もはや子育ての必需品となったキッズケータイ。定期的に新モデルが登場してきたが、2017年3月に発売されたドコモの「キッズケータイ F-03J」は、アプリを使って保護者のスマホと連携ができたり、IoTデバイスを組み合わせて見守れるなど大幅に進化。その使い勝手を探ってみたい。
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キッズケータイ F-03J
“親も安心できる”キッズケータイ
小さい子供を連れての外出には、クルマの運転中のような緊張感があると思う。集中力が必要で、たいてい“一瞬目を離したスキ”に大変なことになる。わが家の息子はもうすぐ6歳で、3歳を過ぎたあたりから、外出中にふらっと消えては探し回り続けること数知れず。心労に音を上げて、とうとう昨年キッズケータイを導入した。
本人はまだ5歳だし、電話に出てくれるかどうかも怪しかったが、万が一のときに周りの大人が電話を取ってくれるかもしれないし、GPS機能で居場所を見つけられる「イマドコサーチ」だけでも使えれば十分だと思って導入した。
しかし実際導入してみると、子供はキッズケータイで電話を受けるのはもちろん、自分から電話をかけるのもすぐに覚えた。さらに、端末を渡して30分後には、まだ使い方も教えていないはずのSMSを親宛てに送信、おまけに2通目からは顔文字入りになった。「おもちゃ」を手にした子供の順応力は怖い。
最近は、おばあちゃんに預けられている時も、私の帰宅が遅れると「はやく!」「いまどこ!」とSMSを連投。「1通、3円……」と、久々にやりとりするSMSの料金が頭をよぎるが、どうやらメッセージを打つうちに50音順を自然に覚え、「お」と「を」の使い分けや、「わ」と「は」の使い分けも正確になってきたので、良しとしたい。
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楽しいものはすぐ覚える。5歳児でも電話はもちろんSMSもすぐ覚えた
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はじめてくれたSMS。内容を見たドコモショップのお姉さんから「かわいい~!」の声を一身に受けて得意げ
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その日のうちに顔文字を使うように。変換候補に入っているのでごく普通に使うようになる
なんにしろ、親にとっては“いざというときにはケータイで連絡できる”と思えるようになり、子連れで出かけるときの不安が少し減った。安心のためなら月額数百円は安いと思っている。
いずれ小学生になれば、親より先に学校や学童から帰宅し、家で一人で過ごしたり、習い事で移動したりする機会も増える。広がる行動範囲を見守る側の親にとって、子供の現在地の確認は日々繰り返される現実問題だ。キッズケータイを導入することで親子の不安が解決できるなら、それに越したことはない。
子供の現在位置を把握できる「イマドコサーチ」
キッズケータイで子供の位置情報を確認できるようにするサービスが、ドコモが提供する「イマドコサーチ」だ。Webにログインして操作すると、サーチ先の端末に位置情報をリクエストする。
月額使用料は200円、検索料は1回5円かかる。ちなみにキッズケータイに電源が入っていない場合や圏外の場合など、検索に失敗したときは検索料はかからない。また、イマドコサーチ1契約につき探される側の端を5台まで設定できるので、兄弟がいる家庭でもまとめて登録できる。ただし、逆に“探す側”1台に対して1契約必要なので、子供が一人でも「母親のスマホからだけでなく、父親のスマホからも子供の検索がしたい」という場合は2契約が必要だ。ちなみに検索される子供の端末は、イマドコサーチで測位されているときにバイブが振動する。
基本的な使い方としては、My docomoにログインし、今どこにいるのか1回検索する「いますぐ検索」を利用する。2017年3月からは、いますぐ検索で検索に失敗したとき自動で検索を繰り返す(120分間)「くりかえし検索」も新機能として追加された。
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イマドコサーチはMy docomoにログインして専用ページから使用する
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検索には20~70秒程度かかる。探される側の電波状態が悪いと検索に失敗することも
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検索結果は地図上に表示される。GPSなので厳密に表示されるわけではなく、大体の位置が確認できるイメージ
また、あらかじめ検索する日時を指定しておき、結果をメッセージRで受信する「スケジュール検索」という機能もある。ただ、そのまま使うとメッセージRには「検索に成功しました」とだけ表示され、具体的にどの場所にいるかはMy docomoへログインしなくては見られないので「エリア監視」機能と組み合わせるのがおすすめだ。自宅周辺などあらかじめエリアを設定しておけば、そのエリア内にいるかどうかをメッセージRの文面に記載してくれる。
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スケジュールを設定すると、その時間になったら自動的に「イマドコサーチ」。結果はメッセージRで受信できる
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メッセージRに届く検索結果。「エリア監視」で自宅などエリアを指定しておくと、そのエリア内にいるかどうかを確認できるので便利
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イマドコサーチされる側には毎回通知される
そのほかF-03Jの場合、上部のストラップをひっぱると大きなブザー音が鳴り、位置情報も送信される一歩進んだ防犯ブザー機能や、子供がワンボタンで位置情報を通知する「ちょこっと通知検索」などの機能もある。
機能は意外と複雑なので、家庭での定番の使い方が見つかるまでは、「イマドコサーチ」などのマニュアルを熟読することになるかもしれない。
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ここをひっぱるとけたたましい防犯ブザーが鳴る(音量は変更可能)。防犯ブザーが作動したときに位置情報を発信することも可能だ
8年ぶりの富士通製「キッズケータイ F-03J」
見た目もかわいく機能もUP
そんな子育て中の親子の必需品であるキッズケータイは、継続して新製品が発売されているが、今年3月に発売された「F-03J」は、F-05Aから実に8年ぶりの富士通製キッズケータイだ。
「F-03J」は、キッズケータイの基本スペックである防水・防塵の機能や、画面やボディーの大きさ、丸めのフォルムなどを受け継ぎつつも、ポップでカラフルに。質感もプラスチックのツルツルした質感からマットで滑りにくいものに変更されてより手になじむようになった。
カラフルボディは塗装ではなく、樹脂の成型色とのことで、色が剥がれることがないという。また、表面には抗菌コートも施されている。さらに防水・防塵(IPX5/8、IP6X)かつMIL規格14項目準拠ということもあり、子供が手荒に扱っても大丈夫な、見た目に似合わぬタフな本体となっている。
2017年3月発売の「F-03J」。これまでのキッズケータイのデザインを踏襲しつつよりかわいらしくなった 外側は滑りにくいマットな手触りになった。ストラップホールも
本体のカラーは「イエロー」「ブルー」「ピンク」の3色。本体カラーに合わせて用意されている「テーマ」では壁紙やメニューのアイコンまで合わせて作られていて、かなり凝っている。SMSには簡単な絵文字も使えるようになった。
これまで受け継がれているボタンの配置やメニューの構造はほぼ変わらないので、キッズケータイを使い慣れているお子さんも戸惑うことはないだろう。ちなみにうちの子供に渡してみたところ、やはり何の違和感もなかったようで、5分も経てばSMSが送られてきた。
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側面にはライトが装備され、防犯ブザーが作動したときなどに発光し、自身の位置を知らせる
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サイドにあるmicro USBはキャップレス防水になった
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入力はこれまでと同じあいうえお表なので子供でも入力しやすい
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F-03JになってSMSで顔文字が使えるようになった
見た目以上に機能が激変!
「親子のきずな」アプリがすごい
「F-03J」の最大の特長は、Bluetoothに対応し、他のスマートフォンやIoT機器とペアリングできるようになったことだ。
ペアリングしたスマホからは、キッズケータイ専用アプリ「親子のきずな」を使うことで、キッズケータイの操作や各種設定したり、様々な便利機能を使ったりできる。
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スマホ側に「親子のきずな」アプリをインストールしてBluetooth接続で使用する
この「親子のきずな」は、Android版とiOS版のアプリがあるが、機能は同じ。まず保護者のスマホにアプリをインストールし、F-03Jを近くに置いてBluetoothでペアリングする。
主な機能は3つ。子供が持つキッズケータイが保護者のスマートフォンから離れたら警戒音を鳴らす「みまもりアラート」、オプションのIoT機器「Tomoru」と組み合わせて使う新しい方式の位置情報通知「おかえり通知」、そして地味ながら便利な、親のスマホからF-03Jの定型文や電話帳を修正できる連携機能だ。
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地味にすごいのがこのF-03Jの「キッズケータイ設定」の項目
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電話帳や定型文、あんしんセットの設定などを保護者のスマホから設定できる。キッズケータイ本体で文字入力したりするのは大人的にはけっこうつらいので助かる
「みまもりアラート」は、公園や児童館など、広い施設で子供が自由に遊んでいるときなどに便利な機能。これを設定中にF-03Jとペアリング先のスマートフォンが離れると、スマホとF-03Jの両方にアラートが鳴り、スマホ側の画面に「イマドコサーチ」「通話」「閉じる」が選択できる画面が表示。F-03Jの画面には「おうちのひととはなれました。でんわしますか?」と電話のショートカットが表示される。実際に使ってみるとアラートが鳴るのは10~20m程度だろうか。もう少し設定範囲が広いとさらに使い勝手が広がりそうだが、それでも「近くにいたはずなのに……」とあわてて探し回る前に、見える範囲で探し出せるのは非常にありがたい。
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「みまもり」をONにすると子供が側から離れたときアラート表示する
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左奥の赤枠に子供がいる状態。このぐらい離れるとアラートが表示される
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同時にF-03Jもアラートが鳴り、子供からも親を探しやすくなっている
「おかえり通知」は、docomo selectで販売されているIoT通知デバイス「Tomoru」(税込1,500円)と組み合わせた機能。IoTデバイスの規格である“Linking”に対応しており、「親子のきずな」にTomoruを登録すると使えるようになる。
機能的には、TomoruにF-03Jが接近すると、設定された送信先へ自動的にSMSを送るというシンプルなもの。Tomoru自体はボタン電池で動くのでどこにでも設置でき、持ち歩きもできる。電池寿命は約半年。
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docomo selectのIoT端末「Tomoru」。ボタン電池で駆動する
具体的には、自宅の玄関やリビングにTomoruを置いておき、子供が帰宅したら保護者へ自動的にSMSを送るように設定する。1mほど近付くだけで反応するし、イマドコサーチのようにF-03Jがいちいちバイブで振動することもない。「みまもりアラート」と違ってTomoruから離れたときに通知する機能はないが、通知先も複数設定できるのが便利なところ。この機能が1,500円でプラスできるのはかなりお得に感じた。
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「おかえり」をONにするとTomoruと連動した状態になる
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「おかえり設定」であらかじめスケジュール設定しておく
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1m以内に近付けば十分反応するので、玄関に置いておけばOK
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テレビの前やリビング、キッズケータイの置き場近くなどでも使いやすい
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TomoruとF-03Jが近付くと、SMSで親のスマホへ通知される。イマドコサーチとは別のサービスなので、利用料金はSMS送信料以外にはかからない
ちなみに、Tomoruの代わりに前述のLinking対応製品である「Wi-Fi STATION N-01J」を使っても同様のことができる。キッズケータイ以外の端末でも利用でき、大人が「しゃべってコンシェル」などと連携させて使うという方法もある。LinkingにはさまざまなIoT機器が対応しているので、組み合わせて使うとさらに用途が広がりそうだ。
保護者のスマホが対象機種なら今すぐF-03Jへの機種変更がお勧め
F-03Jの専用アプリ「親子のきずな」の便利さは、前世代までのキッズケータイを使っている人なら、間違いなく驚けるほどの劇的な変化だ。ガラケーからスマホに変えたときのような、かなり大きい違いがある。
F-03Jは意図的にか、これまでの端末とそれほど大きさも変わらずメニュー内容も引き継いでいるので、店頭のダミー端末ではこの大きな変化に気がつきにくい。「アプリが使える」と説明されてはいたが、正直言うと実際に使ってみるまでここまでの使い勝手の変化だとは想像できなかった。子供の立場からはそれほど変化はないのだが、それと連動できる保護者側が大幅に便利になったのだ。
やや保護者側のスマホの対応機種が少ないのが難点だが、もし対象機種を使われているなら、迷わず機種変更をお勧めしたい。
F-03Jはドコモオンラインショップの価格で税込10,368円と端末が比較的購入しやすい値段だし、契約も2年縛りなどがないケースがほとんど。キッズケータイを導入してから1年以上たっているなら、月額700円から500円に値下げされた新プランも登場しているので、切り替えるきっかけにもなるだろう。
まわりの小学生を見ると、ネックストラップで首から提げたりランドセルにキッズケータイを取り付けたりしている。ボディーは小さいけれど、登場から10年以上たち、必要な機能が検証しつくされたキッズケータイの完成度はかなり高い。わが家もこの「キッズケータイ F-03J」とはまだ長い付き合いになりそうだ。
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子育ての先輩たちが磨き上げてくれたキッズケータイの機能に感謝!