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ラスベガスでLyftの「自動運転タクシー」に乗る。日常となった自動運転

ラスベガスはギャンブルの街だ。そして、ライドシェアに乗る時もギャンブルがついて回る。

って、なんの話かというと、「Lyftの自動運転車」の話だ。ライドシェアサービスのLyftは、2019年の1月(すなわち去年のCES)から、ラスベガスで「自動運転車」を使ったサービスを提供しており、今もそのサービスは継続している。

このサービス、自分で選ぶことはできず、サービスを利用時に「運がいいと選択肢に現れる」感じになっている。現地では「Lyftガチャ」とも言われていた。

筆者は徹底的にツキがなく、昨年・今年と、Lyftガチャに負け続けていた。だが取材最終日の1月10日、ついにガチャでレア……ならぬ「Self-Driving Car」をひきあてた。

自動運転車が近くにいるとこんな表示が出る。これを引いたら自動運転車利用のチャンス

せっかくなので「自動運転タクシー」の乗り心地をレポートしてみたい。

一般的なライドシェアと同じように使うが、やってくるのは自動運転車だ。

ラスベガスを走る「BMWの自動運転タクシー」

Lyftは、日本でも知られているUberと同じくライドシェアサービス。いろいろ問題があって評判が落ちているUberに対し、Lyftは、ドライバーにも利用者にも高評価、という印象だ。筆者もアメリカではLyftを愛用している。

そんなLyftも、他のライドシェア事業者や自動車メーカーと同じく、自動運転車を開発している。パートナーはAptiv。CESにも大きなブースを毎年構えている。自動運転に使っているのは「BMW 540」という高級車。ここに「Aptiv」とでっかく書いてあるのが自動運転タクシーの印だ。ラスベガスの街を歩いているとけっこうみかける。乗車中に対応してくれたAptiv関係者の話によれば、「街中で30台が走っている」とのことだ。

やってきた自動運転車。BMW 540をベース車としていて、横に大きく「Aptiv」の文字が、Lyftのイメージカラーであるパープルで描かれている

外観ではそこまで目立たないが、自動運転中に遠距離用・近距離用のLiDAR(レーダーを電波でなく光で実現したもの。光パルスが到達し、反射して帰ってくるまでの時間で周囲の状況を計測する)が搭載されている。

最初は外観だけ撮影可能だと思っていた。なぜなら、昨年「Lyftガチャ」に当たった同業者によれば、「外観写真はOKだが、車の中での静止画・動画の撮影、録音は不可」とのことだったからだ。

だが、筆者が車に乗り込むと、意外なことを言われた。

「フラッシュを焚いての撮影、音を出しての撮影じゃなかったら、静止画でもいいよ。動画と音声の録音は、やっぱりダメだけど。」

車内には、ドライバー役、というか自動運転車のオペレーションを担当する人と、主に上客への説明を行なう人の計2人が乗っている。ネバダ州といえど、完全に人が乗っていない形、ドライバーがすぐに運転をオーバーライドできない形での自動運転は認められていない。だから、こんな感じで運行するものなのだ。そういう意味では、あくまで「テスト」である。

左がドライバーで、右が説明役。説明役はAptivの関係者だそうだ。かなり詳しくいろいろ教えてくれた

LiDARを使って周囲を走査、ラスベガスではもう「日常」に

「で、どうする? 静かに楽しんでもらってもいいけど、説明しようか? 質問にはなんでも答えるよ」

Aptivの関係者だという説明担当者がフランクに話しかけてきた。もちろん、話を聞きまくるに決まっている。

-これ、地図は独自?

「そうだね、Aptivで独自に作ったラスベガスの地図を使ってる。そこに日々、色々情報が加わってて、自動運転の判断に利用している感じだね」

-周囲の測定は?

「それは主にLiDARで。遠距離LiDARは最大200mまでの範囲の情報をとれるようになってる」

-画面に映っているのは?

「車が認識している周囲の状況だね。問題なく走れればグリーン。そうでないと別の色になる。横断歩道が見えるだろ? 今は人がいないからグリーンだけど、LiDARが少しでも人の姿を捉えたら、色が変わる。それに従って、車も停止するよ。隣のレーンがグリーンだろ? そっちには移れる、ってことだね。前がつまってるから、動き始めたね……、ほら、こんな感じに」

自動運転中のダッシュボード。緑の部分には車はおらず、安全に走れる。赤などの部分は、他の車や障害物がある場所。どう動くべきか、ちゃんと自動車自身が判断しながら動く

運転はあくまでスムーズ。自動運転だからといって急に動き出すこともない。もう、この辺はこなれた感じなのだろう。

そんな風に話している時にも、ドライバー役は座ってハンドルに「手を添えるだけ」。一度わざと大きく離してくれたけれど、「ルールでは添えとけ、ってことになってるんだよね」と言っていた。

自動運転中。手はハンドルに「添えるだけ」で、握ってはいないところに注目

運転中、すべての行程を自動運転だったのか、というとそうではない。

ホテルの駐車場から公道へ出る段階ではなんどか自ら運転していたし、公道でもレーンチェンジ時は、手動の時もあった。他のLyftの自動運転車に乗った人の場合には「思った以上に自分で運転してた」という感想もあり、人によって、タイミングによって扱いは違うのかもしれない。

「確かに、ちょっとハンドルを操作することはある。でも、ブレーキについてほとんど自動だよ。僕はほぼ操作してないね」

ドライバーはそう話す。

すでに述べたように、Lyftは、ラスベガスではCES期間中以外でも自動運転車を運行している。

「自動運転ってどう?」と2人に聞くと、「もう僕らは毎日乗ってるからね。日常だよ」とのこと。

調べてみると、Lyftはラスベガスでの自動運転車の乗車回数について、2019年6月に5万回を達成したそうだ。それから半年が経過した今は、10万回に近づいていそうだ。それだけやってもまだ「完全自動」には至らないが、ドライバーを大幅に楽にしている。