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カードとID基盤で攻める楽天のキャッシュレス。「楽天ペイ」アプリに集約
2019年8月6日 07:50
「クレジットカードナンバーワン」でFintechをリード
楽天が開催した自社イベント「Rakuten Optimism 2019」。代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏らが登壇した初日の講演では5Gがメインテーマとなっていたが、その中でキャッシュレス決済に関する話題も多く、同社の力の入れ具合が分かる構成になっていた。
楽天のキャッシュレス決済の主力はクレジットカードの楽天カードだ。楽天クレジットを2004年に立ち上げてからすでに15年近くの実績があり、会員数は1,700万になった。取扱高は約7.5兆円に達し、しかも前年比20%増と年々上昇を続けているそうだ。三木谷社長は、「名実ともに日本ナンバーワンになった。成長も高く、クレジットカードのレイヤーでは圧倒的ナンバーワン」と胸を張る。
楽天銀行は700万口座となり、「2~3年以内に1,000万口座を超える」(三木谷社長)見込み。2001年から発行を開始した楽天Edyは、利用可能個所は65万カ所、発行枚数は1億2,060万枚となり、「発行数もナンバーワン」(同)だ。
共通ポイントの楽天ポイントは、2014年10月以来、拡大を続けており、取扱流通金額は前年同期比98.3%増と急拡大。発行したポイントの総額は年間2,500億になり、累計で1兆2,000億以上に達しているという。
「楽天ペイ」アプリに機能集約し、顧客基盤を活用
これに最近はコード決済の「楽天ペイ」も用意。クレジットカード、電子マネー、QRコードといった幅広い決済方法をカバーする楽天だが、この決済方法レイヤーはオープン戦略を採用する。その一環が、来春から提供する楽天ペイアプリ内でのSuica発行機能だ。これによって楽天EdyとSuicaという2大電子マネーを一つのアプリでカバーできる。
楽天ペイアプリでSuicaチャージ可能に。JR東日本と楽天が連携
このオープン戦略は、決済手法のレイヤーでも採用されている。楽天EdyはFeliCaを使った非接触決済、楽天ペイは二次元コード、クレジットカードはICといった具合に複数をサポートし、さらに同イベント内でもデモ展示されていた顔認証、モバイルオーダーといった新技術のように、決済をどのように行なうか、という部分はこだわらないという。
完全キャッシュレスや顔認証でペイ。「Rakuten Optimism」
その代わり、IDとインタフェースを楽天が抑える、というのが同社の戦略だ。楽天会員は約1億の大台となり、それだけの利用者数を抱え、楽天ポイントによる囲い込みも強化している。楽天ペイメントの中村晃一社長によれば、国内消費額285兆円のうち、88兆円がポイントによるものだという。-->消費税増税にともなう国のポイント還元施策もあり、今後も「ポイント経済はさらに拡大する」と楽天ペイメントの中村晃一社長。
こうした会員数やポイント利用を背景に、共通したUIで決済を利用できる楽天ペイアプリを連携させることで、決済体験をよりスムーズにすることが狙い。決済を楽天ペイに集約することで、決済と共通ポイントの利用動向を踏まえた大量のデータを蓄積できるのも強みだ。
「現金のデータ分析は限定的」(中村社長)であり、キャッシュレス化によって支払いがデジタル化すると、決済情報や消費行動がデータ化できる、と中村社長は強調する。大量のデータを集めて分析することで、各種のマーケティングが可能になるという。
「マーケティングの進化は企業への競争力だけでなく、利用者にとっても快いアプローチ形成に役立つ」と中村社長。もちろん、そこにはデータの管理体制が必須で、個人情報やセキュリティ対策、各種法制度への対応などは、長年の金融事業でノウハウを蓄積。「体制や仕組み、ルールを作るだけでなく、データ活用にはフィロソフィが必要」(同)で、「やっていいこと」と「やってほしいこと」は異なることもある、と中村社長は指摘する。「ユーザーが喜ぶマーケティングこそサスティナブル」(同)。それを同社は目指す考えだ。