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「決済」だけじゃないキャッシュレス。出雲大社「ご縁横丁」の取組
2020年2月14日 13:23
日本におけるキャッシュレスが拡大している。昨年来多くの話題を集めたQRコード決済のほか、クレジットカード、電子マネーなど「現金以外」の手段が増えてきた。一部の決済事業者の撤退も始まったが、黎明期の混乱した状態から、多くの人の生活に根付いたものになりつつある。
店舗でも、大型店やチェーン店などを中心に決済手段は増えており、市場調査をみても利用者は順調に拡大傾向だ。一方、小規模店舗や地方の商店での普及はまだ始まったばかり。まだまだ全国どこでも使えるという状況ではない。そうした中、店舗向けのモバイルPOSレジ「Airレジ」、決済サービス「Airペイ」を展開するリクルートライフスタイルも、地方のキャッシュレス化に本格的に取り組み始めた。
同社によれば、'19年10月に開始したキャッシュレス・消費者還元事業とともに地方の中小事業者の関心も確実に高まってきているという。また、キャッシュレス対応だけでなく、「業務の改善」にも注目されるようになってきている。
Airペイを導入した、島根県 出雲大社前にある神門通り商店街「ご縁横丁」もそのひとつ。ご縁横丁は、“出雲のいいもの、おいしいもの”をコンセプトに11店舗が集まる地産地消型の商業施設で、ご当地グルメや勾玉などの名産品を揃えている。
縁結びの神様として有名な出雲大社だが、「恋のパワースポット」として女性を中心に人気を呼んでいる。ご縁横丁も観光客増を受けて、「出雲で出店したいエリアNo.1」とも呼ばれているという。
ご縁横丁が、Airペイ導入を決めた最大の理由は、消費者還元事業と軽減税率への対応だ。レジの買い替えとともに、複雑化する税制や還元事業への対応、今後のシステム発展などが見込めることから、Airレジを9店舗、Airペイを6店舗に導入した。
横丁全体のキャッシュレス比率は、導入後2カ月で1.6倍に増加。100年以上続く老舗和菓子屋「坂根屋」の経営に関わり、ご縁横丁を統括する三木康夫氏は、「2020年には40~50%になるのではないか」と語る。以前からキャッシュレス対応していた店舗でも、対応ブランドが増えたことで、キャッシュレス決済の回数が増加しているという。
もう一つ導入時に重視したのが「業務の軽減」。デジタル化により、売上データの集計が簡単で、レジ締めが楽になることはもちろんだが、経営者も遠隔地からも現在の売れ行きや、昨年同月比の売上などが確認できる。例えば、混んでいるため近隣の店舗から応援を入れたり、リモートで仕入れ判断するなど、業務の最適化が行なえるようになったという。
また、ご縁横丁各店舗の店長会議においても、Airレジの売上データを使うことで、正確かつ建設的な議論ができるようになり、空いた時間はコンテンツ企画に使えるようになった。ご縁横丁が、Airペイ導入で期待したのも、「空いた時間を作る」ことだったという。
いまは多くの人が集まるご縁横丁だが、横丁のある神門通り商店街は、数年前までは人影の少ないシャッター街だったという。国鉄大社駅が廃線となり、車社会の到来や観光バスで直接参拝が定着し、商店街は寂れていく一方だった。この状況を改善すべく、行政が、電柱地中化や石畳化などの景観改善に取り組んだほか、三木氏を中心にご縁横丁などの横丁経営、観光コンテンツ強化に着手。それらが身を結び、参拝後の回遊客を拡大してきた。
その経験から、ご縁横丁には「商店街を常に魅力ある状態にアップデートしなければ」という危機感があるという。常に観光客に楽しんでもらう企画を考え、相談する時間が必要で、そのためにレジ更新とともに、効率化・省力化を重視。Airレジを選択した。
今後も交流空間のある宿や、クラフトビール屋などを順次開業予定で、神門通り商店街は早く閉まる店が多い中で、夜でも交流できるようにする。3月には出雲大社の桜開花に合わせて「出雲おとピクフェス」を開催。3,000人のイベントを目指すなど、出雲大社だけでない街の魅力の創出を図る。
リクルートライフスタイルも、キャッシュレス対応だけでなく、こうした業務の効率化の側面でのキャッシュレス促進を強調していく。ご縁横丁のほか、熊本県阿蘇市との包括連携協定や山梨県富士吉田市、石川県加賀市山代温泉通り商店街、岩手県宮古市魚菜市場など、全国の地方自治体や商工会議所と連携、キャッシュレスを推進していく。商工会主催の説明会などでも、業務効率化への期待やニーズは高いとのことで、「決済」だけではないキャッシュレス化の利点を、地域の課題解決に向けて提案していく。