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海外でも自国通貨&電子マネーで決済。NTT Com「Home Currency Anywhere」
2019年11月12日 11:00
NTTコミュニケーションズは、訪日観光客らが自国の通貨を日本の店舗で利用可能にする「Home Currency Anywhere」を11月下旬より提供開始する。
Home Currency Anywhere(HCA)は、レート保証型外国為替情報と取引情報の流通サービスで、シンガポールの「M-DAQ」との協業により実現する。常に変動する為替レートを24時間などの一定期間保証。飲食店や小売店、ECサイト、旅行代理店、電子マネーやキャッシュレス決済事業などを展開する企業(ミドルB)が導入することで、24時間中の価格変動にかかわらず、外貨での価格表示が行なえるようになる。
訪日客に自国通貨での価格表示を行なうため、価格がわかりやすく、購買体験に「安心」を提供。返品などが生じる場合も90日間などの一定期間は購入時点での価格の返金を保証する。これにより、国内パートナー企業のインバウンドビジネス拡大を狙う。
消費者向けのサービスは、HCAを導入するパートナー企業(ミドルB)が展開。交通事業者(エキナカ等含む)や券売機/自動販売機、飲食事業者(フードデリバリー、テーブルオーダーなど)、キャッシュレス事業者、観光事業者、金融、小売などの各社と協議を進めているという。HCAはパートナー社のシステムに組み込みやすいAPIとして提供。外貨取引情報はAPI経由でM-DAQに流通し、外貨両替を行なう。
対応の通貨は、ドルやアジア圏の主要な22種類。HCAの特徴は、パートナー企業向けに24時間保証のレートを出せること。採用企業はシステムに組み込みやすく、消費者側もわかりやすい価格表示が行なえる。
気になる外国為替手数料は「非公表」。ただし、この手数料が安いことがHCAの特徴で、手数料を抑えられる理由は、シンガポールのFintech企業「M-DAQ」との連携によるもの。
外国為替は世界の12行の寡占市場だが、M-DAQはそれらの銀行と同等のインターバンクレートで取引でき、「場合によっては日本のメガバンクより安いレートが出る」とのこと。優良レートという特徴を活かし、レート保証を実現する。
一部のクレジットカード会社では、海外での支払い時に「現地通貨建て」か「日本円建て」かを選択できる「DCC(Dynamic Currency Conversion)」などのサービスを展開している。類似のサービスに見えるが、DCCでは割高な手数料がのることが多い。HCAはそれらより大幅に手数料は低くなる見込みで、NTTコミュニケーションズ 経営企画部 ビジネスイノベーション推進室長の東出治久氏は、「クレジットカード事業者とも話をしている。そのことからもレート面での競争力があると言えるのでは」とした。
また、HCA導入サービスは自国通貨での支払いに限定。現地通貨と自国通貨を消費者に選ばせる、といったことは原則用意しない。「分けること自体が複雑。そういう複雑さを無くすためのサービス」(東出氏)とした。
なお、NTT ComはHCAの展開に向けてM-DAQに出資。出資比率や金額は非公開だが、出資の目的は「日本市場における優先交渉権を得るため」としており、M-DAQのサービスを日本で独占的に利用する形となる。
また、海外の通貨だけでなく海外の「電子マネー」を日本で使うといった展開も想定。「NTT Comだけではできないが、2020年のオリンピックまでの実現を目指す」という。
HCAは22通貨に対応するが、導入企業の意向は「欧米より、アジアパシフィック(APAC)全体のインバウンド需要を想定したものが多い」としており、中国、台湾、韓国、香港、タイなどの旅行者向けの展開が多くなる見込み。これらはパートナー企業の事業展開次第とのこと。
また、訪日客(インバウンド)だけでなく、海外展開(アウトバウンド)も予定。例えば導入企業から「ハワイのお店ではHCAを導入し、日本円での支払いえるようにしたい」といった声は多く出ているという。年度内にはアウトバウンドでのPOC(実証実験)も行なわれる予定。
NTT Comは、HCAにおいてシステム利用料と外国為替利用額に応じた手数料を徴収。2025年度に売上高50億円、2030年度に130億円を目指す。