ニュース

ヤマト、宅配特化の小型EV車両導入。国内初

ヤマト運輸は19日、独ストリートスクーターと共同開発した宅配特化のEV車両を2020年1月から導入すると発表した。首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)に順次500台配備される。

同社では従来から低公害車の導入や自転車などを利用した集配により環境負荷軽減に取り組んできており、今回のEV車両もその一環。宅配用トラックをEV化することでCO2削減だけでなく、住宅地での騒音低減など環境負荷の軽減に取り組むほか、車両自体が小型で運転がしやすく、新人のドライバーでもセールスドライバーとして活躍できる機会を増やせるという。

車両はミニバンサイズで取り回しがしやすい

特に運転のしやすさについては、車両重量が3トン未満であることから普通免許証で運転が可能。最大積載量は600kgで、軽ワゴン車の約2倍となる。1日約200回程度乗降を繰り返すドライバーの仕事に配慮して運転席の位置を低くし、シートもドア側をフラットな形状にすることで乗り降りがしやすくなっている。

乗用車のように前輪が前方にあり運転席の高さが低いため乗り降りしやすい
運転席
シートはドア側の凹凸がフラットで乗り降りがしやすい

車両の状況を表示するマルチビューモニタも搭載。車両の回りを上空から見たような視点で確認できるバードビューモニタや、前方後方カメラ、ウィンカーの操作に応じて車両左右の死角を表示する機能なども備える。

キーレスエントリにも対応し、キーを持って車両から離れると自動的にロックがかかり、近づくことで自動的にロックが解除される。これにより宅配中に車両を盗難されることを防ぐ。

車両を上から見下ろした視点で見られる「バードビュー」(画面左側)。右側は広角の前方カメラ
左のウィンカーを出すと車両左側の死角が確認できる

荷室の床面は高さ90cmで、荷室に乗り込むことなく、無理ない姿勢で荷物の出し入れができる。また、日本の気候にあわせ、ドイツ本国では装備されていないエアコンも装備されている。

荷室の高さは90cmで無理なく荷物を出し入れできる
荷室は車両の左側面からもアクセスできるため乗り込んで作業する必要がない
車両の右側面には冷蔵・冷凍庫が設置
冷蔵庫内の様子

最大走行距離は約100kmだが、都市部の同社の集配平均走行距離は40kmのためエアコンを使っても余裕がある。バッテリは走行用のバッテリとは別に冷蔵庫用のバッテリも搭載している。充電時間は6時間。夜間の非稼働時に充電をするため急速充電機能には対応しない。

小型商用EVトラックの仕様は、4.700×1,830×2,250mm(全長×幅×高さ)、総重量2,850kg。

ヤマト運輸成城支店に設置された充電施設。1台で2台の車両を充電できる
IDタグによる無線認証に対応しIDをかざさないと充電を開始できない
車両の左前方にある充電口から走行用のバッテリを充電する
荷台の下には冷蔵庫用の充電口がありこちらも充電する

同社はこれらの仕様によってドライバーがより働きやすい環境を作り、初心者や女性も働きやすくすることで運送業界の人材不足を解消していく。今後は2030年までに10,000台の小型集配車両のうち5,000台をガソリン車両と入れ替えていく。

独ストリートスクーターと共同開発をした経緯についてヤマト運輸 代表取締役社長の栗栖利蔵氏は、国内のメーカーにはEVの乗用車は多いが商用車としては満足できるものがなく、ドイツで実際に試乗した上で、実績のある同社を選んだという。

左からドイチェポストDHL トーマス・オグリビー取締役、ストリートスクーター イエルグ・ゾマーCEO、ヤマト運輸 栗栖利蔵代表取締役社長、ヤマトホールディングス 長尾裕代表取締役社長