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ソニーミュージック、音楽権利情報処理にAWSのブロックチェーン技術を採用
2019年6月11日 18:06
ソニーミュージックは、ブロックチェーン技術を使った音楽権利情報処理システム基盤を構築し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)によるAmazon Managed Blockchainを音楽業界として初採用した。
ソニーグループは、ブロックチェーン基盤を活用したデジタルコンテンツの権利情報処理システムを2018年10月に発表しているが、今回のシステムは、音楽クリエイターの権利管理機能を追加し、クリエイターの権利情報処理に関する作業効率と信頼性を高めたという。
具体的には、共同制作など、複数クリエイター間の合意をブロックチェーン上に記録。それらの記録を利用して著作権登録の効率化を図る。今回の取り組みは、ソニーミュージック内部のものだが、今後、他の音楽レーベルや著作権管理団体などの参加を呼びかけていく。
ソニーグループでは、AIなどの技術や、音楽制作、権利情報処理のノウハウを活用し、創作活動を支援するプラットフォーム「Soundmain」のブランド名で展開しており、今回の取り組みもその一環。
音楽制作においては、デジタル制作の環境や発表の場が広がったことで、クリエイターのコンテンツ権利処理業務の複雑化により、創作に集中できないといいった課題があるという。今回のシステムで権利処理の時間を短縮。ソニーミュージックアクシス 執行役員 情報システムグループの佐藤亘宏 本部長は「クリエイターの時間を開放することが狙い」と語る。
ソニーミュージックグループでは、サービスのクラウド化を進めており、2012年頃からAWSを活用。現在は、グループ内の音楽配信サービスやECサイト、アーティストホームページなどのBtoCサービスは、ほぼAWS上で構築されているという。こうした経緯もあり、新たな挑戦として、国内で初めてManaged Blockchainを導入。履歴の削除や改ざんができないという、ブロックチェーンの特性を活用し、著作権処理システムを構築した。
また、費用面でもAWSで最初から自社で開発(スクラッチ開発)すると、初期費用が1,500万円以上、ランニングコストも20万円/月以上だが、AWSマネージドサービスでは、初期費用100万円、月額5万円程度で運用できると説明。採用の理由として、「セキュリティ、可用性、柔軟性」とともに費用面でのメリットも強調した。
なお、Amazon Managed Blockchainでは、Hyperledger FabricとEthereumの2つのフレームワークをサポートしているが、ソニーミュージックのシステムは、Fabricを採用する。
AWSのビッグデータ/データレイク/ブロックチェーン担当ゼネラルマネージャー ラフール・パターク氏は、ヘルスケア業界や製造業、デジタルコンテンツ業界などでのブロックチェーン活用事例を紹介。ヘルスケアにおいては、カルテの電子化管理や患者の病歴などを、アクセス履歴や変更履歴とともに管理できること、製造業においてはサプライチェーンのどの段階で在庫が逼迫しているか、誰が管理しているか、などの確認を可能とする。
AWSの活用事例としては、シンガポール証券取引所における、支払いや証券の精算・決済での検討や、ネスレの食品調達時に「どこから来たのか」といった情報をトレースするなどの利用がある。その最新事例として、音楽権利処理の仕組みとして、ソニーミュージックが採用。用途に応じたブロックチェーン・サービスを提供していくことを強調した。