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首都直下地震を想定「災害ダッシュボード4.0」。避難者把握・感染対策強化
2021年2月2日 15:52
三菱地所は丸の内エリアにおける防災の取り組みとして「災害ダッシュボード 4.0」の実証実験を、1月下旬から2月上旬にかけて、千代田区、鉄道・バス事業者、ビル事業者等と連携して実施する。
三菱地所は2020年1月に、丸の内エリアにおける防災の取り組みとして、災害対策機関での情報共有や帰宅困難者向けの情報発信を行なうプラットフォーム「災害ダッシュボード3.0」の機能を発表。今回の4.0はこれを強化したもので、災害時に想定される帰宅困難者受入施設等の課題解決を目指す。
対象となるエリアは、大手町、丸の内、有楽町。三菱地所はこのエリアにおいて、丸の内ビルや新丸の内ビルをはじめ17棟の建物で、千代田区と帰宅困難者受入施設の協定を締結している。
実証実験では、これら受入施設における帰宅困難者受入時の受付のデジタル化による、チェックイン・チェックアウト管理や健康状態の管理、各施設の満空情報の発信などの実証を行なう。
首都直下地震で同エリアにて発生する帰宅困難者数は、平日15時頃発災の場合で約4万2千人と推定されるという。千代田区と帰宅困難者等受入協定を締結しているビル事業者は、区の要請に基づき、順次受入施設として開設する。
受け入れに当たり、避難者数の把握、備蓄物資の必要数の把握、安否確認等の観点から、受け入れた帰宅困難者の氏名等を名簿管理する必要があり、チェックイン時の受付業務の効率化が課題だった。加えて、新型コロナウイルス感染症対策上、対面の受付を減らし、感染が疑がわれる場合は出来る限り隔離する必要も生じている。
こういった課題を解決するため、QRコードを活用した非対面でのチェックイン、チェックアウトを実現。帰宅困難者がチェックイン時に、施設に掲示されているQRコードを読み取り、氏名、年齢、メールアドレス、住所、電話番号、および健康状態や持病に関するアンケート等を登録することで、受付が完了する。
あわせて、個人の判断により施設から帰宅する人がいることを想定し、同じくQRコードを読み取りチェックアウトができるようにしている。これにより、人力では限界のあった、施設ごとの人数や避難者に関するより正確な情報管理が可能となる。
またこれまで、特定の人に対する連絡も館内放送を利用していたところ、メールや電話による個別の連絡が取れる点もメリットとしている。
施設で得られたチェックイン情報は、千代田区が一元管理し、安否確認・照会に活用。さらに施設にチェックインしている人数(受入数)の情報を、満空情報発信に利用。また千代田区災害対策本部もこれらの情報を用い、新たな避難所開設等の判断に活かす。
施設ごとの満空情報は、デジタルサイネージやWebにてリアルタイムに表示し、帰宅困難者に向けて情報を発信。デジタルサイネージではそのほか、NHKの緊急放送を流す。
そのほか三菱地所では、人流計測によるデータの災害時の活用に向けた実証実験や、災害ダッシュボードの実装に向けた「ライブ配信ユニット」の試作を進める。
人流データの災害時の活用は、国土交通省との共同実証。国土交通省は屋外空間、屋内空間各1カ所に赤外線センサーによる人流計測ゾーンを設営。三菱地所は、人流データ分析、混雑度やソーシャルディスタンス平均距離の見える化、災害時シミュレーションを行なう。
センサーは、丸の内ビルの仲通り側歩道上、および丸の内ビルの行幸通り側地下通路に設置する。
ライブ配信ユニットは、任意の場所に設置し、各施設のライブ映像をiPhoneから位置情報とともに配信するための機材群。iPhone SE、72時間配信可能なバッテリー、トランク、治具などで構成される。
三菱地所は今後、同エリアにおける次世代防災拠点(災害対策拠点)機能の実現や、首都直下地震等に対して、スマートシティの1機能として、災害ダッシュボードによる官民・民民情報連携、感染症対策を含めた負傷者応急救護などの強化を進める。