ニュース
Niantic、“プラットフォームを選ばない”AR開発者キット。日本先行公開
2020年12月11日 14:09
12月10日、Nianticは、かねてから開発・公開を公言していた「AR開発者向けキット(ARDK)」について、2021年からベータテストを開始すると発表した。日本では海外の他の国に先駆けて、同日より開発者向けの事前登録が開始されている。
・Niantic 開発者キット 事前登録ページ
https://niantic.dev/apply/
「プラットフォームを選ばない」ARアプリ開発環境を実現
ARDKは、Nianticが「ポケモンGO」「ハリー・ポッター 魔法同盟」などで利用しているAR技術を、他のアプリメーカーも使えるように整備したもので、「The Niantic Real World Platform」とも呼ばれる。
ARDKの開発を統括する、Niantic・プロダクトマネジメント担当副社長の河合敬一氏は、「ARのプラットフォーマーとしては、Niantic自身が最初のカスタマーであり、今後他のデベロッパーにも公開していくような形」と説明する。
今回はこの情報の公開と開発者登録が「日本先行」で行なわれることになった。
その理由について、Niantic・アジア担当副社長の川島優志氏は、「日本のデベロッパーが、ARについては非常に熱い。他国と比べても先進的な事例が多いため、海外に先行して日本で、ということになった。日本のデベロッパーがARやVRに熱心な理由は、おそらく、AR的なものを題材にした映像作品などに多く触れてきた事情もあるのでは」と説明している。
「The Niantic Real World Platform」にはいろいろな構想がある。リアルワールドの地形や建物などと紐づいた動きを実現する「ARクラウド」や、その前段階となる、周囲の状況や位置を「どんなものが周囲にあるのか」という情報を使って認識する「Visual Positioning System(VPS)」など、クラウドを活用した非常に高度なARを実現する予定だ。
だが、まず公開されるのはその前段階。端末の中で処理し、「実景を認識してそこにCGの物体を自然に重ねる」ことや、「複数の人がAR上の物体を一緒に見られるようにすること」などとなる。処理は基本的にスマホ内で完結し、クラウド側の活用は今後のバージョンで、ということになる。
開発はゲーム開発エンジンの「Unity」を使って行なわれる。位置認識や物体の前後関係把握といった技術的に難しい部分をNianticのARDK側に任せて、デベロッパーはアプリの中身そのものの開発に集中できる。
こうした機能はアップルの「ARKit」やGoogleの「ARCore」などでも実現されているが、NianticのARDKの強みは「プラットフォームに依存しない」こと。
特別なハードウエアは必要なく、スマホのカメラの「画像データだけ」(Niantic・河合氏)で空間の立体構造を認識する仕組みなので、それなりのカメラとプロセッサーを搭載したスマホならどれでも動作対象になり、「プラットフォームごとにアプリをゼロから開発し直す必要がない」(河合氏)のが特徴。
現在も「ポケモンGO」でARを使ってポケモンとの記念写真を撮影できるようになっているが、同じ感覚で、より多くのスマホを対象としたアプリの開発が可能になる。
今後はスマートフォンだけでなくARグラスも対象となり、その時にも同じアプリをあまり作り替えることなく対応することを目標としている。
なお、開発者に向けてARDKが公開されるものの、現状では「テスト」のフェーズであり、ARDKを使ったアプリの一般公開は想定されていない。一般公開を行ないたい場合にはNianticと個別に相談して行なうことになるという。
パスキュール・ライゾマ開発のアプリも体験
Nianticは公開に先立ち、バスキュール・ライゾマティクス・ソフトバンクの3社を「先行開発パートナー」として選定、アプリの開発に取り組んでいる。今回は一部プレスを集め、バズキュールとライゾマティクスの開発したアプリの体験会も行なわれた。
どちらも、開発期間は「数週間程度」という。現状、一般公開の予定などは決まっていない。
バスキュールの開発したアプリは「Gyorol」。床全てを「池」に見立てて、どこでも釣りができるようにするアプリだ。近くの人とは空間を共有しており、釣っている様子なども見れる。
ライゾマティクスの開発したアプリは「音のAR」に特化したもの。空間内に自分が線を描くと、それがビートやパーカッション・パターンとなって残る。AR空間内に置かれた「音のマーカー」同士の間に立つと、両者の音は距離や方向に応じて混じり合う。言葉ではなかなか説明しづらいが、確かにARでしか実現できないアプリケーションとなっている。