃貸ブランド「シャーメゾン」として展開したもの。2018年1月に、石川県金沢市で日本初の全住戸ZEH賃貸住宅が建築された。
ZEHは、高い断熱性能と、高効率エアコン、LEDなどの採用により、消費エネルギーを低減。住宅自体の保温性を挙げることで、夏も冬も快適な温度を保ちやすくし、光熱費を抑える。また、屋上に設置する太陽光発電機を各部屋ごとに割り当て、昼間電力を売電することで月間約6,000円の光熱費削減も可能という。
断熱のためには、壁は勿論、窓の構造も重要。壁を断熱構造としても、通常の窓では、そこから熱が逃げていってしまう。また、断熱だけを優先するなら窓は小さい方が効率がいい。しかし、窓が小さいと開放感が損なわれ、住み心地が悪くなる。ZEHでは、窓を高断熱複層ガラス+高断熱サッシ構造とし、熱を逃がさない工夫をすることで、大きな窓を備えながら、十分な断熱構造を実現している。
同社の測定では、昼間に暖房を使用して22時に暖房を切った後、外気温が0℃近くの深夜に暖房を使用せずとも16.4℃以上の室温を維持。一般的な住宅では同条件だと10℃を下回ることが多いという。
電力を補うため、太陽光発電設備も備え、災害時などは晴天時の昼間なら電力を使用できる。また、建築時にオプションとしてバッテリも備えることが可能。バッテリはパナソニックの太陽光発電・蓄電システム「創蓄連携システムS+」により、電力会社からの電気と、太陽電池や蓄電池の電気を制御して活用する。
パナソニックのHEMS「AiSEG2」と連携し、家電製品などの制御が可能なほか、太陽光発電の自給率や、自家消費率など電力状況を「見える化」できる。キッチンや浴槽など、どこで電気を多く使っているかなども確認でき、節電をサポートする。
また、大雨や暴風などの気象警報が発せられると、警報と連動して自動で蓄電池に充電し、万一に備える機能も搭載する。停電時には、冷蔵庫やガス給湯、テレビやインターネット利用のための最低限の電力を確保。日常生活に支障をきたさず、情報収集も行なえるようにする。
賃貸住宅の太陽光発電契約は、通常、太陽光で発電した電力をオーナーがまとめて入居者に売電する「オーナー一括売電タイプ」と、太陽光パネルを入居者の各部屋ごとに割り当てる「入居者売電タイプ」の2つがある。
オーナー一括売電タイプはオーナー側は売電による収入が発生するが、入居者は電力を購入するだけなのでそれほど大きなメリットにはならない。入居者売電タイプは、入居者の各部屋に太陽光発電パネルが割り当てられ、入居者自身が売ることも利用することも自由で、入居者にメリットが大きい。
同社が行なった試算では、一般的な賃貸住宅と比べ、電気・ガスの光熱費は年間18.5万円から39%削減され、年間11.3万円となり、月平均で6,000円の削減となるという。実際に、4月~9月の6カ月間の電気・ガス代について、オーナー一括売電では、入居者の光熱費は8,564円/月だったが、入居者売電にすることで、光熱費が6,516円/月削減(76%)となる2,047円/月に抑えたケースもあったとする。
また、オーナー側のメリットとしては、入居者売電を付加価値として家賃を5,000円前後上乗せできるなど、入居者、オーナー双方にメリットがあるとし、積水ハウスでは入居者売電タイプの導入を推奨している。
賃貸 ZEHは、将来国がZEHを標準仕様と定めた場合、通常物件に比べ高付加価値賃貸住宅として家賃を維持しやすく、オーナーの資産価値を守ることにも繋がるという。また、CO2排出削減効果についても一般賃貸にくらべ93%削減されるなど、環境負荷を低く抑えられる。
これまで、実際にZEHの住宅に住んでいる人を対象としたアンケートでは、入居前には光熱費の安さや、太陽光発電、断熱性の高さなどについて、期待値は低かったが、実際に住んでみるとその良さが理解でき、満足理由の上位になる傾向があるという。
同社では、戸建てのZEHを若い人が建てるのはハードルが高いが、賃貸 ZEHによってハードルをさげ、環境負荷の低い、エシカルな住環境のメリットを体験してもらう狙いがあるとしている。