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QRコード25周年。ATMや顔認証、ホームドアなどさらなる用途拡大へ
2019年8月9日 09:43
刈谷市で生まれたQRコード25歳
デンソーウェーブの杉戸克彦会長は、1994年の誕生から25年を振り返り、「当初はわずか2名で開発されたQRコードが、世界中で使われるようになった。デンソーという会社が、愛知県の刈谷市で作ったことは、あまり知られていないかもしれない。しかし、最近の“なんとかペイ”や“モバイルチケット”、雑誌などでのURL表示など、スマートフォンの急激な慎重とともに世界中に普及。日常生活に欠かせない存在になった」と切り出し、当初は工場における生産管理用から、徐々に用途を拡大してきたQRコードの歴史を紹介。近年は鉄道などのインフラにも幅を広げており、「社会におけるQRコード活用は始まったばかり」と強調した。
QRコード開発者のデンソーウェーブ AUTO-ID事業部 主席技師 原昌宏氏は、QRコードの開発の歴史を紹介。開発を開始した1992年は、大量生産から多品種少量生産の時代となり、特に自動車業界において、多くの部品を管理するためにバーコードに変わる新たな仕組みが必要になったという。特に大容量、漢字対応という観点から、次世代のコードとしてQRコードが考案された。
ここまでQRコードが普及した要因として、「技術」、「インフラ」、「用途開発」の3点を紹介。技術については、読み取り性能の高さや、セキュリティなど時代に即した機能強化が重要だったとする。また、QRコードにまつわる特許を開放、あわせて業界標準化や、ISOなど国際標準化などを進めることで、様々な業界からデンソーの予想を超える多くの用途開発が行なわれてきた。
QRコード自体も進化しており、データの読み取り制限などセキュリティ機能を備えた「SQRC」や、デザイン性を持ち、販売促進ツールとしても活用される「フレームQR」などを紹介。事例としても、デジタルサイネージや、駅の券売機、さらに2020年には東海道新幹線への導入も予定されるなど、QRコードの用途はさらに広がりを見せている。
原氏は、今後のQRコードの展開として「大容量化」を挙げる。最初のQRコード(モデル1)は数字1,167桁、現在のQRコード(モデル2)は7,089桁まで扱えるが、これらは当初のスキャナ(カメラ)の能力を想定して定められた。現在のカメラは数百万から数千画素となっており、より高度なスキャナとなるうるため大容量化の余地が大きいという。
QRを組み合わせた顔認証やインフラ展開
展示では、顔認証を使った入退場ゲートやATM動作などの次世代展開を紹介。顔認証は、顔のデータをQR化してカードを配布。そのカードをゲートやATMにかざし、さらに顔がカードの顔情報と合致すると、ゲートが空いたりATMの操作ができるようになるというもの。
顔だけでなく、QRのカードの2段階で認証を行なうためセキュリティ強化が図れるほか、QRをプリントしたカードがあれば、ネットワーク接続などが不要で簡単に導入できることが利点という。
バッテリレスの電子ペーパータグ「D-Paperタグ」も紹介。スキャナで画面書き換え可能な電子ペーパーで、電子ペーパー側は電池無しで運用可能。電子ペーパーの書き換え時にスキャナから電力を送り、画面を書き換える。
また、都営地下鉄に導入されるQRコードによるホームドア開閉システムや、沖縄の「ゆいレール」で使われているQRコードの乗車券なども紹介。
ホームドア開閉システムは、車両ドアにはられたQRコードを駅内のカメラで読み取り、停車位置や編成数、扉の開閉状態などを正確に検出。車掌の操作を補助したり、必要なドアのみの開閉を行なうなどの制御を可能にする。また、QRラベルを貼るだけで、車両側の回収なしに設置できるため、工期を短縮できることも特徴という。
25周年を記念した特設サイト「未来は、まだまだ育つ」もオープン。QRコードの歴史とこれからを紹介している。