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コロナ禍で伸びる個人向けローン。LINE Pocket Moneyの戦略

LINE Creditは28日、LINE上で展開する個人向けローンサービス「LINE Pocket Money」の申込者数が20万人を超えたと発表した。2019年8月のサービス開始から約10カ月、4月の新規申込者は3.9万件と消費者金融大手を超える数になっているという。

順調に拡大しているようにみえるLINE Pocket Money。LINEグループならではの個人向けローンは、「個人の働き方の変化」を見据えた「Credit Tech」を実現していくという。LINE Pocket Moneyの目指すものを、LINE Creditサービス企画チーム マネージャーの川崎 龍吾氏に聞いた。

コロナ禍の中で伸びるLINE Pocket Money

LINE Pocket Moneyは、LINE Payと連動し、申し込み、借り入れ、返済のすべてのフローが、LINEアプリ上で完結する個人向けローン。ATMや店舗に行くことなく、LINE上で1円単位で必要な分だけ、LINE Payへチャージできる。

LINEならではの特徴は、「LINE Score」の活用。行動データなどから独自のスコアを算出し、一人ひとりに応じた貸付利率(年率)と利用可能額を決定。貸付利率(実質年率)は3.0%~18.0%、契約極度額は5万円~300万円。遅延損害金(実質年率)は20.0%。返済方式は残高スライド元利定額リボルビング方式。

川崎氏は、テクノロジーを使った新たな信用の創造を「Credit Tech」と強調。その核といえるのが信用スコアの「LINE Score」だ。

従来の信用調査機関では、年収や勤続年数といったユーザーの“属性”を重視して、審査を行なっている。一方、LINE Scoreでは、LINE上における友だちの数、やりとりの信頼性、ECの利用状況など、オンラインを中心とした“行動データ”から独自のスコアを算出し、個人の信用を評価。このスコアと従来の信用情報をかけあわせて審査を行なう。

従来の信用情報は、雇用形態や勤続年数などが中心となる。そのため、そこに当てはまらない人、例えば、フリーランスや非正規雇用の人は利用が難しい、審査が厳しくなるといった課題がある。

一方、労働環境の変化により、柔軟な働き方、会社に依存しない働き方が増えており、従来の信用情報だけでは、個人の信用を正確に把握しづらくなっている。そこで、個人の行動データとLINE Score活用することで、「個人にとってよりフェアなサービス」を実現できるとする。

こうした「働き方の変化に対応した信用の創造」が、LINE Pocket Moneyが目指すものだという。

社会状況にあわせた新しい信用サービスを目指すLINE Pocket Moneyだが、図らずも状況の変化に合致し、新規申込者は増加している。“図らずも”というのは新型コロナウイルスの感染拡大という社会状況だ。

3月、4月の新規申込者ではフリーランスや非正規雇用の比率が増加。特に新型コロナで厳しい環境に置かれている飲食業従事者の申込みが増えているという。一般的に従来の金融機関で評価がされにくい傾向がある属性で、また、特定の雇用形態・業種への与信引き締めから「信用格差」も危惧される。

そこで、行動データと信用スコアを用いることで、雇用形態や業種、勤続年数“だけ”ではなく、「フェア」に個人を審査できるようになる。

また、「スマホで完結できる」ことも、新規申込増につながっているという。

Pocket Moneyは、1月以降毎月約16%増と伸びており、4月の新規申込者数は約3.9万人になった。この数字は消費者金融大手のアコムの同月新規申込数(3.3万人)より多い数だ(出典:4月マンスリーレポート/PDF)。

このデータだけで、Pocket Moneyが既存の金融機関を超えたと捉えるのは早計だ。既存の金融機関は、外出自粛等の影響で店舗の閉鎖や営業時間の短縮などの要因で、前月比で大きく数を減らしている。

一方、LINE Pocket Moneyは、実店舗がなく、本人確認もe-KYC対応により、スマホとカメラを使うだけで実現できるため、郵送や対面でのやりとりの必要が無い。返済もスマホだけで完結でき、ATMへの来訪も不要となるなど、来店や移動などに制約されない。

基本は毎月一定額の返済となるが、Pocket Moneyでは、随時返済利用経験者が45%と比較的高くなっている。川崎氏は、こうした利便性の向上も、LINE Pocket Moneyが実現するCredit Techの一環と語る。

個人に合わせて金利が低くなることも

あまり強調していないが、LINE Pocket Moneyの利用では、相対的に金利が安くなるケースが多いという。例えば、消費者金融3社との比較では、平均金利は約4%低くなっている。

川崎氏によれば、カードローンやキャッシングの場合、契約の枠の大きさで金利が決まるため、特に数万円から10万円程度の少額のローンでは、上限に近い金利になる場合が多い。カードローンでは10%台、キャッシングだと18%などだ。

LINE Pocket Moneyの金利は3~18%の範囲だが、スコアが高ければ3%台の場合もある。これも属性だけでなく、行動データを評価するLINE Pocket Moneyならではの特徴となる。

6月11日からは、100日利息無料などのキャンペーンを実施。金銭的なメリット等も徐々にアピールしていく。

なお、現在のユーザーは、1回あたり3万以下の借入が65%、月に複数回借入するユーザーが全体の6割で、「少額で賢く借りて返す」という傾向があるという。

LINE Pocket Moneyのこれから。カードとの競合は?

もちろん、スコアを使えば誰にでも自由にお金が借りられるわけではない。LINE Scoreが201以上でないと不可など、一定の基準は設けられている。また、将来的には審査におけるスコアの比重を上げていく予定だが、今は信用調査機関の情報の比重も高いという。今後、行動データや延滞データが貯まっていくことで、審査の精度は向上し、審査基準は日々アップデートされていく。

気になるのはLINEグループの中でのLINE Pocket Moneyの位置付け。

消費者金融のほか、信販系のクレジットカードも競合に見据えている用に見えるが、LINEグループの中では、LINE Payが「Visa LINE Payカード」を発行している。

グループ内の事業の役割分担について尋ねると「ユーザー層はかなり違うものと考えている」(川崎氏)という。

クレジットカードの利用者は、マンスリークリア(翌月などに一括支払い)の利便性などが求められている。一方、LINE Pocket Moneyは、「短期的に必要なお金を必要なときに借りて返す」が基本的な用途となる。

特に、クレジットカードとの大きな違いとなるのが「現金化」だ。

基本的にクレジットカードからの現金化はできない。一方、LINE Pocket Moneyでは、LINE Payを介してATMから現金引き出しも可能だ。現金が必要な用途、例えば家賃や、カードに対応していない習い事などの支払い、冠婚葬祭などの現金ニーズに応えられる点も大きな違いだという。その点では、使う人、必要な人は限定されるが、確実なニーズがあるという。

LINE Scoreの利用者も5月5日付けで500万を突破。今後LINE Creditは、LINE Scoreを活用した金融サービスの水平展開を計画。例えば、中小企業(SME)向けのローン(貸金業)やあと払い(割賦)、保証サービス(保証事業)などに広げていく。