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レジなしストア「Amazon Go」を体験。狙いは「省力化」じゃなかった!
2018年9月21日 07:30
シアトル、といえばAmazonのお膝元。筆者は現在、Amazon本社を取材中だ。別途AV Watchで掲載した、新しい「Echo」シリーズの発表会が目的なのだが、Amazon本社の中にはなかなか入れない。これはめったにない機会である。
そこで、Amazon本社についてもいくつか記事をお届けしたいと思っている。
まず一本目は、Amazonが作った「レジ無し店舗」こと「Amazon Go」の体験記だ。
実は、この記事は発表会の前日に書いている。取材のためにシアトル入りした直後にAmazon Goに行き、実際に「その日の昼食」を買ってみた。
未来の店舗と言われるAmazon Goの実力はいかに。
アプリで入店、ランチボックスを売るAmazon Go
Amazon Goは、米Amazonがアメリカ国内で展開中の「食品小売店」である。要は、日本でいえばコンビニのようなもの。ただ、出来合いの食品は意外と少なく、店舗や関係するセントラルキッチンで調理した食品を提供する。コンビニとお弁当屋さんの間……という感じの店だ。
2016年末、シアトルに「ベータ版」として社員と関係者のみが入れる店舗をオープンしていたが、2018年1月22日、「ベータ」がはずれ、一般客の利用が可能になった。その後店舗数は増え、現在はシアトルに3店舗、シカゴに1店舗がオープンしている。今後さらにイッキに増える……との噂もある。
店にはレジがない。入り口には駅の改札のようなゲートはあるが、いわゆる「レジ待ち」の人々はいない。そのためか、店には人々が頻繁に出入りしていた。時間は12時を回ったばかりで、まさにランチタイム。他の店には行列ができていたりするのだが、Amazon Goにはそれがないのが印象的だ。
といってももちろん、入るには条件がある。米Amazonのアカウントを持っていて、スマホに「Amazon Go」アプリを入れていることだ。入る時にこのアプリで個人を認証し、販売金額は米Amazonのアカウントに紐付けられたクレジットカードに請求される。
店に入る時には、ゲートにアプリが表示する、画像のような二次元バーコードをかざすだけだ。ちなみに二次元バーコードは常時変化しており、スクリーンショットを記録してもそれでは入れないのでご注意を。
家族・友人同士で入る時には、入る人の回数だけ、二次元バーコードの認証と「ゲートくぐり」を繰り返せばいい。
買い物は簡単、中で「選ぶ」だけ
では、実際にゲートをくぐってみよう。自動改札の容量で二次元バーコードをゲートのセンサーにかざすと、なんの問題もなく中に入れた。写真撮影も自由に行なえる。
中は意外なほど「普通」だ。サンドイッチやランチボックスが多数並んでいる。店舗をでたところに小さな「イートインスペース」があり、そこにある電子レンジでランチボックスを温めることも可能だ。
コンビニのようなものなので、お酒やちょっとした整髪料などもある。だが、そちらはメインではなく、あくまで「サンドイッチやランチボックスを売る」のがメインだ。まあ、お土産用なのか、マグカップまで売っているのはご愛嬌。
買い方はとてもシンプル。棚から取るだけだ。いらない、と思ったら戻せばいい。カバンに入れてもいい。「レジに通すためにカゴに入れておく」過程がないだけなのだ。
「間違って会計されないか」が気になって、いろいろ商品を出し入れしたり、追加したりしてみたのだが、結果的には間違いはなかった。
というより、ここで重要なことに気づく。
「レジなし」だが、買い物のプロセスや楽しさは一切変わっていない、ということだ。「買うか止めるか迷う」ことが、買い物の醍醐味。そこはレジなしであろうがなかろうが同じだ。そのうち、「ここがレジなし店」だったことを忘れてしまう。
天井にはカメラなどのセンサーがあるようで、これを使って商品の授受を把握している。このほか、ICタグも補完的に使っているようだが、店舗で買い物をするだけだと、仕組みはあまり気にならない。
唯一、「支払い」の形態が違うのが「バッグ」だ。バッグは追加料金が必要なのだが、こちらはセンサーでは検知できないらしい。バッグをもらっていくなら、アプリ上で追加ボタンを「タップ」する必要がある。だが実際には、バッグをもらってもアプリをタップしていない人が多かったようにも思えた……。
あとは店から出るだけだ。ゲートをそのまま素通りしよう。何も言われない。音すら鳴らない。もちろん、行列もない。
購入したのは、お昼ご飯のカレーとサラダ代わりの野菜スティックに、おやつ。トータルで15ドルほどだった。
店舗の隣は公園になっている。実はここ、Amazon本社のすぐ裏なのだ。Amazon社員なのかそうでないのか、近くのオフィスで働いている人々が、思い思いに食事を楽しんでいた。筆者もせっかくなので、ここで食べていった。
ちなみに、味は「そこそこ」。特別すごい、とも思わなかったが、不味くもない。「安定的にこの味のものがすぐ買えるなら、それはそれでいいかな」と感じた。そこも、コンビニっぽい。
そうこうするうちに、アプリに通知が届いた。買ったものの決済が終わったのだ。30分ほど時間がかかっただろうか。購入内容にはもちろん間違いはなかったが、アプリ内からクレームを入れて返金処理をすることもできる。
Amazon Goは「無人コンビニ」じゃない! 狙いは「快適な買い物」
こうした「レジなし」店舗は日本でも研究されている。そこでは「店員を減らして省力化」という言葉が踊る。
だが、Amazon Goを使ってみて、筆者は逆の感想を持った。Amazon Goは、決して「無人店舗」じゃないのだ。
別に、開店したばかりだからではない。商品である食品の説明や調理、入れ替えなどに相応の人数が働いていた。日本のコンビニでは、店員の仕事は「レジ」という印象が強い。だが、Amazon Goで店員がやっていたのは、「より快適にランチを買う助け」に近い。
Amazon Goにレジがないのは、人を減らすためでなく「行列をなくす」ためであり「快適に買ってもらう」ためなのだ。実店舗を体験すると、そのことがはっきりとわかる。
日本でも「レジなし」コンビニの開発は進んでいる。中国には「無人コンビニ」が結構あるという。でも、そこに「より快適な買い物」という観点はあるだろうか。レジをなくすだけならセルフレジでよく、それならもうある。
いかに買い物を楽に快適にし、その結果、店の利用回数・購入回数をあげるか。それが、Amazon Goの本質だ。
日本のレジなしコンビニも、立脚点を間違えずに開発してくれるといいのだが。