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食のデジタル化でLINEをスーパーアプリに。LINE×出前館

LINEは、フードデリバリーの出前館と資本業務提携した。27日の出前館の決算会見で、LINE取締役 CSMOの舛田淳氏は、「総合的なフードマーケティングプラットフォームを目指す」とその狙いを説明した。

同提携では、LINEおよびNAVER J.HubとLINEで構成される未来Fund有限責任事業組合で合わせて約300億円を出資。持株比率は、LINEが35.87%、未来Fundが25.05%となる。あわせて、LINEの出前・宅配事業である「LINEデリマ」事業の名称を「出前館」に変更するほか、テイクアウトサービス「LINEポケオ」を出前館に統合。LINEが出前館のシステム開発やマーケティングに人員を派遣する。システムについては50人規模が派遣される。

出前館の中村利江社長は、これまでの「受注代行事業者」から「地域密着のインフラ事業者」に方針展開し、特に加盟店に配達機能を提供する「シェアリングデリバリー」を強化していくことを説明。従来はピザなど「1,500円以上で2カ月に一回」程度の利用を想定していたが、シェアリングデリバリーにより、弁当など「800円程度で頻繁に使う」を強化。単価が安くても高頻度な日常利用を目指す。

そのためにLINEと提携。「出前館」IDをLINE IDに統合するONE ID化を推進するとともに、これまでも出前館が担っていた「LINEデリマ」のサービスを「出前館」に統合。資金は「特に課題と感じていた」というシステム開発やマーケティングに投入する。また、出前館の社長には、LINEO2OカンパニーでCEOを務める藤井英雄氏が就任。中村社長は会長に就く。

藤井氏は、米国や英国、韓国などに比べて国内のデリバリー市場のアクティブユーザーが少なく、配送不可の店が日本に多いことなどに言及。出前館には「5~10倍の成長ポテンシャルがある」とし、配送代行(シェアリングデリバリー)とテイクアウト(LINEポケオ)を組み合わせて、食の多くの領域をカバーできる点を強調。また、LINEの8,300万を超える顧客基盤や位置情報などを生かしたマーケティング展開などが可能とする。

将来的には、モバイルオーダーやイートイン予約など実店舗での展開も検討。総合的な「フードマーケティングプラットフォーム」を目指すという。なお、LINEデリマとのシステム統合は、年内から2021年前半を見込んでいる。

LINEの舛田淳CSMOは、「LINEのスーパーアプリ化」について説明。「スーパーアプリになるには日常で使われなければならない。LINEは8,000万人に使われるもっとも日常使いのアプリ。“食”は、我々がめざすLIFE on LINEに必要なもの。フードデリバリーは間違いなく伸びる市場で、食のデジタル化、DXを加速する。ハレの日のピザだけでなく、日常でも増えている。新型コロナウィルスの問題は、飲食店にも影響を与えている。食のデジタル化は有効なソリューションになるのではないか」と語った。

なお、LINEはヤフーを傘下に持つZホールディングス(ZHD)と経営統合予定で、ZHDやソフトバンク傘下にもフードデリバリーは多数ある。舛田氏は「ナンバーワンの出前館に投資するのがリーズナブル」とし、「LINEの経営陣の中で、食の領域は我々がプラットフォームとして強くなるのに必ず必要な領域。LINEとして積極的かつ攻撃的に投資する」とした。

出前館の中村社長は競合との差別化について、「安心・安全」を強調。全ての配達員に3.5時間の研修を行なうだけでなく、拠点で発熱など体調をチェックを毎日行なっているという。

また、NTTドコモの「dデリバリー」も出前館を基盤としているが、dデリバリーとの提携関係に変更はない。現在ポイントサービスは「Tポイント」だが、「一番ユーザーにとって一番いいものを検討していく。LINEから特にLINEポイントとは言われていない」(中村社長)とし、LINEの舛田氏も「出前館の成長がファーストプライオリティ。お客様、加盟店にとって最適なものという軸で考える」とした。