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ワコム、「VRスケッチ」や「AR空間でのペン活用」などを提案 #CES2019

ペンタブレットなどを展開するワコムは、CES 2019において、VRおよびARでのペン活用に関するデモンストレーションを行なった。同社は2018年以降、ペン技術の新たな活用シーンを模索している。VR・ARへの対応はその一環で、VR・AR技術を持つパートナーと共同で開発を進めているものだ。

2Dではペンで、VRではブラシで「3Dモデル」を直接編集

展示されたデモは2つある。

1つ目は、Gravity Sketchと共同開発している「VRでのスケッチソリューション」だ。

Gravity SketchはVR空間内でハンドコントローラーを使い、3Dのオブジェクトや映像を描くソリューション。VR用HMDであるHTCのViveをターゲットに開発されている。

Gravity SketchはVR用HMDを使い、3D空間内で絵を描くためのツール。すでに出荷済みのVR版は、HMD+ハンドコントローラーで操作する

すでに発売済みのGravity SketchはVR空間専用だが、これまでのやり方に慣れたデザイナーにはハードルも高い。そこで、一般的なペンタブレットを使って2Dでデザインワークをしつつ、それを簡単にVRに持ち込み、さらにはVRと2Dで同時作業をしてコラボレーションすることを狙う。

デモでは、ワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq」とHTC Viveを併用し、Cintiqで2Dによる作業を行ないつつ、それがViveでは3Dのデータになり、同時に同じデータを見ながら作業できるようになっていた。

ワコムの液晶ペンタブレット「Cintiq」で2Dから絵を描くことも可能に
2Dで絵を描きつつ、HMDをかぶればそれを3D空間で編集・追記できる。作業は一人で行なう必要はなく、一人はタブレット・もう一人はHMD、といった同時作業も可能

またVR側でも、ワコムが作ったペンを差し込む専用コントローラーを使うことで、よりピンポイントで直感的な描画を実現することが可能になる。

ワコムが開発中のVR用ハンドコントローラー。ワコムのペンを差し込み、それを「VR空間での筆先」として描くことが可能になる。イメージとしてはエアブラシを握っているのに近い

ワコムとのコラボレーションによる「2D・3D同居版」のGravity Sketchは、2019年後半に製品化を予定している。

Magic Leap Oneを使い「AR空間でペン編集」

2つめのデモが、AR用ヘッドマウントデバイスである「Magic Leap One」でのデモだ。このデモは、Magic Leap Oneの開発元であるMagic Leapとの共同開発となっている。

Magic Leap Oneは、現実にCGを重ねて表示する、いわゆる「ARグラス」。ライバルはマイクロソフトのHoloLensに当たるが、グラス部とコンピュータ部は別体になっており、ケーブルで接続されている。発表時期がHoloLensよりも一年以上後発であることもあって、グラフィックの描画性能や位置合わせ、視野角などでは優位になっており、現状、もっとも高性能なARグラスのひとつ、といえる。

Magic Leap One。2018年8月から、アメリカでは開発者向けバージョンが発売されている

Magic Leap Oneで行なわれたのは、同一のモデルを複数の利用者で見ながら編集する、というものだ。その時、通常のMagic Leap Oneでは「手」そのものを使うのだが、ワコムのデモでは、Bluetooth接続されたワコムのペンタブレット「Intuos Pro」を使い、ペンで作業が行なえるのがポイントだ。

ペンであるために細かな部分に高精度に書き込みもできるし、現実に近い感覚になって直感的だ。

Magic Leap Oneをかぶり、手元にはワコムのペンタブレット「Intuos Pro」をもって作業。AR空間内の物体をペンで動かし、実際に線などを書き込むことができる

ARの場合、描いた物体の大きさを変え、現実のものと比べながら作業できるのもポイントだ。例えばスニーカーを描いている時には、描画中は大きく拡大して作業しつつ、途中で靴のサイズに小さくし、自分の足を並べて感触を確かめつつ作業する……といったことができるわけだ。

なぜ足を見ているのかというと、実はAR空間では、筆者の足の隣に「先ほどまで編集していた、3Dモデルのスニーカー」が置かれているから。ARでは、現実のものとサイズを合わせて、見比べながら編集ができるのがポイントだ

当面同社は密接な協力関係を保ち、AR上でのソリューションを共同開発していく予定だという。