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世界初の“スペースデブリ”除去実証衛星「ELSA-d」打ち上げへ
2021年2月18日 16:46
アストロスケールは、世界初のスペースデブリ除去実証衛星「ELSA-d」の打ち上げを3月20日に実施する。打ち上げはカザフスタンのバイコヌール基地からGK Launch Serviceのソユーズロケットで行なう。
宇宙には大小様々な「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」が存在し、その処理が課題となっている。宇宙ゴミは主に運用が終わった人工衛星や、ロケットの上段(打ち上げ後に軌道に放置される)、そしてこれらが衝突して発生する破片などで構成され、地球の軌道上を高速で移動している。それらが運用中の人工衛星などに衝突することで、衛星にトラブルが発生すれば、地上の生活に影響が出ることも考えられる。
また、現在、運用されている人工衛星は約3,000基だが、2030年までには46,000基の衛星が打ち上げられる予定で、今後はさらに軌道上の密度が上がり、宇宙ゴミのリスクが高まることが予想される。
同社が打ち上げる実証衛星「ELSA-d(End-of-Life Services by Astroscale - Demonstration:エルサディー)」は、宇宙ゴミを回収し、大気圏に突入するまでの動作を実際に宇宙で行なおうというもの。ELSA-dは「捕獲機」と「模擬デブリ」で構成。模擬デブリをセットで打ち上げて軌道上で分離し、実験を行なう。
模擬デブリにはあらかじめ「ドッキングプレート」が装着され、磁石によって捕獲機とドッキングして回収される。一般的な衛星は磁石で付かないものが多いため、捕獲機側にだけ磁石があっても回収はできない。そのため、将来的には、打ち上げられる衛星にあらかじめドッキングプレートを装着することで、スムーズにサービスを提供できるようにしていく。
宇宙ゴミは「非協力物体」とされ、既存の衛星や宇宙ステーションなどとは異なり、場所も分からず、宇宙ゴミ自体が回転している場合などには、近づくことも難しい。実験ではこれらへの対応能力を検証する。
第一段階としては、模擬デブリを切り離し、回転させることなくそのまま回収するという難易度の低いテストを行なう。第二段階では模擬デブリを回転させる。回転する目標に対して捕獲機が模擬デブリの回転を診断し、自動で動きを合わせ、アプローチしてドッキングする。第三段階は最も現実に近い実験で、一旦デブリから大きく距離を取り、それを捜索してドッキング。その後、捕獲機と模擬デブリはドッキングしたまま軌道を離脱して大気圏で燃え尽きる。
捕獲機の本体サイズは約660×640×1,100mm(太陽光パネル解放時)、重量175kg。模擬デブリの本体サイズは約480×500×225mm。現在は、1機で3個の宇宙ゴミを同時処理できる次世代機も開発中という。
同社は、地球の軌道を「高速道路」に見立て、宇宙にロードサービスを作るとし、「軌道上サービス」として、衛星運用終了時に衛星を除去する「EOL(End of Life Service)」、既存大形デブリの除去を行なう「ADR(Active Debris Removal)、衛星等の観測・点検を行なう「ISSA(In Situ SSA)」、衛星などの寿命を延長するLEX(Life Extension Service」などのサービス提供を目指している。
今回の実験の運用や今後の軌道上サービスは、同社主導で設立された、英国のオックスフォードシャー州ハーウェルにある国立軌道上サービス管制センターで行なう。また、東京都の墨田区に衛星工場として「すみだラボ」も建設。衛星の量産体制を整える。
また、世界で初めて「打ち上げ保険」「ミッション保険」「第三者損害賠償保険」なども用意し、ビジネスとしてのリスクを軽減する。
同社では、2030年までに宇宙のロードサービスを当たり前にし、「スペースサスティナビリティ」を実現していくとしている。