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親が元気なうちにスマホへの乗り換えを勧めるべきかもしれない
毎年登場するスマホの最新機種にまったく興味を示さず、かといってケータイ(ガラケー、フィーチャーフォン)はそれなりに使う人々──そう、シニア世代にはかたくなにケータイから乗り換えようとしない層がかなりいる。いくらスマホの便利さを伝えても、「いまさら操作を覚えられない」「ケータイで電話とメールができるし、特に困ってない」と言われて拒否されたりする。
しかし、一昔前のケータイとスマホではもはや情報のやりとりがままならない昨今。メールに写真を添付しても、ケータイのファイルサイズ制限に引っかかって閲覧できないのは序の口。最近は家族内での連絡すらLINEやFacebookでするのが当たり前なわけで、ことさらに仲間外れにするつもりはなくても、日々のやりとりや連絡、情報の和からどうしてもケータイが漏れてしまうし、一人置いていかれたことを後から知って機嫌が悪くなるのがさらにめんどくさい。はやくスマホにしてほしい、が子供たちの総意なのだが、なぜか子供が勧めてもスマホにしてくれないのが老齢の親である。
ちなみに田舎に住む私の母親からは、「これ、ネットで売ってるんだって。よくわからないから代わりに買ってくれない?」とときどき電話が来る。車で30分かかるスーパーにしか欲しいコーヒーがなく、買いに行くのが面倒で今週はコーヒーが飲めてないとか、米袋が重くて運ぶのが大変だとか、私からすれば「そういえば昔そんなこともあったな」という生活を今もしているのだという。実家にはパソコンもあるんだが、年を取るとパソコンを起動してページを開いて……という作業が面倒になってくるそうだ。確かに、自分がインフルエンザで寝込んでいたときを思い出すと、パソコンで作業する気力はなくてもスマホでメールチェックとデリバリーの注文はできた。感覚としてはそれに近いのかもしれない。
そうすると、親がこの先、車の運転が面倒になってきたらどうなるんだろうか。「○○買って送って」という電話が毎日かかってくる、そんな未来が簡単に想像できて、やや暗い気持ちになった。やはり、元気な今のうちに親にはスマホにしていただき、ネット通販で簡単に生活必需品を簡単に買えるようになってもらわないと、本人だけではなく、この先こちらも大変なんじゃないか、と気がついた。
また、今回、シニア向けのスマホやタブレットの講習会を催しているNPO法人「竹箒の会」副理事長の橋詰信子さんにも話を聞くことができたのだが、橋詰さんはシニアにスマホを勧める理由について「これからはスマホが利用できるかどうかではっきりと生活の質が変わる時代が来るため」とし、「情報入手先が新聞⇒テレビ⇒スマホとなっていくのでは。また情報の入手だけでなく、YouTubeで映像や音楽を楽しむという側面も大きくなるほか、いずれ買い物、各種申込み分野にも浸透していくのでは」と話す。
そう、親のスマホ化は、実は子供世代の負担軽減という意味でも、本人の生活の質(QOL)の維持という意味でも、この先重要になってきそうなのだ。
とはいえ、上述の通り、普通にスマホを勧めてもなかなか首を縦に振ってくれないのが高齢の両親。一体「何」を「どのように」勧めて、実際にどのように導入していくのが良いのだろうか。
最大の懸念点?な「子供のサポセン化」を防ぐ「らくらくスマートフォン4」
親のスマホ化を考えるときに、自然と思い出されるのが実家へのインターネット導入とパソコン設置の記憶。「インターネットがしたい」と言われ、回線導入手続き、パソコンのセットアップ、操作方法のレクチャーなど、何度も実家に帰らされた経験は誰しもあると思う。あれを今度はスマホでまたやるのかと思うと、やや気後れする気持ちも出てくるかもしれない。
そう、親はなぜか何でも親切に答えてくれるサポートになかなか電話しない。「自動応答の途中で呼び出し先の番号を選ぶところが面倒くさい」という人もいた。こちらは悪くないのに、ややキレ気味で電話してこられる機会は、子供側としてもなるべく減らしたい。自分でも操作に迷うときがあるスマホのサポートは考えるだけでも大変そうだ。
親に使ってもらいたいスマートフォンとしては、機能はスマホだけれど、使いなれたケータイのようにも使えるものがいい。となると、ドコモから発売の「らくらくスマートフォン」が子供側としてもやはり候補になる。現行機はすでに第4世代目の「らくらくスマートフォン4 F-04J」だ。
一般的なスマートフォンとは違う、よく使う機能だけに絞ったオリジナルのトップ画面が表示され、文字サイズも非常に大きい。また操作方法も、スマホのように軽いタッチではなく、ケータイの「ボタンをしっかり押す」操作方法で操作でき、誤操作も少ないという特長がある(通常のタッチ操作にも変更できる)。橋詰さんによれば「シニア層はまだまだ基本のタップ等の操作がうまくいかない人が多い」とのことで、らくらくスマートフォン4のタッチ操作は実際に使う人からも好評のようだ。
また、通話の面でも「らくらくスマートフォン4」の場合は人混みでも聞きやすいほか、相手の声がゆっくり聞こえたり、年齢に合わせて音声を自動調整するなど、音声へのこだわりがあってまだまだ通話の多い親世代に勧めやすい。
サポート面では、画面の「らくらくホンセンター」ボタンを押すと、年中無休で午前9時から午後8時までちゃんと直接オペレーターが出てくれる専用のサポート電話につながる。正直、子供に聞かれてもわからないことも結構起こるので、この機会に「らくらくホンセンター」ボタンを使うことに慣れてもらった方が後々便利だ。
それでもわからなければ、実はシニア世代的には、ショップ店頭に質問しに行くのがもっとも手っ取り早い手段だ。「らくらくスマートフォン4」を取り扱うドコモショップなら店舗数が多いのがメリットだろう。私の親は、操作でわからなくなるとすぐドコモショップに行くそうだが、操作方法や設定方法だけを聞きに行ってもいつも丁寧に対応してくれているそうだ。
私たちの側としても、うまく答えられない内容は「らくらくホンセンターに聞いて、それでもわからなければドコモショップに聞いて」と言えば良い、という安心感がある。シニア側としても、スマホが得意な我々世代に質問しても「自分が何がわからないのか、わかってもらえない」という気持ちに往々としてなり、できればあまり聞きたくない、という人も多いらしい。お互いのためにも、富士通やドコモのサポートをフル活用するのが良さそうだ。
シニアにスマホを勧めるために、スマホを使いたい(使う)シニアに色々聞いた
さて、では実際、どのように乗り換えてもらうかだが、最初に説明した通り、無理やり勧めても暖簾に腕押し、意外にハードルが高いことが多い。
そこで今回は「竹箒の会」によるシニア向けの「スマホ講座」を見学させてもらい、スマホに興味があるシニアの方々の生の声を聞く機会を得た。シニアがスマホに何を求めているのか、実際に何に魅力を感じたのか、知ることができれば親にスマホをプレゼンする際の助けになるかもしれない。
NPO法人竹箒の会は年間300クラスのシニア向けスマホ講座やタブレット講座を実施しており、スマホ講座に関してはすべてらくらくスマートフォンを用いた講座になっている。講座では、講師のほかインストラクター数名がサポートし、1クラス15〜30名程度が参加するそうだ。
見学したスマホ講座には当日13名が参加。全3回の最終回だったこともあって参加者の皆さんは比較的スムーズに操作していた。メール、写真、地図などの活用はすでに学び、インターネットや様々なアプリの活用を解説されていた。音声検索を活用して情報を探したり、QRコードを読み込んだり、翻訳機能を試したりと充実の内容だ。どなたも、一度覚えると、ペーパーを見ながら比較的使いこなせているようだ。
講座に来ていた方々は皆スマホに興味があるシニアの方々なのはもちろんだが、スマートフォンを使ってみたい理由としては、「友達や家族とLINEがやりたい」「子供から勧められた」「地図検索がしたい」といった内容が多かった。また、ケータイを使っている方の他に、すでにスマホを使っている方という方も何人か来ていた。スマホを使っている方の中には、現在はシニア向けではない普通のスマホを使っている人もおり、「操作がわかりにくい」「画面が小さくて読みにくい」「すぐ反応してしまって操作しにくい」などの点でストレスを感じているということだった。
操作方法を積極的に質問。検索や翻訳機能をマスターしていた
後日、実際にらくらくスマートフォンを使う知人にも話を聞いた。その女性は60代前半で、らくらくスマートフォンにして1年ほど。それまで長年ケータイで、スマホでないことの不便さも感じていなかったそうだ。
娘さんには以前からスマホへの乗り換えを勧められていたそうだが、最終的にはケータイの電池が生産終了で入手できなくなったことがきっかけになったという。もう一度ケータイを買い直すのは高いし、最終的には娘さんに強く勧められ、らくらくスマートフォンに機種変することになったという。
実際に使ってみると、やはりLINEが便利だという。メールやSMSにはない「既読」の表示や、家族間でのグループLINEがとても便利で、写真も送りやすく、以前よりも情報共有がスムーズになったそうだ。高校時代の同級生で作っているLINEグループも入っているそうで、毎年集まる13人の同級生のうち、10人がそのLINEグループに加入済み。ケータイでLINEが使えないために参加できていないのは3人だけだという。
実は以前からそのLINEグループに参加したかったことも、最終的にスマホへの機種変に思い切れた理由のひとつになったようだ。
竹箒の会の橋詰さんによると、スマホへの乗り換えに際しては、子供から勧められても素直に受け入れられない高齢者がほとんどだという。むしろ、年齢の近い友人から勧められると、スッと受け入れてスマホにしてしまうことが多いらしい。
いざ導入、どうすべきか?
橋詰さんの話や知人の話から総合するに、親にうまくスマホに乗り換えてもらうには、まず親と同世代の人物からLINEグループなどスマホの便利さを事前に伝えておいてもらうとベターだ。そしてケータイの故障やバッテリー交換などのタイミングで持ちかけることができれば理想的なパターンかもしれない。シニアが一人で契約すると不要なオプションなどの判断がしづらいため、本人が乗り換えを決断できたら、ショップには同行し、しっかり契約内容をチェックしよう。
ちなみに料金プランとしては、NTTドコモのホームページでのシミュレーションによると「らくらくスマートフォン4」の場合、すべて2年間の定期契約ありで考えると、すでにシェアパックを契約済みの家庭であれば、「シンプルプラン(スマホ)」+spモード(300円)+シェアオプション(500円)+端末代金(24カ月分割で2457円だが「月々サポート」で割引があり648円に)となり、月額2457円で「らくらくスマートフォン4」が利用できる計算になる。
家族のデータをシェアしない「データSパック(2GB)」利用の例では、端末代金込み、国内通話無料の「カケホーダイプラン」(2700円)でも、「シニアはじめてスマホ割」(-1520円)を適用して月額5622円。
おおまかには、家族でデータ量をシェアするなら端末代金込みで月額2500円ぐらい。シェアしないで通話し放題なら月額5500円ぐらいをイメージしておくとわかりやすいだろう。
購入後の初期設定は悩ましい問題ではある。アカウントの設定等に関しては橋詰さんは「原則、シニアが理解して自身で行うのがベスト」としつつも、やはりその難しさは認識している。
Wi-Fiの設定や、LINEなど使うアプリの導入、メールの送受信設定など、最初にやっておけば以降は再設定等の必要がないものについては、代わりにやっておくのが良さそうだ。Amazonなどの通販は、後々自分でアカウント情報を入力する必要があるだろうから、会員登録から使い方のレクチャーまでひととおり行うのが理想ということになるだろう。
できれば実際の操作はなるべく紙に残し、繰り返し見られるようにしておくと、あとで見直せるので良い。紙にしておけば、それを持ってショップに駆けこめるというメリットもある。最初はやや手間だが、その後の親子両方の「生活の質」を考えれば十分その価値はあるだろう。
機能面では、「これは便利」「これはすごい」という機能をあらかじめ勧めておくといいかもしれない。橋詰さんによれば、シニアにぜひ教えてあげたいスマートフォンの機能として「音声入力」があるという。検索もメールも音声入力ができると、文字入力に慣れない人もスマホを手軽に扱えるようになる。特に音声での検索はTV CMでも頻繁に扱われているせいか、非常に関心が高いそうだ。
他にも、シニアの利用率が高いアプリとしてはYouTubeなどの動画アプリがある。放っておいても人気の動画を色々ブラウジングしたり、音楽の動画を再生しながらカラオケしたりするらしい。
「らくらくスマートフォン4」はGoogle Playからのアプリインストールにも対応する。自分でアプリをインストールするのがハードルが高そうな場合は、あらかじめスマホでやりたいことを聞き取って、オススメのアプリをインストールして置いてあげるのも良い。
SNSをやりたいということであれば、いきなりTwitterやFacebookというよりは、まず初心者向けのSNSとして、富士通が運営する「らくらくコミュニティ」がいい。個人情報などを誤って投稿しないように専門スタッフが24時間確認してくれている。家族同士でだけつながるクローズドな「ファミリーページ」もあるので、それを使って投稿に慣れるのもおすすめだ。
高齢の家族がスマホを使うことは、メールからLINEになって便利だというだけではなく、家族のコミュニケーションを大幅に改善し、将来、特に離れて暮らす高齢者だけで暮らす世帯の生活の質を維持するのに役立ってくれる。本当に動くのがおっくうになってからでは機種変をするのも大変。親が元気なうちに「らくらくスマートフォン4」にしておくことをお勧めしたい。
橋詰さんによれば、すでにスマホを使っていたシニアも、講習会でらくらくスマートフォンを触って「事前に知っていればこれを買ったのに」という人が多いとのことだ。ただ、こうした「らくらく」「シニア向け」のものを勧められることに「逆差別感」を感じる人も多いという。「らくらくでも、中身はいろんなアプリが動く最新スマホなんだよ」というのを我々世代がいかにプレゼンできるかに、導入の成否はかかっている……のかもしれない。