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丸井、“売らない”店舗を支援する新会社「D2C&Co.」
2020年2月12日 16:02
丸井グループは2月12日、ECなどで消費者に直接販売するD2Cブランドに対して投資活動や融資を展開する新会社「D2C&Co.(ディーツーシーアンドカンパニー)」を設立することを発表した。D2C&Co.では、マルイ店舗への出店等も支援する。
D2Cとは、小売店や広告代理店を介さず、消費者とブランドが直接つながるビジネスモデル。直接販売することで中間コストを削減できるほか、そこで得られた顧客データをその後の戦略に活かせる点を特徴としている。
D2C&Co.は、D2Cのエコシステムに関わるスタートアップ企業と幅広く連携・協力することで、D2Cビジネスの成長・発展を目指す新会社。D2Cスタートアップ企業への投資のほか、マルイ店舗やエポスカード会員、小売ノウハウを持つ人材といった丸井グループのリソースを活用し、モノづくりやECサイトの構築、リアル店舗の出店・運営まで、D2Cに関連する領域全般における取り組みを推進するという。
丸井グループではこれまでもスタートアップ企業に対する投資等を行なってきたが、新会社を旗印として、投資対象をD2Cにフォーカスし、売場の出店支援などのサービスを集中して行なっていくという。
この取り組みの背景について、丸井グループ 代表取締役社長 青井浩氏は、企業と客の関係性の変化にあると話す。物を買うだけであれば、いつでもどこでも買えるネットが、店舗よりも圧倒的に便利という状況下で、ただ物を売るための店では存続できず、新しい役割や価値を提供できる店舗に進化しなくてはならないと述べた。
そこで、ブランドの背景にあるストーリーや会社の理念・ビジョンに共感できるかどうかを重視する消費者の台頭に着目。新たな価値を提供する店舗へと進化するため、D2Cへの注力に至ったと説明した。
D2C&Co. 代表取締役社長 加藤浩嗣氏は、D2C&Co.が展開する事業として、投資・融資、出店支援、キュレーションサイトの構築の3つを挙げる。
投資については、D2Cスタートアップに特化して資金を提供。またD2Cブランドにはモノづくりをしている会社もたくさんあるが、テック企業と比べて初期投資があまりかからない半面、成長期には運転資金が恒常的に不足するという状況になることが多いという。そこでD2C&Co.では、投資とは別に、機動的に資金提供が可能な融資面でも充実させるとした。
出店支援については、年間2億人が来店するというマルイ店舗を活用。D2Cブランドへ顧客接点を提供するほか、ショップの運営受託も展開する。
複数のマルイ店舗に出店しているFABRIC TOKYO 代表取締役CEO 森雄一郎氏は、マルイへの出店による業績の変化について「顧客獲得コストの減少」と「顧客単価の上昇」を挙げた。
顧客獲得コストについては、オンライン広告だけのときに比べて数十%の改善が見られたという。顧客単価は、オンラインのみでは1.5万円から2万円だったところ、リアル店舗を始めてからは4.5万円から5万円に上昇したと説明した。
マルイ有楽町店に「MEDULLA」を出店しているSparty 代表取締役 深山陽介氏は、IT系の会社は店舗を出すすべがわからなかったが、運営や接客などを教えてもらいながら、一緒に店舗を作っていったと話した。
D2C&Co. の加藤氏はD2Cブランドの出店について、新規顧客獲得だけではなく、既存客とのコミュニケーションの場にもなり得ると話す。また、店舗で購入しなくても、その後ECで購入するなどの流れがあると説明した。
さらに丸井グループの青井氏は、従来の店舗では、商品を仕入れて販売し、差額が収益になるというビジネスモデルだったが、マルイではスペースを貸すという不動産型のビジネスモデルに転換。出店店舗は、その場で売らなくても店が展開でき、丸井グループにとっては、家賃による収益のほか、賑わいを作り出せるというメリットがあると述べた。
キュレーションサイトの構築については、D2Cブランドのキュレーションサイトを立ち上げ、D2Cブランド間の相互送客を促進していくことを検討。消費者にとって、自身が共感するブランドと近い価値観を持つ新たなブランドとの出会いの場となることを目指す。
D2C&Co.は、丸井グループ100%出資の完全子会社。資本金は1億円。1カ月に1社のペースで投資をしていくことを目標とする。