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インバウンド需要を取り込むQRコード決済連盟「VIA」。羽田空港で展開

日本におけるスマートフォンを使ったQRコード(バーコード)決済の導入は、増え続ける中国からのインバウンド需要を取り込むべく、家電量販店やドラッグストアなどが支付宝(Alipay)や微信支付(WeChat Pay)への対応を進めたことに始まる。後に国内ベンダーが次々とこの分野へと参入し、今日みられるような○○Payのブランドを冠するサービスが林立し、日々キャンペーン合戦を繰り広げる状況へとつながっている。

このQRコードやバーコードを使うモバイル決済の次の波は、中国を除く地域からやってくるインバウンド客の取り込みだ。

例えばPayPayではAlipayのほか、香港のAlipay HKや韓国Kakao Payのインバウンド利用に対応している。LINE PayについてもWeChat Pay以外に韓国Naver Payの受け入れを表明しており、東アジア地域での拡大を進めている。日本政府観光局の2019年6月時点の最新データによれば、中国からの訪日客が増えている一方で、韓国、台湾、香港からの訪日客は減少あるいは足踏みを続けている。

他方でタイやシンガポールからの訪日客は大幅に伸びており、インバウンド需要における東南アジアの存在感が高まりつつある。こうしたなかスタートするのが、東南アジアを中心にしたモバイル決済連合「VIA」の日本国内向けサービスだ。東南アジア地域の複数のモバイル決済事業者が相互接続する越境決済サービスであり、まずはインバウンド対応を皮切りに日本国内での広域展開を目指す。

7月25日に羽田空港で開催された国内サービス開始会見での一幕。左からネットスターズ代表取締役社長の李剛氏、Singtel International Groupビジネス担当バイスプレジデントSoon Sze Meng氏、日本空港ビルディング上席専務執行役員旅客ターミナル運営本部長の岩松孝昭氏、国土交通省東京交通局長の柏木隆久氏

サービス開始から1年経たずして4,000万人規模の巨大ネットワークに

「VIA(ヴィア)」はシンガポールの通信会社Singtelを中心に結成されたアライアンスで、主に東南アジア地域の決済サービス事業者や金融機関を取り込みつつ拡大を進めている。VIAに対応したモバイル決済サービスであれば、アライアンスを通じて相互に加盟店経由での決済が可能な仕組みで、現在はSingtelの「Dash」とタイのAIS(Advanced Info Service)が提供する「GLOBAL Pay」がVIAブランドの加盟店で相互利用できるようになっている。VIAのページでの説明によれば、インドネシアTelkomselのLinkAjaやマレーシアのBoostなどがモバイル決済サービスとして間もなく利用可能になるほか、タイのカシコン銀行が提供する「K Plus」、フィリピンGlobeの「GCash」、インドAirtelのAirtel Payments Bankなども順次参加予定となっている。

Singtel International Groupビジネス担当バイスプレジデントSoon Sze Meng氏によれば、「2018年10月にスタートしたばかりのVIAだが、すでに4,000万人以上の利用者を抱え、210万の加盟店を持つ巨大ネットワークに急成長している」ということで、もともと労働人口が全体に若く豊富で、消費意欲も旺盛な東南アジア地域の潜在性を考えれば、日本でのインバウンド効果に期待できる部分も大きいと予想できる。

VIAの拡大について説明するSingtel International Groupビジネス担当バイスプレジデントSoon Sze Meng氏
Singtelはシンガポールだけでなく、資本関係にある携帯キャリアを含めて全世界に6億9,000万のユーザーを抱えるという
VIAのネットワーク。DashとGLOBAL Pay以外のサービスはまだ連携途上にあり、2019年内の開始を目指すとのこと

「VIA」の国内導入第1弾となるのは羽田空港で、国内線ターミナル7店舗、国際線ターミナル27店舗の計34店舗でのスタートとなる。

国内代理店となっているのはWeChat Payを最初期に日本へと持ち込んだネットスターズで、同社がゲートウェイ事業者としてVIAを導入した加盟店に接続サービスを提供する。国内最大の空港というのがVIAの日本導入第1弾として羽田が選ばれた理由の1つだが、今後は国際空港だけでなく、インバウンド需要の大きい旅行者が訪問する可能性の高い日本各地の観光地などを中心に加盟店開拓を進めていく計画だという。

またVIAに参加する日本国内のモバイル決済事業者とも随時交渉を進めており、日本の関係省庁などの協力を仰ぎつつ慎重に連携していきたいと述べている。

日本におけるVIA導入効果がどれだけ期待できるのか

なお羽田空港内の導入店舗は土産物屋や制限エリアの免税ブランド店などが中心で、飲食店などはまだ対象ではなかった。加盟店にはSunmi製のハンディ端末が用意され、これで利用者がスマートフォンで提示したQRコードを読み取る形で決済が行なわれる。

このほか、POS連動を想定してバーコードを読み取るアプリケーション環境なども用意されており、ハンディ端末ではなくPOS内で処理したい加盟店のニーズに応える。なお、現状のVIAでは加盟店側がQRコードを提示する、いわゆるMPM方式の決済には対応していない。

羽田空港国際線ターミナル4階の土産物屋にあるVIAのアクセプタンスマーク
9月いっぱいまでの期間限定でオープンしている東京ばな奈とAlipayのコラボショップでもVIAに対応。クレジットカードのみカウンターでの処理が必要だが、QRコードと電子マネーについては無人KIOSKでのチェックアウトが可能
加盟店向けに提供されるSunmiのハンディ端末。カメラで利用者のスマートフォンのQRコードを読み取る