ニュース

家電やクルマへ広がるAlexa音声制御。CESに登場したAmazonの戦略とGoogle対抗

米Amazonは、今年のCESにて、Alexa関連の大きな独自ブースを用意した。ライバルであるGoogleも屋外に独自ブースを展開、広告などで積極策に出ていることから、CES会場は、「家電関連でのAmazonとGoogleの躍進」を強く感じる状況にあった、といっていい。

CESでのAlexaブース。Amazonが大きなブースを設けてAlexaをCESでアピールするのは初めてのことだ

Amazon自身は、Alexaデバイスの拡大や、現状の競合との状況をどう考えているのだろうか? Alexa Devices バイス・プレジデントのミリアム・ダニエル氏に話を聞いた。

Alexa Devices バイス・プレジデントのミリアム・ダニエル氏(写真は昨年10月に来日した時のもの)

スピーカーから多様な機器へ搭載が広がるAlexa

今年、AmazonはAlexaのブースを用意した。この狙いはなんだろうか? ダニエル氏のコメントはシンプルなものだった。

ダニエル:Alexaデバイスはとにかくバリエーションが多くなりました。様々なデバイスに組み込まれるようになり、使われ方も非常に広くなっています。

例えば、レノボが発表したタブレットが挙げられます。あの製品は、台から外すと普通のAndroidタブレットですが、台に乗せるとEcho Showのような使い方が出来るAlexaデバイスになります。

レノボがCESで発表した「Lenovo Smart Tablet P10」。Androidタブレットだが、Alexa搭載で、台座に載せるとスマートディスプレイのように使える

特に、自動車対応の「Echo Auto」は重要です。コネクテッドカーは増えつつありますが、何百万台・何千万台という自動車が、まだそのような状況にありません。しかし、「Echo Auto」はその状況を解決できます。アメリカでは限定的なテストに向けた予約が開始され、招待制での販売が行なわれています。その予約リストには、すでに100万以上のリクエストが寄せられています。

また、多くの家電製品がAlexa対応になっていますし、Alexa for Businessのような、オフィスで使うものも登場しました。PCにAlexaを組み込んだものもありますね。マイクロソフトの「コルタナ」とも連動しています。すでに150以上の異なるデバイスに対応しており、Alexaと連携する家電製品は800を超えます。

そうしたものをみなさんにお見せするために、今回はブースを用意したんです。

Alexaを組み込んだスマートグラス「North Focals」
「Alexa for Business」を組み込んだ会議室向けのスマートスピーカーであるポリコムの「Trio 8500」。家庭以外にも広がりはじめている
CES会場には、Alexa搭載デバイスのバリエーションをアピールするこんな広告も

確かに、Alexaのブースには多彩な製品が並べられていた。スマートスピーカーはもちろん、会議室用のスピーカーにAlexaを組み込んだもの、水が切れると自動的に補給の注文をするウォーターサーバーなど、あらゆる家電に広がる勢いだ。スマートグラスにもAlexaは組み込まれ、家電のユーザーインターフェースのひとつになりつつある。

一方で、CESの主催者であるCTA(全米民生技術協会)の予測によれば、2019年、スマートスピーカー市場の伸びは7%に減速する。すなわち、すでにアメリカの家庭には行き渡りつつあるのだ。この点について、Amazonはどう考えているのだろうか?

ダニエル:CTAの予測についてはまったく問題視していません。なぜなら、Alexaにとって(スマートスピーカーの)Echoは一部を構成する要素にすぎないからです。Alexaは色々な機器に組み込まれはじめています。テレビやオーディオ機器にもです。そうやって広がっていけば、Echoのようなスマートスピーカーが占める割合は小さくなっていきます。しかし、それは必然なのです。

「一度書けばどこでも動く」Skill、ライバルとの競合は「健全な状態」

Alexaの活用される場所として、現在特に注目されているのがディスプレイを備えたデバイスだ。Echo Showのようなスマートディスプレイはもちろんのこと、テレビも重要なデバイスになっている。

ダニエル:昨年秋、「Alexa Presentation Language」を公開しました。これを使えば、音声での指示を前提に、ディスプレイ表示を伴ったアプリケーションが開発できます。レノボのタブレットやソニーのテレビには、このSDKが組み込まれています。すでに多数のテレビメーカーと話し合いを進めており、ソニーだけに限った話ではありません。ただし、ソニーとは、非常に早い時期から「テレビに求められる機能はなにか」という部分について話し合いを進めてきました。ですので、特に早期から導入できた、ということなんです。

Amazonが、特に差別化要因としているのが、音声で利用できるアプリである「Skill」の数だ。ライバルであるGoogleの音声アシスタントに対し、AlexaはSkillの量で勝っている。全世界では5万を超えるSkillがすでにあり、開発も活発的だ。なぜSkill開発が活発なのか? その問いに、ダニエル氏はこう答えた。

ダニエル:多くの開発者がSkillを開発したい、と思う理由は、一度作れば多数のデバイスでそのまま動作するからです。スマートフォンの場合、iPhoneとAndroidで作りなおさないといけませんよね? しかしSkillなら、大量に登場するデバイス向けに、作り直すことなくそのまま使えます。

CES会場にも多数のAlexa対応機器があった。Amazon側としては、それらのうち、どれが多く使われていると把握しているのだろうか? そして、どこから広まっていくと考えているのだろうか?

ダニエル:やはり、一番使われているのは照明です。誰にでもわかりやすいですからね(笑)。その次は、スマートプラグ(電源の状況をコントロールできる電源タップ)でしょうか。多くのAlexa非対応の機器をAlexa対応に変えることができます。

特にスマートプラグについては、昨年投入した「フラストレーションフリーセットアップ」が重要だと考えています。過去のスマートプラグは設定が大変でしたが、「フラストレーションフリーセットアップ」の導入された機器では、パッケージを開けて電源に差し込むだけで設定が終了します。そういう風に、簡単に設定が終わることが、スマートホーム機器にとっては重要な要素だと考えています。

一方、CES会場では、GoogleがGoogleアシスタントを、AmazonがAlexaを強く推す、という競合がはっきりと現れていた。また、多くの「対応家電」では、複数の音声アシスタントに対応するのが基本になっている。こうした状況を、どう見ているのだろうか?

LGは発表会で、GoogleアシスタントとAlexaの両対応をアピール。ソニーも同様だった。「音声アシスタント複数対応」は家電メーカーの基本路線になっている
CES会場では、Googleもアピールに躍起。昨年までサムスンの広告があったサウスホール正面の広告も、Googleに取って代わられた

ダニエル:ライバルとの競合は、健全な状況だと思います。音声ユーザーインターフェースの世界はまだまだ初期段階であり、複数のものが併存し、競争するのが自然な状況です。対応家電において複数の音声アシスタントが使えるのも同様です。要は、PCにおいて複数のウェブブラウザーが搭載されていて、選べる状態であることと同じ。今は、選べないよりは選べる方がいいはずです。その中で、Alexaを選んでくれる方が増えるよう努力します。