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不動産×MaaSで街の魅力を向上。三井不動産が日本橋・豊洲で展開

三井不動産は、日本橋エリアや豊洲エリアで、MaaSの大規模実験を12月15日から順次開始する。マンション住民向けに複数交通機関のサブスクリプションサービスを展開し、不動産×MaaSで、街や住宅の魅力向上を目指す。

不動産×MaaS

不動産×MaaSの実証実験は、都心近郊の柏の葉エリアの「パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト」で実施しているが、準都心の「豊洲」、都心の「日本橋」に拡大し、不動産を起点とした近距離移動によるコミュニティの利便性強化や街の魅力の向上を検証していく。日本橋は12月15日から、豊洲は12月21日から実施する。

MaaS(Mobility as a Service)は、複数の交通サービスを接続・統合し、快適な移動体験を実現するもの。三井不動産のMaaSは、地域や物件などを起点とした「不動産×MaaS」として展開する。

実証実験では、フィンランドMaaS Globalによるアプリ「Whim」を活用。タクシーやバス、カーシェア、シェアサイクルなど4つの交通手段(モビリティ)から好みのものを選択し、目的地の設定から予約・決済・乗車までを1つのアプリでシームレスに行なえる。

提携サービスはカレコ(カーシェア)、ドコモバイクシェア、東武バスなどで、これらのサービスがWhimアプリから呼び出し可能。タクシーは多くの提携事業者に対応する。各物件の敷地内には、Whim会員専用のモビリティとしてカーシェアとシェアサイクルを設置し、“自己保有のモビリティ感覚”で使えるようにしている。

利用料金は月額定額制(サブスクリプション)とし、「Whim 10プラン」では10,000円で12,000円分のクレジットを提供、「Whim 5」は5,000円で6,000円分、「Whim 2」は2,000円で、2,400円分のWhimクレジットを提供し、タクシーやバス、シェアサイクルなどに活用できる。

利用可能なのは、日本橋、豊洲の三井不動産グループのマンションの入居者。日本橋エリアは以下の4拠点が対象。

  • パークアクシス東日本橋ステーションゲート(86戸)
  • パークアクシス日本橋浜町レジデンス(66戸)
  • パークアクシス日本橋茅場町(46戸)
  • パークアクシス日本橋堀留町(15戸)

豊洲エリアは、パークアクシス豊洲キャナル(497戸)。

柏の葉の実験では、タクシーやシェアサイクルなどを回数制としていたが、回数で行動が制限されるとの声もあったため、日本橋と豊洲では、金額分を定額にして展開する。

柏の葉では、利用者の71%が自家用車を持っていないことから、「いままで行ったことがないスポットへ足を運ぶようになった」「習い事の選択肢が広がる」などの意見が多かったという。一方で、シェアサイクルの利用は想定より少なかったという。

都心や準都心では、シェアサイクルの利用は都市郊外(柏の葉)より多いと見込まれるが、こうした地域ごとの利用動向を確認するため、実証実験を行なっていく。

なお、現時点では三井不動産の賃貸物件が対象だが、今後は分譲マンションなどでの対応も検討する。なお、「住居や街の付加価値向上のためのMaaS」という位置づけのため、居住者以外への展開は現時点では未定。

店が近くに来る「移動型店舗」

ユーザーが移動するMaaSだけでなく、“お店が動く”も同社のモビリティ構想の一環に据える。

三井不動産グループのマンションや商業施設に、パン屋やクリーニング、オーダースーツ、生鮮食品、飲食店などの移動型店舗を展開。場所や時間帯により異なる買い物やサービスのニーズに応えられるため、商業施設や住宅(マンションなど)の付加価値向上に繋げられる。

9月から首都圏近郊5カ所(豊洲・晴海・板橋・日本橋エリア、千葉市)で10業種11店舗のトライアルイベントを行なっているが、この取組を強化していく。

曜日や日時ごとに店舗を変えることで消費者のニーズに対応。例えば平日の朝はパン屋、夜は中華料理、休日はクリーングやマッサージなどニーズに合った出店を可能にする。出店事業者にとっては新たにチャネルとして、ユーザーの指向性や購買動向を確認できるほか、プロモーション効果を評価する声もあるとのこと。

三井不動産は、移動店舗とスペースのマッチングプラットフォーム事業として収益化を図る方向。「コンテンツが顧客の近くに来ることで街全体の魅力を底上げする」という。

モビリティが街の魅力を向上

MaaSや移動型店舗は、三井不動産の「モビリティ構想」の一環として強化していく。

動かない「不動産」に対し、人が動く「MaaS」、モノ・サービスが動く「移動商業」の2つの移動を組み合わせることで、不動産そのものの価値を高めていく戦略とし、MaaSでは利便性を居住者に提供、移動商業店舗では仕事と暮らしの“間”、暮らしと買い物の“間”に新しい場所を作り出す。

同社のまちづくりのノウハウに、モビリティやテクノロジーを加えることで街の魅力を向上。Real Estate as a Service(不動産サービス)を強化していく。