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人との接触を8割減らす「10のポイント」。新型コロナ感染減へ専門家会議

政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は、4月22日付けの「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」を公表した。7日に7都府県に出され、16日に全国に拡大された緊急事態宣言と、そこで盛り込まれた「人との接触機会の8割の削減」という目標に対し、「より一層の努力」を求めるとともに、そのための10のポイントなどを紹介し、協力を呼びかけている。

接触8割削減で感染者減へ。10のポイントも

感染拡大への基本的な対策は、「クラスター(患者集団)の早期発見・早期対応」、「患者の早期診断・重症者への集中治療の充実と医療提供体制の確保」、「市民の行動変容」という3本柱。

外出自粛による接触8割削減という目標は、「市民の行動変容」にあたる。都市部を中心に市中感染のリスクが拡大している中、「3密」などのハイリスクの環境を徹底して回避し、接触の8割を削減の徹底が、まん延区域の収束のための策となる。

NTTドコモによるデータでは、4月13日から4月19日の1週間が、1-2月の平均値と比較して渋谷駅周辺の日中時間帯で、平日は63.6~65.2%、休日は77.6~77.8%の人口減。ソフトバンクのデータでも4月18日は東京都内の主要駅(東京、新橋、新宿、品川、六本木)で68.9%~87.3%の人口減となった。ただし、公園については東北地方を中心に平時よりも利用者が増えており、「状況により一律でないものの、注意喚起を要する局面が存在しうる」とする。主要駅の状況でも、「人口減少が十分ではないケースが平日に顕著」としている。

4月17日と1月17日を比較した渋谷駅周辺の接触の減少率(昼間)

また、外出自粛が要請されているなかで、「公園やスーパーなどにおいて週末に多くの人が集まっている場での感染対策の必要性が課題」とし、例えばスーパーでの入店前後の手洗い、人が触りやすい扉や共用部の定期的な消毒、レジなどの行列位置の指定、混雑時の入場制限などを提言している。

市民に求めているのは、従来と大きく変わらない。

  • 手洗い、咳エチケット等の感染防止対策の徹底
  • 「3つの密」の徹底的な回避(人混みや近距離での会話、多数の者が集まる室内で大声を出す・歌を避ける等)
  • さらに、人と人との距離をとること
  • 不要不急の外出の自粛

また当分の間は、緊急性を要する場合を除き、医療施設や福祉施設における面会、帰省などで高齢の両親、祖父母と接することを控えるよう呼びかけ。帰省などは、遠距離の人の移動と重症化するリスクの高い高齢者との接触が重なるため、ゴールデン・ウィークの外出も控えるよう促している。

出勤が避けられない場合でも、「3つの密」が同時に重なる場を避けるほか、換気の徹底、接触感染防止、飛沫感染の防止を呼びかけ。風邪症状を有する者の出勤免除や安心して休暇を取れる体制づくりとともに、感染の疑いが少ない従業員に対してPCR検査の結果を提出させることは「適切ではない」としている。

専門家会議では、「接触機会の8割削減が達成されている場合、緊急事態宣言後15日間で確定患者データの十分な減少が観察可能となる。65%の接触の削減では、減少に転じるとしても更に時間を要する。8割削減できれば、より効果的なクラスター対策や『3つの密』の回避を中心とした行動変容で感染を制御する方法が一つの選択肢となり得る」とし、劇的な接触行動の削減を求めている。

接触が流行開始後20日目に大幅に削減された場合のシナリオ

また、8割削減のための10のポイントというパンフレットも作成し、協力を呼びかけている。

  • ビデオ通話でオンライン帰省
  • スーパーは1人または少人数ですいている時間に
  • ジョギングは少人数で。公園はすいた時間、場所を選ぶ
  • 待てる買い物は通販で
  • 飲み会はオンラインで
  • 定期受診は間隔を調整。診療は遠隔診療
  • 筋トレやヨガは自宅で動画を活用
  • 飲食は持ち帰り、宅配も
  • 仕事は在宅勤務。通勤は医療・インフラ・物流など社会機能維持のために
  • 会話はマスクをつけて

重点医療機関整備と保健所負担の軽減。倍加時間算出Excel

医療機関の今後については、重症者・中等症者に対する病床を確保し、集中的に受け入れる「重点医療機関」を、「全都道府県で速やかに設定するべき」と要望。院内感染を防ぐための感染管理徹底なども求めている。

無症候例・軽症例の自宅療養には困難が予想されるため、療養先となるホテルなどの施設の確保と具体的な準備を要望。「まだ感染者がそれほど多くない都道府県も含め、迅速に行なう必要がある」とする。また、症状が改善した無症候例・軽症例については、病床の確保状況等を踏まえ、自宅や施設における療養の移行が必要とする。

PCR検査体制については、都道府県が地域の医師会等と連携し、帰国者・接触者相談センター業務の更なる外注や委託の推進により、限り保健所の負担を縮小。大型のテントやプレハブ等の設置や、地域医師会等と連携した地域外来・検査センターの設置など、地域の実情に応じた外来診療体制を増強するよう求めている。

全般的に体制強化・拡大が図られる中、縮小が提案されているのが、空港等における「水際対策」。海外からの移入が疑われる感染者は、3月22日、23日頃には4割近くを占めていたが、4月20日時点では約0.65%に低下した。提言では、「PCR等検査の実施対象を有症状者に限定するなどの選択肢も含め、効率的・効果的な水際対策を進めるべき」としている。

また、プライバシーに配慮したICTの活用も提言。倍化時間(感染者等の数が倍になるまでの時間)の算定方法について、各都道府県が推計できるよう、「算定方法についての考え方や算出方法に係るマニュアル、算式のExcel等の作成を行ないホームページ等に掲載すべき」と提案している。

提言を受けて、安倍首相も8割接触削減への協力を要請。また、今年のゴールデンウィークにおいては、「実際に帰省するのではなく、ビデオ通話を使用したオンライン帰省を行っていただくなど、外出自粛への御協力を是非お願いしたい」としている。

発言する安倍総理(出典:首相官邸)

状況分析・提言の全文は、厚生労働省がPDFで公開している。