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メルカリは社会の公器になる。ペイとUSで赤字137億円も'20年度に「勝負」

メルカリは8日、2019年6月期通期決算発表会を開催した。山田進太郎会長は、7月からの2020年6月期を「勝負の年」と宣言。「メルペイと米国メルカリの加速度的成長に向け、グロースを最優先に投資。ミッション達成への強固な基盤を作る」とした。

メルカリ 山田進太郎会長

2019年度の通期決算は、売上高が前期比44.5%増の516億円、営業利益はマイナス121億円(前年は-44億円)、純利益もマイナス137億円と赤字(同-70億円)。売上は伸長したものの損失が拡大している。損失拡大の理由は、広告宣伝費の拡大や人件費等の増加によるもの。

GMV 5,307億円。メルペイ開始でメルカリMAU増

フリマアプリ「メルカリ」事業の経営指標として重視するGMV(流通総額)は、国内が4,909億円と前年比41%増。エンタメ・ホビー カテゴリが成長し、自動車やカーパーツなどを将来の成長ドライバーと位置づけ強化している。

メルカリ事業の推移
メルカリ 小泉文明 社長兼COO

MAU(月間アクティブユーザー数)も前年比26%増の1,350万人。コアユーザーの20-30代女性だけでなく,50代以上が約6割伸びた。男性比率も増えたほか、メルペイのスタートにより、メルカリのMAU向上も図られたという。

機能面では、バーコード出品のカテゴリ強化やAIによる画像検索による検索機能向上、画像枚数の増加(4枚→10枚)などにより、プロダクトの使いやすさを向上。「すべてのものが売買されるマーケットプレイス」(メルカリ小泉社長)に向けた強化を続けるという。

投資フェーズにあり、大きな赤字の要因になっている米国でのメルカリ事業(メルカリUS)は、GMVが前年比70%増の3.6億ドルと前年の成長率(27%)を上回り急成長。MAUも200万を突破し、前年比で34%増となった。日本とUSをあわせたGMVは、5,307億円で前年比43.2%増。

勝負の年のメルカリ。メルペイはシナジー強化へ

2020年度は、メルカリJP、メルペイ、メルカリUSの3本柱を確立し、グロースを優先した投資を継続する「勝負の年」と位置づける。

メルカリJPにおいては、AIを活用した出品UXの向上のほか、メルカリ講習会など、リアル・オフラインでの施策を強化。また、小泉社長は、アントラーズ買収による認知の拡大や地域貢献など、「社会に受け入れられ、それを継続することが、メルカリのお客様を増やすことに繋がる」と説明した。

商品を撮影すると、AIで売れ筋の価格帯がわかる機能も計画

メルカリの潜在顧客数は3,600万人とし、国内においても拡大の余地は大きいとする。さらに、メルペイとのシナジーにより、MAUの拡大やGMVの増加、購入者数の増加、あと払いや与信の増大なども見込む。

20年度のメルペイは、先行投資からメルカリとのシナジーを生み出す「フェーズ2」と位置づけ、メルペイを使ったメルカリの出品拡大や、あと払いサービスの強化など予定している。

メルペイは「フェーズ2」に

メルペイの加盟店開拓は、オープン戦略として他事業者と協力。「ペイだけでは勝負するのではなく、メルカリの強みを生かし、独自のボジションを取っていく。メルカリのようなマーケットプレイスは、Winner takes All(勝者が総取り=トッププレーヤーが強い)だが、決済は乱立しやすい構造」とした。

なお、メルカリについては、今秋のヤフーによる「PayPayフリマ」の開始など、競争環境の激化も見込まれる。

小泉社長は、「マーケットプレイスは1者が勝利する市場。使い勝手をあげることでシェアをキープ、もしくは上げていく。PayPayフリマが出るまで、わからないが、メルカリの使い勝手と流通額を上げていくことが基本」とする。

メルカリUSの当面の目標は「月間GMV 100million USD(1億ドル)」。米国市場にあわせたローカライズにより、「売ること」を重視した展開とし、テレビCM等によるブランド認知を徐々に拡大している。この認知拡大を優先する方針は継続しながら、出品者向けの機能拡充を重視していく。

勝負の年に「社会の公器」を目指す

メルカリ山田会長は、海外、人材、テクノロジーへの重点投資とその成果について強調。AI分野などエンジニアを中心に40カ国から採用し、メルペイの垂直立ち上げを実現したこと、AI出品、検索強化などの成果、加えて、メルカリUSへの集中投資と事業拡大をアピールした。

山田会長は、2020年6月期を「勝負の年」と宣言。「メルペイとUSへのメルカリの加速度的成長に投資。その後の方向性を決める経営判断ができる年にしていきたい。グロースを優先とした投資を行ない、ミッション達成への強固な基盤を作る一年にする」と強調した。

その上で、「捨てるをなくす」「安心・安全で信頼される社会の公器」「世界中で使われるサービス」などメルカリの目指す姿を説明。「メルカリと聞いて、誰もが安心・安全と感じる会社を目指す。これからどう対応するかによって、1,000万人規模のサービスにとどまるのか、5,000万人あるいは世界で数億人規模のサービスになれるかが変わってくる。『社会の公器』とならなければ、これ以上成長することは難しい」とした。

また、7payの不正アクセス問題などで、決済サービスのセキュリティへの注目が集まる中、セキュリティを重視して事業を進めている点も強調。「メルペイの立ち上げが他社より後にあったのもその一環。ガイドライン等にも準拠していくほか、近日中に多要素認証も追加する」と、セキュリティ強化について説明した。