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AI企業LINE、無料カーナビやレストラン予約AIを披露。検索に再参入

LINEは27日、経営戦略発表会「LINE CONFERENCE 2019」を舞浜アンフィシアターで開催した。AI分野における新製品として「LINEカーナビ」「LINE LINE BRAIN」などを発表した。また、かつて手がけていた検索事業への再挑戦も表明した。

LINEはAI企業

新たな無料カーナビアプリ登場。Clovaの音声ガイダンスでLINE送信

LINEは今回のカンファレンスにおいて新たな企業ビジョン「Life on LINE」を発表。ユーザーのライフスタイルにイノベーションを起こすべく、24時間365日に渡ってユーザーの生活すべてをサポートする“ライフインフラ”の実現を目指して活動していくとしている。具体的な重点戦略は3つ。「offline」「Fintech」に続く3つめが「AI」で、LINEではAI開発人材を1,000人規模で擁しているという。

AI関連製品のプレゼンテーションを行なう舛田淳 取締役 CSMO

AI分野のプレゼンテーションを行なったのは舛田淳 取締役 CSMO。LINEが手がけるAI関連の代表的プロダクトには「Clova」がある。自然音声入力に対応したAIアシスタントとして、同社製スマートスピーカーなどに採用されているが、これを今後拡充していく。

ホテルにおけるClova導入の第一弾として、アールエヌティーホテルズおよびブリッジ・モーション・トゥモローと協業。リッチモンドホテルにおけるClova対応デバイスの導入などを検討していく。またバーチャルホームロボットを開発するGateboxとも協力し、オリジナルキャラクター「逢妻ヒカリ」の会話パターン強化にClovaが使われることも正式発表された。

そして9月以降には「LINEカーナビ」をリリースする。昨年のLINE CONFERENCEにてトヨタ自動車との提携がすでに発表されているが、その新たな成果ともいえるプロダクトで、ナビゲーション基盤はトヨタ、一方の音声インターフェイスにはClovaが用いられている。

LINEカーナビ

実際に走行中の車両データをもとにした旅程時間予測や、いち早い地図更新など、ネットワーク接続型カーナビの利点を多数盛り込んだ。なお、LINEカーナビの利用は無料。アプリ単体でも動作するが、Smart Device Link(SDL)対応の車載システムとも連動させられる。

AI技術を外販売「LINE BRAIN」。「AIによる電話予約受付」も

LINEが独自開発したAI技術について、今後は外部の企業に対する販売も行なっていく。「今まではAIを自社サービスの改善ために研究・開発していたが、これを外部の企業にも公開。LINEはAIカンパニーからAIソリューションカンパニーへと変わる」(舛田氏)

6月27日付では、スカパーJSAT・LINE・伊藤忠商事の3社が次世代型テレビの共同開発に向けて合意書を締結した。音声入力による操作のほか、表示される映像を解析して商品情報を調べるなど、現在のスマートテレビよりさらに踏み込んだ機能の実現を目指すという。

LINEでは、こうしたAI技術の外部展開を「LINE BRAIN」のブランドで事業展開していく。日本語への最適化を特徴としているが、すでに実用化段階へと達しているチャットボット、OCR(文字認識)、SPEECH TO TEXT(音声認識)を含めた3製品の販売が7月にもスタートする予定。なお音声認識技術のさらなる改良に向け、米Dialpadとの間で共同開発に向けた覚え書きを締結。今後、Dialpadから音声データの提供を受ける。

LINE BRAIN

また、LINEではより将来に向けた挑戦的な開発プロジェクト「DUET」も進めている。「Google Duplex」に代表されるような音声AIによる電話自動応対を実現しようというのが狙いで、実際に会場でデモンストレーションをした。

舛田氏が電話でレストランの予約をするというものだが、名前・日程・人数をAIが正確に聞き取りつつ、「やっぱりダメだから別の日に変えて」というとっさの言い直しにもAIが見事対応してみせていた。

ただしDUETの実用化時期などはまだまだ未定という。「今のところ受け付けられるのは(レストランの)新規予約と予約変更、かろうじてキャンセル手続きくらい。ごく限定したシチュエーションだけを徹底的に学習させたからできた」と舛田氏はタネを明かしたが、とはいえ、人手不足に悩む飲食店などにとっては、期待が集まる用途だろう。

AIが電話で応対してくれる「DUET」プロジェクトに取り組む
音声AIの生デモンストレーションを行なう舛田氏

「LINE Search」で検索サービス再参入

そして舛田氏がプレゼンの最後、満を持して発表したのが検索サービスへの再参入だ。LINE誕生前の2009年、舛田氏らは当時の「NAVER検索」の開発に勤しんでいたが、事業的には成功せず、サービスを打ち切った過去がある。

しかし「Life on LINE」のビジョンを掲げる以上、検索サービスを避けては通れないとの判断。今回新たに、名称を「LINE Search」と定め、検索サービスへ再挑戦すると舛田氏は宣言した。

LINEが“検索”再参入

7月にもサービスはスタートする予定で、形態としては「統合型検索」となる。1つのキーワードを1回指定するだけで、LINEのトーク内容、LINE NEWS、LINEマンガ LINE MUSICなど統合して検索してくれる。

「LINE Search」は、トーク内容からニュース記事までを一括検索してくれる「統合型検索」

また、いわゆる“インフルエンサー”を探す機能も備える。舛田氏によると、若年世代の検索行動はウェブで情報を直接検索するのではなく、SNSなどで“ある分野の情報に詳しい人”を見つけ、その発言に注目するという方向性が顕著なのだという。これに応えるための検索機能という訳だ。

これを発展させ、専門家に直接質問するためのプラットフォーム「LINE ASK me」も新設する。占いや各種相談の機能は現在もあるが、9月以降、パートナーにウェブサイト「弁護士ドットコム」を加え、法律相談もできるようにする。7月提供予定の飲食店・施設レビューアプリ「LINE STEP」についても、やはりLINE Searchと連携させる。

LINE Searchは周辺サービスと連携