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ライオン、IoTハブラシで子供の歯磨きサポート。LOHACOが交換時期を提案
2020年8月25日 16:37
ライオンとアスクルが運営するLOHACOは、IoTハブラシ「クリニカKid's はみがきのおけいこ」を9月9日に発売する。価格は11,000円。加速度センサー内蔵のIoT歯ブラシを用いた歯磨き行動データと、ECサイトでの購買データをかけあわせる。
「クリニカKid's はみがきのおけいこ」は、歯ブラシ(クリニカKid's ハブラシ 3-5才用)の握り部分に専用アタッチメントをつけて専用スマホアプリ(iOS/Android対応)と連携させることで、子どもに自主的な歯みがき習慣を身につけさせることを狙いとした、3から5歳向けの製品。子どもは知育玩具のように楽しみながら歯磨き習慣を身につけることができる。
LAOHACOで注文すると絵本とセットになった製品が届く。販売はLOHACOの特設サイトで行なう。1つのアタッチメントで3人まで登録できる。絵本は5種類用意されている。
絵本コンテンツで子どもの歯みがき習慣化を助ける
ライオン ヘルス&ホームケア事業本部 オーラルケア事業部 クリニカブランドマネージャー 横手弘宣氏は、背景から説明した。ライオンは129年前から歯磨き関連技術を開発し続けており、昨今は虫歯になる前の「予防歯科」に注力している。
家族のあり方に目を転じると、共働き世帯は増加。いっぽうコロナ禍以降、家族への健康意識は一気に高まっている。家族のあり方の一つのテーマとして子供の健やかな成長や教育がある。子どもの習慣形成のなかでも「自立心」育成への期待は非常に高い。自分でできることは自発的にやらせたいと多くの親は考えている。
しかし、3から6歳の子どもの多くは歯磨きを嫌がり、7割弱の子供は、声をかけられないと歯磨きを始められない。子供だけではない。子供の歯磨きについて負担を軽減したいと感じている親は86%にのぼる。
このような社会現状のなか、ライオンでは商品開発や啓発活動を行なってきたが、習慣化サポートについてはまだまだ課題があると考えていたという。そこで今回、1人1人にあったサポートを実態に合わせて提案していく製品を開発し、LOHACOのサービスを活用し連携することで、個人の実態にあったオーラルケア体験を提案する。
「クリニカKid's はみがきのおけいこ」は、こどもの歯磨きに対する2つの悩み、すなわち子供が嫌がることと、適当にすませてしまうこと、この2点を解決するという。
子供に対して「ご褒美」で誘っても一時的に終わってしまう。だから親は「早くしろ」、「じっとしろ」、「ちゃんとしなさい」と言うが、なかなか続かない。この現実は、子どもの将来に対する生活習慣定着化への疑問にも繋がっているという。
親が子どもの成長を感じられる時間は想像以上に短い。親が子供と一緒に過ごせる時間は、幼稚園卒園時点で3分の1も消費されてしまう。歯磨きの時間も有効な時間とすることが望ましい。
一方、子どもの歯磨き嫌いは実は本能的な反応だという。子供には触覚防衛本能があり、異物であるハブラシを入れられると反射的に嫌がってしまう。そこで今回、心理学に基づいたアプローチをとった。
「クリニカKid's はみがきのおけいこ」は、まず、ECサイトでボックスを購入し、親子で絵本を読むことから始まる。連携アプリで音楽とアニメーションのガイドを見ながらまんべんなく歯磨きをサポートし、頑張った結果をフィードバックする。
ポイントは3つある。やる気を引き出すための外発的な動機付け、歯磨きが上達することに興味を引き出すための内発的な動機付け、そしてその無理のない誘導だ。
具体的には、歯を綺麗にすると気持ちがいいと気づいてもらうこと、磨き方がわかると楽しいと気付いてもらうこと、上達すること、親にほめてもらうと楽しいと感じてもらうことを狙う。
絵本を読むことで清潔の概念とやる気を引き出し、アニメーションと音声ガイドで口のなか全体をブラッシングすることをサポートする。そして毎日の習慣をただの義務から成長につなげるために、上達や目標を見える化する。
これまでの歯磨きと違い、子供の自発的歯磨きを誘発することで、両親も、子供の成長を目の前で実感できることが従来の製品とは異なるという。
製品は147名の保護者と、専門家2名と開発した。絵本を読み続けることで清潔概念を学び、過去の歯磨きを振り返り目標設定をすることで親子の会話が増える。専門家からも親子が褒めあえることなどが評価されたという。
ハブラシには加速度センサーが内蔵されており、起動起点から手の動き(位置・速さ)を検知する。手がどのくらい動いているのかを計測することで、独自アルゴリスムにより口のなかのどのあたりを磨いているのか推定することができる。
また、スマホのアプリを毎回起動するのが面倒な場合は、デバイスから音が出る「音だけモード」もある。蓄積したデータは翌日以降にアプリに蓄積することができる。
子どもは、泥んこになった絵本のキャラクターを綺麗にするというゲーム感覚で歯を綺麗にする。事前にモニター調査でも89%が子供の成長を実感したとアンケートで答えたという。特に練習すれば上手になるということを子供が理解してくれた点などが評価されたそうだ。
LOHACO Insight Diveを活用して顧客行動の解像度を上げる
今回、ライオンは、よりパーソナルなオーラルケアを提案するためにアスクルの「LOHACO」と連携した。
LOHACOは日用品のECサイト。食品・飲料のほか、洗剤そのほか日用品を扱っている。アスクル LOHACO事業本部 副本部長 兼 ECマーケティング ディレクター 成松岳志氏は、顧客、購買、商品、閲覧、購入後のカスタマーレビュー、配送など多種多様な特性データを持っていることがECの強みだと紹介した。
ライオンの「クリニカKid's はみがきのおけいこ」は単なる売り切りではなく顧客の使用習慣を包含した製品なので、ECデータを活用したマーケティングが特に有効だという。
「LOHACO Insight Dive」は2019年9月から提供しているマーケティング支援サービスで、メーカー企業の保有データとLOHACOのECデータをかけわせて活用できる。ライオンは自社のデータとLOHACOのデータを連携して用いる。具体的には買い換えタイミングや一緒に購入されているものが何なのかといった行動の解像度を上げることができる。
「LOHACO Insight Dive」導入の背景には、消費財メーカーのDXの流れがあるという。IoTを導入したコンシューマー製品はまだ少ないが、多くの会社が変化の必要を感じており、より顧客を理解してプロモーション活動をしたいと考えている。
しかし製造業側からのデータのみでは、実際に買い物した結果どうなっているのか、ふだん合わせて何を買っているのかといった側面的データが得られず、それらなしでは顧客は理解できない。そこでEC側データを活用したいという声が多く、昨年9月からサービス提供となったという。現在までに7社から8社が利用しているとのこと。
今回、ライオンは「クリニカKid's はみがきのおけいこ」で、どのように歯磨き行動が変わったかといったデータを取得できるので、ハブラシ交換タイミングやオーラルケアグッズを提案することが可能になる。提案した結果、実際に購入されたか、一緒に何が購入されたのかといったデータをLOHACO側から提供する。LOHACOは具体的な販売・配送などを通じてライオンの活動をサポートする。
LOHACOの成松氏は、「流通業として、製造業側の思いと顧客課題が本当に一致しているのかというところの答え合わせがお買い物だと考えている」と述べ、今後も様々な協働を実現していきたいと語った。IoT製品を使った連携パターンは初めてなので、LOHACOとしても大きな期待を寄せているという。
両親のオーラルケアも
ライオンの横手氏は、今回のようなIoT製品の投入によって、いままではできなかった提案、具体的には子供の成長や実態に基づいた提案ができると述べた。
たとえば親や子供が、「どうしたら点数があがるかな」と思ったら、それが顧客接点になる。点数アップのための歯磨きのコツを伝えたり、ハブラシの交換や、フロスやリンスの提案が可能になる。
ライオンは2019年7月にスマホで写真を撮影して歯ぐきの状態をチェックする「HAGUKI CHECKER」をリリースしている。今後は子どもだけでなく合わせて両親のオーラルケアを見直すきっかけを提案することで、ビジネスの成長と社会的な意義を高めていきたいと考えていると述べた。
ライオンとLOHACOが提携に至った理由については「LOHACO Insight Dive」から得られるナレッジだけでなく、LOHACO自体が「忙しいけど丁寧に暮らしたい」というコンセプトを持つことから、ライオンの考え方との親和性が高いと考えたと語った。